海老名総合病院
断らない救急医療を目指す「海老名総合病院」。急性期医療、救急医療に特化しているため、臨床工学科の業務も多岐に渡る病院。昨年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けながらも、7,145件の救急車を受け入れている。
神奈川県、県央地区では1番の救急車受け入れ件数を誇る「海老名総合病院」で働く臨床工学技士に、臨床工学技士の今を聞いてみた。
臨床工学技士になろうと思ったきっかけを教えてください。
志知 科長代理
高校から大学へ進学した頃は、臨床工学技士になるとは思っていませんでした。でも、工学系に興味があったのと、自分自身が入院した際に臨床工学技士という職業の方を間近で見て、その後、自分で色々と臨床工学技士について調べたりしているうちに選択肢の一つになりました。最終的には、大学の研究室の教授の一言が決め手となったかもしれません。
どんな一言だったのですか?
「志知君は、コミュニケーション力があるから病院に就職したらご年配の方に人気が出るんじゃない?モテるかもしれないよ」という一言だったと思います。20年くらい前の臨床工学技士の仕事は、人工透析がメインで、患者さんは、年配の方が多かったので、教授もそのように言われたのではないか?と思っています。
海老名総合病院を選んだ理由は何ですか?沢山の病院の中から選ばれた理由を教えていただけますか?
私は20年前、ジャパンメディカルアライアンス(海老名総合病院の経営主体となる社会医療法人)が運営する東日本循環器病院に就職しました。この病院は元々急性期の循環器病院なのですが、徒歩圏内にある同じグループの海老名総合病院でも急性期医療を提供していました。その後、機能再編により、急性期医療は海老名総合病院へ集約されることになり、そのタイミングで私も海老名総合病院へ異動してきました。
東日本循環器病院へ入職した理由ですが、学生時代の実習先で、人工心肺や心臓カテーテル検査の実習を行ったときに循環器に興味を持ちました。そこで幅広く循環器が出来そうな病院を探していたところ、東日本循環器病院を見つけました。東日本循環器病院は、90日くらい臨床研修実習を行うのですが、その中で、心臓カテーテル検査や人工心肺業務があったので入職を希望しました。
臨床工学技士になられていかがでしょうか?
実際に働いてみて想像していた臨床工学技士のイメージとかけ離れてはいませんでした。実習先が静岡の大きい病院だったのですが、この病院には、人工心肺の第一人者と言われる凄い人がいらっしゃいまして、その人の仕事を近くで見ることができました。実習後に就職した当時の東日本循環器病院も人工心肺や心臓カテーテル検査を行っていた病院でしたので、実習先で見た風景・仕事内容と就職先での風景・仕事内容が、想像していた通りの臨床工学技士で、何の迷いもありませんでした。忙しさという状況も含めて、臨床工学技士のイメージを実習でしっかりと実感できたのでギャップがなかったのだと思います。
臨床工学技士になってから大変だった事、失敗してしまった事、失敗してしまった後のご自身の立ち直り方や仕事のモチベーションの管理、維持で何かありますか?
就職したばかりの頃は、OJT(On the Job Training:実務を通じ仕事を覚えてもらう教育手法)が多く、臨床に追われる日々でした。20年くらい前の事なので、マニュアルも無ければ、教育体制が今のように整っているわけでもありません。先輩の背中を見て、覚えるという昔ながらの方法で勉強していったように思えます。当時はそういう時代だったと一言で済ませてしまう話でもありますが、臨床工学技士という職種は、技術職。ある意味、職人の世界に通じるところがあるように思えます。「この技術を習得するぞ」という気持ちが、高いモチベーションにつながっていたのかもしれません。自身が行いたい業務事をすべてやれていたので、特にモチベーション維持を意識することはありませんでした。
臨床工学技士の業務について教えてください。
基本的には、チーム制を敷いていますが、最初は、ローテーター(業務ローテーションを担う人)として、一通りの業務を経験します。そのため、この業務しか対応できないというスタッフはいません。また、業務習得のスケジュールも立てており、これは2年計画で行っています。マニュアルや教育スケジュールをしっかりと立てて、これに沿って業務を覚えて行ってもらうというプロセスです。ゴールというものは無いのですが、【ME機器】【血液浄化】【人工心肺/手術室】【カテ/ABL/植込デバイス】【内視鏡】といった分野を2年かけて習得してから宿直という業務に入ってもらうことになります。
最近の医療はチーム医療と言われていますが、多職種連携について教えてください。
「臨床工学技士がいないと回らなくなる」と言われるくらい、他部署との連携は上手くいっていると思います。私の考えとして、医師、看護師は、患者さんが顧客だと思うのですが、私たちの顧客は、医師、看護師になります。医療機器を通じていかに、顧客満足度を上げる事が出来るかを、臨床工学技士全員で考えて頑張っています。受け身ではなく、顧客(医師、看護師)に積極的に提案するようにしています。「こういう診療が、今年度の算定で改定されて出てきましたが、こういう方法でやりませんか?」「私たちが、機械申請をして導入をするので、このような治療法でやりませんか?」という提案も数多くしています。こういう内容の話を言い合えるのもしっかりと連携が取れているからではないでしょうか。
1日のスケジュールを教えていただけますか?
