臨床工学Q&A教室[回答]2023年4月分[高倉技士(亀田総合病院)]

Q1.部下たちが活躍できるような施策・他部門との連携について

■複数部署の潤滑油さん
Q.部署間調整についてお尋ねいたします。室長として部下達が各部署で活躍できるように何か行っていることはありますでしょうか。お恥ずかしい話ですが、当院CEは院内で立場が弱くタスクシフト等で出遅れています。特に看護部との関係で難渋しており、新規業務をなかなか開拓できていません。他部門と連携をして業務が円滑に遂行できる妙案はありますでしょうか。

■高倉技士(亀田総合病院)
A.解決策は看護部との業務関係を持つ事です。看護部にCE業務を理解してもらう事に尽きます。まず初めに看護部長とのコミュケーションを取ってください。看護部を敵に回すと業務は広がっていきません。看護部との関係が良好になればCEが活躍できるような依頼も来ます。話の切込みは「医療法」を武器に医療機器の研修が求められているので看護部も協力をしてください」といったところではどうでしょうか。

看護部との交渉例
医療機器安全理責任者はどなたですか?医師?CE?
① 病院では医療機器の研修が義務付けられています。人工呼吸器、除細動装置は必ずあると思いますが、これらを適切に使用するための知識及び技能の習得に向けて研修を行わなくてはなりません。看護師は診療科に関係なく必ず除細動装置は知識が必要です。CEが研修会を行うので参加していただけないかのお伺いをしてみてはいかがでしょうか。

② 「PMDA医療安全情報」を閲覧し貴院で発生した類似事例があれば看護部に同じようなトラブルが当院でも起こらないように「勉強会をしませんか」と提案するのは如何でしょうか。

③ 医療機器安全管理責任者の業務には医療機器の研修が義務化されています。新しく入れ替えた機器も含まれます。心電モニタ、輸液ポンプなど入替したたら研修が必要になる事を看護部に伝えることです。CEが研修を担当して看護師に丁寧に説明してあげる事が大切です。

医療法で定める「医療安全管理委員会」にCEは参加していますか?

④ 貴院で医療機器が関係するヒヤリハットが有るか調べてください。必ず医療機器が関与している報告書が有ると思います。事例を集めて一つ一つに対して解説と予防の研修もいいのではないかと思います。このように院内で発生した事例を基に勉強会を開始すれば看護部も協力してくれると思います。

CEと看護部とのつながりは医療機器を通して安全な文化を築き上げる一翼を担っていく事だと思います。看護部長との交渉は緊張しますよね。

潤滑油さんは「Assertion」を知っていますか?交渉に有効ですよ…。

Q2.医療機器の適正在庫数・CEの配置について

■志知 純慈さん
Q.医療機器の病床数を考慮した適正在庫数を定めていますか?スタッフのローテーター(ジェネラリスト)と固定配置(スペシャリスト)をどう考えていますか?

■高倉技士(亀田総合病院)
A.【適正在庫】
病床数に合わせて医療機器を定数化するのは無理が有ります。当院では診療科の方針が変わると、今まで使用しなかった医療機器を使いだし、その逆に方針転換で医療機器が使われなくなったりします。このような治療方針が変わると薬、医療機器なども変わる状況で定数化は無理だと思います。

貴院の背景や診療科の特徴が分かりませんが、当院の医療機器の在庫数をコントロールするためには各医療機器の稼働率を70%で推移するように日々管理しています。70%であれば返却後にCEが点検整備して次の貸し出しまでに余裕があります。90%になるとCEが強制的に病棟から引き上げる権限を持たせます。この場合においては担当医師と患者に使用している医療機器の必要性を議論して、どちらでも良いと医師が判断すれば引き上げています。また、使用するかも?で病棟で確保している医療機器は引き上げます。

稼働率が上がり続けるのならば同時にメーカに貸出機や短期リースの手配も視野に入れて行動しています。稼働率が高止まりであれば絶対数の不足も考えられます。

70%稼働ですが一概には言えないのが季節変動です。人工呼吸器は冬季に使用頻度が上がり夏下がります。

【技士配置】
貴院の室長の考え方で変わります。私のところはスペシャリストを前提にCEを配置しています。それでもジェネラリストを希望する者もいます。そこで採用時の面接にて必ずローテーションは「5年以上を経過しなければ行いませんと」言っています。(入職後のトラブル予防も含め)

5年経過後にローテーション希望が有れば配置換えをしてあげます。それでも2割程度しか希望者がいません。最初の配置に満足していなかった者も5年間も業務に携わると何でも面白くなっているようです。配属3年後に専門認定など取得すると、これからです!と言って配置換えを拒否する者もいます。配置変えが1,2年では全てが中途半端なってしまうので当院ではおこなってきませんでした。

Q3.医療機器関連システムへの臨床工学技士としての関わり方について

■もぐらさん
Q.医療機器に纏わるシステム、ネットワークなど多くありますが、臨床工学技士としてどこまで関わっていますでしょうか?また、今後のCEの関わりの必要性についてどうお考えでしょうか?

