【臨床工学技士インタビュー】学会活動や進学が活発な関西医科大学香里病院

香里(こおり)病院

2010年7月に関西医科大学の4附属病院の一つとして旧香里病院の跡地に開院した、15診療科199病床数の一般急性期病院。中央部門として腎臓病センターや外来化学療法部門なども備えるとともに、京阪電車の香里園駅からは屋根付きのデッキで病院玄関に直結というアクセスの良さを生かし、大学病院としては全国的にも珍しい夕診の診療体制をとるとともに、2016年以降は訪問看護ステーションやデイケアセンターの介護福祉部門も設置し、医療から介護へとシームレスな連携により地域への貢献を目指す。

大学病院としての高い専門性に裏付けられた高度で安全・安心な医療と介護を提供しながら、市民の健康維持や病気予防にも貢献し、地域の皆様から信頼される病院であり続ける医用工学センターの杉浦正人(すぎうら・まさと)副技士長、茂谷聡子(もたに・あきこ)技士、佐野亜加根(さの・あかね)技士にお話を伺った。

杉浦副技士長(左)・佐野技士(中)・茂谷技士(右)

臨床工学技士を選んだ理由

佐野 技士佐野 技士

大学時代に生命科学科という医療や生物・化学を学ぶ学科にいたのですが、特にやりたい事がない状態だった時に、研究ゼミの先輩が臨床工学技士という資格がある事を教えてくれました。医療職の国家資格が、専攻科クラスでは1年通うと受験資格を得られるということで、興味を持ち臨床工学技士を目指しました。

 

茂谷 技士茂谷 技士

大学受験に際して、将来何になりたいか全く決まらなかったので、母が資格一覧という本を買ってきてくれました。母からは「女性でも手に職をつけると一生困らない」とアドバイスを受け、医療系に興味があったので、資格の中から将来性のある業種であり、試験科目も得意科目で受験できる臨床工学技士を選びました。

 

香里病院を選んだ理由

佐野 技士佐野 技士

学校を卒業するときから透析をやりたいと思っていました。透析は患者さんとお話が出来るのが魅力です。学校の先生の紹介で、当初名古屋の病院の透析室に勤めていました。その後多くの外来透析患者を受け入れ、透析を極められる大学病院という条件で探し、当てはまるのが香里病院だったので、香里病院一択で転職しました。

 

茂谷 技士茂谷 技士

実習中に、心カテ、人工心肺に興味を持ち総合病院に入りたいと思い、家から近い関西医科大学附属病院に入職しました。部署内で結婚したのを機に、宿直業務のない香里病院に異動させてもらいました。

 

1日の業務の流れ

佐野技士 1日の業務の流れ

定時:8:00~16:10
8:00 プライミング(臨床工学技士と看護師で)
8:30 透析室ミーティング(透析後の診療予定の確認など)
8:50 1クール目穿刺開始(4時間透析)
12:00 お昼休憩(遅番12:00~20:10出勤後昼食休憩)
13:00 1クール目返血開始
13:20 2クール目透析穿刺開始、空きベッドがあれば翌日準備、機械清掃・点検
16:10 終業

茂谷技士 1日の業務の流れ

9:00~16:10(時短勤務)
9:00 穿刺開始
10:30 各病棟医療機器管理・在庫管理(シリンジポンプ・輸液ポンプ)、人工呼吸器ラウンド使用中点検、ラウンド終了後中央機器管理
12:00 お昼休憩
13:00 午前業務の続き
16:10 終業

香里病院でのやりがい

佐野 技士佐野 技士

患者さんとの日々の会話や、採血データを見てこうした方がいいんじゃないですか?というような話し合いを医師と行い、患者さんの症状や採血結果に改善が見られ、患者さんが喜んでくれて感謝されると非常にやりがいがあります。日々のお話の中で相談を受けたりしますので、医療職としてやりがいがあります。

 

茂谷 技士茂谷 技士

医用工学センターの皆さんの協力で、仕事と子育ての両立が出来ています。急性期からきたので、やりがいを感じず辞めたくなったこともありました。ですが家に帰って主人にこういう事があったと話をしている時、患者さんを助けられる仕事が出来ている事に、実はやりがいを感じているんだなと思いました。

 

とりたい資格・今後の目標など

茂谷 技士茂谷 技士

医療福祉の分野だったのですが、工学修士は取得しています。透析をやっているので、腎内分泌代謝の分野で医学博士を取得しようと思っています。出産・育児を経て、臨床工学技士で母として働くことの難しさを聞くようになりました。育休がとれない環境も多いことなどを聞きます。現在男女共同参画にも参加しており、大阪府技士会全体として、働く環境改善が出来るような活動をしていきたいと思っています。各病院の意識改革から始められればと思っています。

香里病院では育休取得の際、どのくらいの期間休む?など聞いてくれたので、思うように休ませてもらいました。休職中は呼吸器チームのLINEに入っていましたので、疎外感を感じずに過ごすことが出来ました。

 

杉浦 副技士長杉浦 副技士長

香里病院にきて働きながら工学修士をとりました。現在もう1人大学院に通っており、3人(8人中)は修士を取得する予定です。基本給も上がりますし、修士・博士を持っていると大学などでの講師としての就職もしやすくなると思います。選択肢を広げるために、とれるのであればとっておいた方が良いと思って推奨しています。

 

入職研修について

佐野 技士佐野 技士

入職後1週間は、本院に集まって導入研修をします。穿刺が出来るまで1年透析の研修、仕組みから流れまでマンツーマンで教わり、穿刺が出来たら独り立ちといった感じです。2年目からは医療機器のメンテナンスというような流れになります。

 

一緒に働きたい人

茂谷 技士茂谷 技士

現在の職員は8名(女性3名)で、残業も少なく、働きやすい環境です。必要なのはコミュニケーションを取れること、多職種、患者さんとお話するのが楽しいと思ってくれる人材です。アドバイスを求められる時「エビデンスは?」と聞かれるので、きちんと勉強し、特定看護師さんや先生方と臆することなく話すことも求められます。透析だけではなく、呼吸器をつけたまま転院される患者さんもいますので、呼吸器を極めたい人にも良い環境だと思います。

 

学会活動や技士会活動

杉浦副技士長

香里病院で血液浄化をスタートさせるにあたって、経験者枠で入職しました。院外の活動としては、各工学会、学会、地方会などで積極的に発表をしてもらう環境づくりを心がけています。直近の3年間では計19回の座長、講演、発表などの学会活動を行っております。

大学病院として日々の研究活動は怠らずに業務を行っています。また部内からの研究費も得やすい環境ですので、毎年医療の進歩への貢献を意識して研究発表をしています。

また統計学やお薬の効果、サルコペニアなど、透析以外での発表もしています。技士の業務範囲にこだわらず、興味をもってもらうことが大切と考えております。

(公社)日本臨床工学技士会、(一社)大阪府臨床工学技士会などの技士会活動にも積極的に参加しております。技士会を通じて男女共同参画であったり、臨床工学技士の認知度向上に関わることの活動をさせてもらっております。職能団体は臨床工学技士として働くうえで必要不可欠な団体であると考えております。技士会活動を通じてこれからの臨床工学技士について考え、また地域の技士との繋がりを持ち医療へ貢献できるような人材を育てられればと思います。

 

取材協力

関西医科大学香里病院 医用工学センター
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