定時は8時30分〜17時30分となります。
6時 起床 共働きの為、現在は子供の身支度を担当しています。
7時50分 家を出る(自転車通勤)
8時05分 病院到着
8時20分〜 朝のカンファレンス
8時30分 部署申し送り 勤務開始
8時35分 透析業務、ME機器管理業務、心臓カテーテル業務、アブレーション業務を主に担当しています。
15時30分 各種打ち合わせ 管理業務
16時 各種ミーティング
17時30分 勤務終了
休日はどのように過ごされていますか?
最近は、子供の習い事に付き合っています。上の子がバレーボールのクラブチームをやっていて、下の子がサッカーをやっています。昨日もバレーボールの練習で、体育館を開ける鍵当番でした。小学校の体育館で鍵の管理や子供達が入る前に、窓開け、空気の入れ替えや熱気を外に出したりしています。今の時期は、とても暑いですからね。このようなサポート的な役割を楽しみながら過ごしています。
臨床工学技士への取り組みで病院がされていることはありますか?
現在の医療は、医療機器が無いと成り立たないので、医療機器や医療機器を管理する臨床工学技士が減ることは無いと思います。保険算定の改定の話になりますが、今年度から「臨床工学技士を配置しなさい」という文言が色々なところに入ってきています。そのような事から、臨床工学技士の需要は、今後もどんどん増えてくるのではないかと考えています。算定の改定は、国からのメッセージでもあり、医療の質の担保が叫ばれていますので、「医療の技術の担保」は、臨床工学技士の仕事だと思っています。やはり医療の技術、質の担保は、人があってこそであり、部署経費は、スタッフのスキルアップや認定資格を取得してもらう為に使用しています。学会へ行ったり、学会で発表したり、必要な資格を取得するということは、自費で行うのではなく、全て当院の経費で行っています。
臨床工学技士を目指す学生の皆さんに何かアドバイスはありますか?
就活で来ている人には話をしているのですが、学生の今しか遊べる時は無いから遊んでおいたほうが良いと話をしています。学生時代という短い期間でしか出来ない事をして、学生時代を謳歌して欲しい、思い出をちゃんと作ってその思い出を大切にして欲しいという想いです。だからと言って勉強をしなくてよいという訳ではありません。もちろん大切です。ベースとなる知識はもちろん習得してきて頂きたいと思いますが、テクニカルスキルは入職されて主に臨床で得るものだと考えていますので、教育スケジュールに則って習得して頂きます。併せて医療はサービス業でありますので接遇やヒューマンスキルの修得にも力を入れています。
最後に臨床工学科の労働環境について教えてください
オンコールは季節にもよりますが、最近は内視鏡の緊急症例が多く、月10回程度(臨床工学科としての月間オンコール呼び出し件数)あります。他では、人工心肺関連で、これも季節により異なりますが、冬場で多いときに月3回程度あります。勤務時間は、定時が7時30分〜16時30分、8時〜17時、8時30分〜17時30分と少しずらして時間差出勤をし各検査や症例の予定ごとに勤務時間帯の変更を行っています。日中の症例が伸びる場合は、9時30分〜18時30分を組み込んだり残業の削減に努めています。残業は、臨床工学科の平均が月7.5時間です。有給消化率も院内No1を目指しています。このあたりは「残業が多くて大変」という病院から見ればうらやましがられる環境かもしれません。またこれも他の病院とは異なるところかと思いますが、昼休憩が取れない場合、他院はそのままになってしまっている事が多いと思いますが、当院の場合は、残務申請をさせ、昼残業という扱いにしています。お金で処理するというのは、あまり良くないことではありますが、「休憩を回す、入れる」事を大前提に、どうしてもという時だけの最終手段として使用しています。
最近は、「産休・育休は取れますか?」と聞かれる学生さんも多いのですが、臨床工学科は「パパの育休」を医療技術部で1番最初に導入した部署でもあります。因みに今年は2名が申請を予定しています。今後ますます育児休業制度が手厚く変わっていきますので、スタッフにもしっかり取るように推奨していきたいと思います。
社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス 海老名総合病院 医療技術部 臨床工学科
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