今回は、臨床工学技士が管理する医療機器をご紹介します。ここで、ご紹介する医療機器は病院で、臨床工学技士が管理する医療機器の一部だということを始めにお伝えしておきます。
臨床工学技士が管理する医療機器
臨床工学技士が管理する医療機器を部署別にご紹介していきます。紹介する部署は以下の6カ所です。病棟機器、手術室、内視鏡室、カテ室、NICU、透析室。こちらの部署は、病院によっては存在しない場合もあります。全ての医療機器を網羅して紹介することは困難ですので、比較的取り扱われている頻度が多いと思われる機器をピックアップして紹介していきます。
病棟機器
病棟機器では一般病棟、HCU、ICUで使用する機器を紹介していきます。輸液ポンプ シリンジポンプ。輸液・シリンジポンプは患者に薬剤を投与する際の流量をコントロールするために使用します。臨床工学技士は毎年必ず精度の確認をして、記録を残す必要があります。患者監視装置(モニタ)。病棟では患者に心電図・血圧計・SpO₂を装着してバイタルに異常がないか確認しています。心電図にノイズが乗る、SpO₂が測れないといったトラブル時に臨床工学技士が呼ばれます。血圧計。小型で持ち運びが可能な血圧計で、テルモの「エレマーノ」が該当します。病棟の意外にもリハビリスタッフも使用しますので、病院の規模により保有台数は数個から数十個と膨大な数になるでしょう。呼吸器。患者の呼吸の補助や、強制的に換気させる機械です。呼吸モードがメーカーごとに異なっているため慣れるまでが大変です。低圧持続吸引機。外科の手術後に腹部や胸部につないだドレーンから浸出液を取り除く機械です。MERAの「メラサキューム」を使用している病院が多い印象です。除細動器(DC)。除細動を起こしている心臓に対して電気ショックを行い一律の状態に戻します。除細動器はいざというときに稼働させる機器です。そのため毎日点検し、記録に残しておく必要があります。多用途血液処理装置。CHDFやPMXを行う機器です。東レの「TR-55X」や旭化成の「ACH-Σ」が該当します。CHDFやPMXは臨床工学技士のみで完結する数少ない業務ですので、経験しておくことを推奨します。
手術室
手術室は医療機器であふれており、臨床工学技士が管理する機器は数えきれないほどです。代表的なもののみ紹介します。電気メス。ほとんどの手術で、電気メスを使うと言えるほど使用頻度の高い機器です。呼吸器と同様複数のメーカーから発売されており、術式や科により使う機器が変わり、保管庫を圧迫する原因にもなっています。超音波メス。電気メスとは異なり、使用する科が限られてくる機器です。脳外科、外科で使用されます。管理する者として電気メスとの違いをしっかり把握しておきましょう。麻酔器。麻酔導入中の全身管理をする機器です。麻酔器の上にはモニタを乗せていることが多いです。手術中に患者が命を預ける重要な装置ですので、毎日点検し記録に残す必要があります。ペースメーカー。手術室ではペースメーカーの植え込みを行い、その際は臨床工学技士がメーカーと共に立ち合います。毎年2回の定期チェック時に臨床工学技士がメーカーと共に行います。人工心肺。人工心肺を回すことが臨床工学技士の花形の業務とも言われます。人工心肺を回したい方は、心臓外科があり、人工心肺を用いた手術実績がある病院を探しましょう。腹腔鏡システム。外科の手術で使用されます。laparoscopyから「ラパロ」「ラパ」と言われることが多いです。システムの構成は内視鏡とほぼ一緒です。術中のトラブルでは気腹できない、動画が録画できない等があり、迅速な対応を求められます。トラブルシューティングを頭に入れ、即時対応できるよう準備しておきましょう。無影灯。手術には絶対必要な機器ですが、LEDが普及した現在ではほぼ手がかからない機器となっています。LED以前は電球が切れた時に交換が必要でしたが、その必要もなくなりました。
内視鏡室
内視鏡室で臨床工学技士が管理する医療機器を紹介します。内視鏡。医師が内視鏡検査に使用する内視鏡カメラで、アングル不良・漏水等の不具合が起きた際に対応します。内視鏡システム。内視鏡システムはモニタ・光源装置・ビデオシステム・記録装置で構成され、始業前の点検や光源の交換を行います。内視鏡洗浄器。内視鏡カメラを洗浄する機器です。フィルターや消毒液といった定期交換品の対応や、故障時のメーカーへ連絡します。
カテ室
心臓カテーテル検査や脳カテーテル検査時に、使用する医療機器です。カテーテルポリグラフ。通常のモニタよりも多くの項目を測定可能なモニタを「ポリグラフ」と呼びます。カテ室ではこのポリグラフの操作・管理を行います。大動脈バルーンポンピング(IABP)。心不全患者に対して心臓の後負荷・冠動脈への血流量を増やす目的で使用します。緊急時に使われることが多いため、毎日の点検や使用方法は熟知しておきましょう。経皮的心肺補助装置(PCPS)。PCPSは心臓のポンプ機能が低下した際に全身の酸素化を行う機器です。
IABPと同じく緊急時に使用されるため、日頃の点検・使用方法の勉強を怠らないようにしましょう。
NICU
新生児に対して使用する医療機器の紹介をしていきます。保育器。新生児を入れ、加湿・保温するための機器です。保育器が新生児の最適環境を作れなければ生命の危害を及ぼすため、毎年の点検や始業前点検を確実に実施し記録に残す必要があります。脳低体温装置。新生児の脳を守るために脳の温度を3℃程度落とす機器です。IMIの「アークティックサン」が該当します。出産後6時間以内に開始しないといけないため使い方を把握しておきましょう。微量シリンジポンプ。先に紹介したシリンジポンプよりも少量の輸液が可能なシリンジポンプです。最低輸液量0.05ml/hと超低速での輸液が可能です。
透析室
臨床工学技士のもう一つの花形業務である、透析を行う際に必要な医療機器を紹介します。透析監視装置。コンソールとも呼ばれる機器で、日機装・東レ・JMS・ニプロから販売されています。全ての臨床工学技士がどれかのコンソールを操作したことがあるでしょう。血液透析水処理システム。透析を行う上で必須な機械で、厳格な管理が必要です。毎日の数値の記録やトラブル時の対応を事前に考え周知しておきましょう。
まとめ
ご覧いただいた通り、多部署において管理するべき医療機器が複数あり、今回挙げた機器はあくまで一部であり、実際はもっとあります。日々進歩を続ける医療機器についていくのは大変ですが、時代の最先端に立ち会えるため、恵まれた職業とも言えるでしょう。