【臨床工学技士インタビュー】少数精鋭のローテーション業務で、多職種と横のつながりが深く、自己研鑽もしやすい山口労災病院

山口労災病院

山口労災病院は、昭和30年3月に内科、外科、整形外科の3診療科と病床数50床をもって開院しました。その後、設備の充実、増床と診療科の増設を行い、現在では病床数313床、22診療科を有する総合病院として、急性期医療を担うと同時に特殊健康診断からリハビリテーションやメンタルヘルスケアなど、予防から治療・社会復帰に至るまでの「勤労者医療」に幅広く取り組んでいます。

【病院の理念】
医療を地域にひらく
開(ひら)く   地域に向かって、開かれた病院として、強い連携を保つ。
啓(ひら)く   地域に向かって、健康・疾病に関する啓発活動をする。
発(ひら)く   地域に向かって、医療情報を速やかに発信する。

【基本方針】
勤労者医療を推進する
急性期医療、救急医療を担う
医療倫理・科学的根拠に基づく安全で質の高い医療を提供する
人間性豊かで患者さんの満足度の高い医療を提供する
信頼される医療をめざして努力する

全国労災病院臨床工学技士会会長で、山口県臨床工学技士会監事も兼任する山口労災病院の中央臨床工学部・部長・加藤諭(かとう・さとし)技士と、砥上太郎(とがみ・たろう)技士にお伺いしました。

砥上技士に聞いてみた

砥上技士

臨床工学技士を知ったきっかけは?

両親が医療に従事していましたので、医療には興味がありました。

高等専門学校に通っていたのですが、卒業した後は就職か進学をするので、色んな就職先や大学からパンフレットが送られてきていました。私は、山口労災病院で生まれたのですが、大学からのパンフレットで卒業生が臨床工学技士の仕事について説明されており、それが当時の山口労災病院のCEの方でした。これが山口労災病院ではなかったら、目に留まらない職業だったかも知れません。

高専卒は準学士となり大学3年次に編入ができたため、工学と医療が学べる医療工学部へ編入をしました。大学の2年間で、臨床工学技士の勉強や実習などをして、国家資格を取得しました。

私自身の感覚にはなりますが、高専卒で工業関係の仕事に行くより、高専卒から臨床工学技士を目指すことに新しいイメージがありました。

山口労災病院に入職した理由

大学を卒業した1年目は、山口労災病院の募集が無かったので、ディーラーの営業をしていました。色々な病院で仕事をさせていただいたので、知識が増えて勉強になりました。

2年目に山口労災病院の募集があったので、応募しました。山口労災病院が良いと思った理由は2つありました。1つは地元で働きたいという想い、もう1つの理由は加藤部長の存在です。入職前、加藤部長にお話をいただく機会があったのですが、「透析、呼吸器、人工心肺などの業務が仮になくなることがあったとしても、病院から医療機器は無くならない、機器のマネジメントをする人は必要だから、絶対に臨床工学技士の仕事はなくならない」と、その重要性を語られてたのを聞き、この人に師事をしたいと思い山口労災病院に決めました。

仕事のやりがいについて

私が勤務している中央臨床工学部は、部長1名、主任1名、技士3名の5名です。この体制で医療機器管理業務、人工呼吸器関連業務、手術室業務、血液浄化関連業務、循環器関連業務、消化器関連業務、ペースメーカ関連業務をローテーションしていますので、臨床工学技士の資格でできる業務に一通り携われます。

院内PHSを各自持っているのですが、医師から呼吸器のモード設定について相談をいただき、患者さんの容態が良くなったりすると、頼られる嬉しさと、結果を出せているやりがいを感じます。

砥上技士の一日の業務(一例)

定時 8:15~17:00

8:15 医療機器点検
10:00 人工呼吸器ラウンド
12:15 お昼休憩
13:00 手術室業務・心臓カテーテル業務等
17:00 終業

・月間残業時間約20時間弱
・輪番日(山陽小野田市で休日や夜間に対応する病院を輪番制で決めて順番に担当する日)はオンコール、通常日は特に待機業務はない

取得認定士と今後取得したい資格

三学会合同呼吸療法認定士、日本DMAT(日本災害派遣医療チーム)の資格を持っています。

将来的には、ME1種と認定集中治療関連臨床工学技士を取得しようと思っています。HCU(高度治療室)が5年前にできたので、特に認定集中治療関連臨床工学技士を取得したいと思っています。

山口労災病院ならではの業務のやりがい

ローテーション業務をしますので、横断的に各診療科の医師や看護師と顔を合わせます。臨床工学技士の業務は、全ての多職種と関わりがあります。多職種と色々なお話ができますので、自己研鑽のきっかけになったりします。

一緒に遊びに行ったり食事をしたり、院外でも仲良くさせていただいています。院内研修も、7つの病棟と外来、手術室の全9部署で行いますので、職員が5人なので大変ですが、年間で40回ほどの研修も行います。

高専に行かれている方へ臨床工学技士の良さをアピールをお願いします

工学とは少しずれますが、病院から機器が無くなることはないと思います。むしろ、これからどんどん医療機器は増えていくと思います。臨床工学技士は、病院によって様々な業務があり仕事が広げやすい業種であり、この先も明るい業種になると思いますので、医療にも工学にも興味があれば、臨床工学技士は向いている仕事の一つになると思います。当院は、先輩方も良くしてくれる方が多いので、仕事面でもプライベート面でも充実したものになると思います。

