透析専門クリニックの臨床工学技士から見た!透析が必要な患者と透析が必要な患者との向き合い方

都下の透析専門クリニックにて15年臨床工学技士として従事している経験から「透析が必要な患者さんとは?その患者さんとの向き合い方」について、お話しさせていただきます。

透析が必要な患者とは

はじめに、透析とは腎臓の代替療法で、腎不全の患者さんが対象となり、腎不全には急性腎不全と慢性腎不全があります。急性腎不全になる原因としては主に3種類あり以下のようになります。・出血や脱水、心不全などに起因して腎血流量が低下して発症する「腎前性腎不全」・腎臓そのものの障害により発症する「腎性腎不全」糸球体に障害が起きる糸球体腎炎、間質や尿細管に炎症が起きる間質性腎炎や腎盂腎炎、塞栓や大動脈乖離などにより腎動脈が急激に途絶した場合など・前立腺肥大や前立腺がん、尿路結石、子宮頸がんなどにより尿の排出経路が閉塞することで発症する「腎後性腎不全」以上の、急性腎不全は数回の治療で完治するものもありますが、のまま慢性腎不全に移行する可能性があります。慢性腎不全の1番の原疾患は、6人に1人は危険があるとされ、国民病とも言われる糖尿病です。糖尿病性腎症を原因とする透析患者さんは年々増え続け、新規導入患者では1998年から、全患者の導入原疾患で2011年に第1位となってから、2020年末の統計では約40%を占めます。1型と2型、妊娠によるもの、その他に分類され、1型糖尿病は遺伝性です。2型糖尿病の発症にはインスリンの分泌不足、働きが悪いといった遺伝的な要因に加え、過食、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣的な要因が関係しているといわれています。予防や進行を遅らせるためは、生活習慣を見直すことが必要です。妊娠糖尿病は出産後治ることがほとんどですが、慢性腎不全に移行してしまうこともあります。糖尿病の合併症には網膜症、神経症、腎症などがあります。2番目の原疾患は慢性糸球体腎炎(IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症など)です。減少傾向が続いており、新規導入患者では2020年末の統計で第3位の約15%、全患者の導入原疾患では2020年末の統計で第2位の約25%を占めます。3番目の原疾患は腎硬化症です。高血圧が原因で腎臓の血管が動脈硬化を起こし、腎臓への血流が減るため尿が作られなくなるために起こります。増加傾向が続いており、新規導入患者では2019年より第2位になっており2020年末の統計で約18%、全患者の導入原疾患では2020年末の統計で第3位の約12%をしめます。その他、多発性嚢胞腎、慢性腎盂腎炎など多くの原疾患があります。なお透析患者さんは毎年およそ40,000人が新規導入し、およそ34,000人が亡くなっているので、およそ6,000人ずつ増加しています。2020年末でおよそ347,000人の患者さんがいます。導入患者は男性では70歳台、女性では80歳台が1番多く、平均年齢は70歳を超えました。

慢性腎不全の治療方法とは

慢性腎不全の治療方法は大きく分けて2つあり、腎移植と維持透析療法になります。腎移植すると腎不全は根治しますが、その症例は年間1,600ほどしかなく、この10年間でほぼ変化なく推移しています。維持透析療法にも腹膜透析(PD)、血液透析(HD)、血液透析濾過(HDF)など種類があります。腹膜透析(PD)は自宅で夜間就寝時などに施行できるため、時間的制約が少ない、通院回数が少ない、食事制限が少ないなどのメリットがあります。ただ自己の腹膜を利用するため、自己管理が必要、感染のリスクが高い、施行できるのが5年から8年などのデメリットがあります。血液透析(HD)、血液透析濾過(HDF)はシャントの作成が必要、穿刺による疼痛、週3回の通院が必要、食事制限がある程度必要、拘束時間が長い(1回3時間から5時間)などのデメリットは多くありますが、その治療方法は高水準で確立されているため、全国どこでも一定水準の治療を受けられます。50年以上の透析歴がある患者さんも増えてきました。

透析患者との向き合い方

患者さんとの向き合い方についてですが、栄養指導や食事指導に関しては臨床工学技士が直接介入することは少なく、看護師や管理栄養士を中心に行われます。透析導入前が食事や水分制限が厳しいときでもあり、透析導入直後は多少緩和されることから、反動で体重増加が多くなる傾向にあります。高齢者など食事指導がしっかりと守られていない場合は、簡単に食生活を改善できないため、体重増加が落ち着くまでに時間を要する場合があります。溢水による呼吸苦などわかりやすい症状、心不全による入院など、除水によるわかりやすい改善があると指導も効果が高くなりますが、うまくいかないことが多いので継続的な指導が必要になります。水分制限に関しては、中1日で体重の3%(50kgの人なら1.5kg)、中2日で5%(2.5kg)を目安に指導されます。もちろん性別、年齢、体格によって1度の透析でどのくらいの除水が可能かというのは変わってきます。当施設にもDW(ドライウェイト、基準体重)が100kgを超えるような患者や、190cmもある若くて体格のいい男性だと4時間で5~6kgの除水を行うこともあります。穿刺の疼痛に対するケアも必要になります。基本的に麻酔テープを貼付して疼痛の軽減を図っていますが、場合によっては穿刺前後のクーリング(保冷剤による冷却、湿布の貼付など)を行うこともあります。