■高倉技士(亀田総合病院)
A.【システム】
医療機器管理するシステムはCEが関わります。必要なLAN配線などは医療情報管理室に依頼してPC,配線などは行ってもらいます。それ以外はCEがシステム構築していかなければなりません。

また広義にシステムを医療情報と考えるなら臨床工学技士が関わるのは得策では無いと思います。例えば平日の昼間に電子カルテを含め、何かのシステムダウンをすると早急に対応しなければなりませんので日常業務は全くできなくなると思いませんか?システムはシステム専門化に任せるのが良いと思います。

それでもシステムにこだわるのなら生体情報観察のみのWi-Fi環境(無線LAN)にCEが関与す事はどうでしょうか。今後の無線テレメータはLAN対応にシフトすると思います。なぜなら設置環境を問わず病棟から離れた検査室などへ患者が移動しても、従来の無線430MHz帯域のテレメータでは考えられないくらいLAN環境下では受信できます。

心電図モニタを使用するにはIPアドレスの割り当てを貰わなくてはなりません。IPアドレスの割り当てにCEが関与できればと思いますが病院全体の事を考えればIPアドレスの割り当ても全て専門家に任せるのが良いでしょう。

また医療機器の位置情報管理を行う場合にも無線LANが必要ですが、これも関わると面倒だと思います。でも業務に余裕があればLANシステムに関わってみてください。

Q4.臨床工学技士の在宅医療への関わりについて

■オッキーさん
Q.臨床工学技士在宅医療への関わりについて

■高倉技士(亀田総合病院)
A.病院では在宅医療についての係わりはまだ少ないのが現状です。最近では自宅の近くに在宅診療支援診療所を紹介する病院も有ります。

当院では退院が決まったら医師からCEに連絡が来ます。

① 医師とCEで患者に合った機種を選択します。
② 医師から使用する機種を患者に伝えます。
③ 入院中に本人と家族が呼吸器を使用するのに問題が無いか観察します。
④ 適正な機種が決まったメーカと呼吸器、酸素濃縮機、酸素ボンベなどのリース保守契約をしてもらいます。
⑤ 退院後の機器管理を含めサービスはメーカ側と患者側の契約です。災害時には病院CEは在宅まで出向いて支援できないのが現状です。
現状としては行政も在宅酸素療養者の住所も把握していないです。災害時の対応はまだまだ改善策が山積です。
⑥ 普段は当院の在宅事業部が巡回して回路交換などをしています。

よってCEがHOTに関わるのは入院中だけです。今後はCEが積極的に関わる事の出来る分野ですが、院内業務が日々拡大している中で在宅まで手が回らないのが現状です。

参考までにネット検索:key word 「阿部博樹、在宅医療」

Q5.臨床工学技士同士の業務内容など共有方法について

■Chikoさん
Q.臨床工学技士同士の業務内容や報告事項の共有方法を教えてください。

■高倉技士(亀田総合病院)
A.業務内容や報告などの情報共有は組織運営の基本となります。

毎日、朝礼・終礼を行うことはどうでしょうか?一日の業務内容を全員が把握し、終礼ではトラブル発生、修理依頼、新規納品など、なんでも報告させます。これら内容は必ず記録すること。参加名の記録も必要です。休暇等で参加できない者は必ず目を通してサインすることで全員が情報共有していると分かります。これには何でも言える職場風土が確立していなければなりません。

某監査では業務日報は有りますか?と聞かれたことがあります。1日の業務内容は全て日報として記録を残してくださいと言われました。余談ですがISOやJCIなど審査では最初に確認されるのが情報共有をどのように行っているのか具体的に示せと言われます。今の時代では手書きから脱却しなければなりません。私のところでは院内PHS端末からiPhoneに変わりました。そこではTeamsやチャットを使って業務中に起こった内容を書き込んでもらい情報共有しています。

 

 

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