入職後研修について

山口労災病院 中央臨床工学部部長 加藤技士

人数が多くないので、効率の良い研修はできませんが、まずは「業務を覚えましょう」ということで、プリセプター制度で業務を覚えた後に、「臨床的な知識を覚えましょう」というのを実践しています。

第1ゴールは、3か月でオンコール対応ができるようにします。緊急心臓カテーテル治療ができると、オンコールのメンバーになります。IVUS(血管内超音波検査)やIABP(大動脈内バルーンパンピング)やECMO(体外式膜型人工肺)がある程度できるようになることが最重要課題なので、3か月の中である程度は臨床経験をさせていくというスタンスにしています。ECMOを3か月で回せるかというと、なかなか難しいので、プライミングができて、先生と意思疎通して接続できるようになってもらいます。そこまでできれば、あとは応援部隊が引き継ぐようにしています。オンコールができるようになったら、各業務、医療機器管理業務、人工呼吸器関連業務、手術室業務、血液浄化関連業務、循環器関連業務、消化器関連業務、ペースメーカ関連業務を、順繰りまわって、少しずつレベルアップしていきます。

知見を高める環境整備

「取りたい認定士を取れば良いよ」ということで、「何を必ず取ろう」というのはありません。当院でいうとCVIT(ITE 心血管インターベンション技師)や3学会合同呼吸療法認定士が取りやすいかなと思います。

告示研修は病院で支援します。認定士の取得に関する費用は出ませんが、更新の為の学会参加などは、出張費清算で補助しています。労災病院全体のルールではないので、各病院によって対応は様々です。全国労災病院臨床工学技士会の会長職ということで、この頃は座長を務めることもなくなり、学術大会を主催する側として、労災病院における臨床工学技士の知見を広める仕組みづくりをしています。

山陽小野田市と働き方改革

山陽小野田市は人口が6万人の医師不足の自治体です。医師の働き方改革にあわせて2025年までには内視鏡業務を始める予定です。機器も日々新しくなりますし、医師の働き方改革もありますので、人を増やしつつ、時代の波に乗っていく組織、業務を構築していきます。

実は、5名の臨床工学技士で24時間CRRT(持続的腎代替療法)を管理していたら時間外が非常に多くなり、次の日の業務に支障を来しました。そこで看護部に相談に行き、快く看護師が24時間管理していただくことができました。トラブル対応のみ臨床工学技士がオンコールで対応する形がとれるようになり、時間外の削減ができました。本当に看護部のご協力のお陰だと感謝しております。ただ田舎の病院は医師不足であり臨床工学技士も多くはいませんので、全てをカバーすることは現実的に難しいと思います。

山口労災病院のいいところ

医師や看護師、コメディカルの方達と連携して、業務を遂行することが多い施設です。先生もざっくばらんに話せるような関係ですし、ゴルフも一緒に行くなど、横の関係が非常にいい病院です。

僕らがCTの画像見てわからなければ、放射線技師が教えてくれるし、検査は検査で数値の見方を教えてくれる。そういうところは仲間として頼もしく、自己研鑽もできて幅広く業務ができるから、山口労災病院の仕事環境はいいと思います。

全国労災病院臨床工学技士会について

全国労災病院臨床工学技士会は、症例の共有など、グループ内での研鑽、研修会といった技士会になっています。現状では、希望が無ければ転勤はありません。病院によってやっている業務が違うので、人の行き来が困難だというのが正直なところです。

病院によっては、中央臨床工学部のトップが部長ではなく、筆頭主任という病院があります。九州労災と山口労災は業務が似ているので、1度派遣交流を2年間行いました。私も山口労災病院でずっと働いていたので、他でも通用するのかという興味もありました。労災病院では部長制度を導入している病院が10施設くらいしかないので、どんどん部長制度を広めて重要な運営会議に出席し、少しでも病院運営に貢献していきたいと考えています。

 

砥上技士砥上技士

日本全国に相談できる仲間がいますので、九州にも東京にも相談できる仲間がいるのが強みです。

 

福利厚生について

砥上技士砥上技士

非常勤で入職したのですが、年休に関しては、入職後半年で20日付与されました。正規採用だと入職時から20日付与されます。

あと院内に病児保育があります。私も利用させていただくのですが、3か月から小学6年生までの子供を受け入れしてくれますし、保育士さんと外来の看護師さんに受診もお任せできますので、安心して仕事ができます。

 

入職して欲しい人

求人募集が出せるかは経営状況等によって分かりませんが、勉強より多職種と連携できる社交的で前向きな人が良いです。

最終的には「どんな技士になりたいか?」を聞いて、自己研鑽でも患者さんの為になるような仕事がしたいとか色々な答えがあると思いますが、前向きな人かどうか、頑張れる子かどうかをみて採用します。

病院の理念が改定され『医療を地域にひらく』の理念を行動目標に、地域医療支援病院として職員一同頑張っていきたいという思いが山口労災病院にはありますので、一人一人の患者に寄り添えるチームの一員の臨床工学技士として参画していただきたいです。

 

取材協力

独立行政法人労働者健康安全機構 山口労災病院 中央臨床工学部
〒756-0095 山口県山陽小野田市小野田1315-4 Tel.0836-83-2881
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