【臨床工学技士インタビュー】「興味と向上心さえあれば一人前の臨床工学技士に育てます」特定機能病院として地域に先駆けた先端医療機器の導入、高度医療技術の提供を担う 岩手医科大学附属病院

岩手医科大学附属病院

本学は、1897年に学祖三田俊次郎先生が私立岩手病院と医学講習所を創立して以来、岩手の地において高度医療、医学教育、医学研究に邁進し、2017年に創立120年を迎えました。この間、医療制度改革、東日本大震災津波などの大災害、深刻な医師不足など、様々な事象に対応して参りました。

現在、我が国の医療は、少子高齢化という大きな課題に直面しています。2025年には、約800万人の「団塊の世代」が75歳以上の高齢者となります。この頃には高齢者の5人に1人が認知症患者となります。一方、労働力人口は、2060年には44%となり、働く人よりも支えられる人が多くなることで、医療を担う人材の確保が極めて困難となります。

大学病院は、高度な医療を提供するため、施設・設備が重厚であると同時に多くの人材を要しますが、高齢者の増加と将来に亘る人材不足に対応するためには、「患者・ご家族のみなさまの療養環境を整えること」と「医療人の負担を軽減し、医療を提供する環境を整えること」が必要です。このことが、患者・ご家族の皆さまへ安全で良質な医療を提供し続けることに繋がります。

岩手医科大学附属病院は、2019年9月21日に病院本体が矢巾町に移転いたしました。今後も県内唯一の特定機能病院として、高度医療提供の役割を担っていきます。同時に内丸には、これまでの内丸の施設・設備を利用した迅速な検査・診断を行う高度外来機能病院として内丸メディカルセンターが開院しました。2つの病院が離れて運用されますが、皆さまの療養環境と働く人々のための労働環境を再構築致します。この新しい2つの病院で、一人でも多くの方々が、希望を持って治療に臨まれて、一人でも多くの方々が、喜びを得られることを期待しております。これまでも、これからも、地域の全ての皆さまに適切な医療をお届けするために、全力を尽くして参ります。ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

今回は、岩手県最大病床数1,000床の高度救命救急センターで、岩手県唯一の大学病院として最先端医療を支える臨床工学部の泉田拓也(いずみだ・たくや)技士長にお話をお伺いしました。

臨床工学技士を知った、目指したきっかけ

泉田技士長

自分が入院した実体験がきっかけとなっています。高校時代、腎臓の病気が発覚し、約4か月間の闘病生活を経験しました。当時は高校入学直後の16歳で、受診時は小児科扱いでしたが、岩手県内では対応が難しいとのことで、他県の大学病院に転院し治療を受けました。その時に、血液浄化の血漿交換療法という治療を受けたのですが、自分が罹っている病気と、その治療過程に興味を持ち、医療に携わる仕事として臨床工学技士の存在を知り、その仕事内容に興味を持ったのが始まりです。

進路を決める高校3年生の時、養成校である専門学校で行われたオープンスクールに参加したことで、より一層興味が深まり、迷わず臨床工学技士への道に進みました。

岩手医科大学附属病院を選んだ理由

養成校の授業を受ける中で、人工心肺操作をやってみたいと思うようになりました。

岩手県内で心臓・大血管の手術を実施できる病院は、たったの2施設だけと限られているのですが、就職先を決めるその年に、たまたま岩手医科大学附属病院より採用予定があることを知り、実家から近いことを一番のメリットに感じ、受験した結果、運よく採用となりました。

泉田技士長の業務

寂しいですが…、立場的にも臨床業務に関与する場面は少なくなりました。通常は、部署のスタッフがやりがいを持って働けるように業務調整やスタッフ管理を行っております。また、医療機器へのマネジメントする部門責任者として病院経営に貢献するよう努めております。

なお、夜勤による臨床業務への関与は継続しており、既存スタッフや学生指導のための現場把握と問題改善のため、また、個人的には臨床技術レベルの維持と取得資格の継続に向け、臨床経験は継続しており、日々の自己研鑽に励むよう努めております。

移転に伴う勤務形態の変更ついて

2019年9月に盛岡市内丸地区から、矢巾町に病院本体が移転しました。それに伴い、内丸地区には外来受診窓口と歯科医療センター、1泊程度の検査や手術入院を受け入れる機能を有した内丸メディカルセンターを開設し、私たちが主業務を担う、矢巾町の附属病院と密接な連携を図っております。

移転による生活環境の変化と、関連する業務範囲の拡充に伴い、5年間で20名程の増員を経験しております。2023年時点では、総勢40名(男性32名:女性8名、20代18名・30代12名・40代7名・50代3名、平均年齢32.6歳)の部署となっております。

移転前の当時は、全スタッフが日勤だけの勤務体制であり、夜間緊急時の対応策として、当番によるオンコール(呼び出し)対応としておりました。
しかしながら、多くのスタッフの生活拠点は盛岡市内のままで、病院移転によって通勤距離が延びることから、緊急時の迅速対応が困難になることが想定され、問題視しておりました。

このことから、日勤と夜勤による二交代制勤務を導入し、24時間の迅速対応可能な組織として、日々の業務に従事しております。

臨床工学部の業務の流れ

勤務形態

[日勤] 8:3017:00(休憩1時間)
[夜勤] 16:45~翌8:45(16時間勤務うち2.5時間休憩)
 ・日勤と夜勤の勤務時間が重なる15分間で情報共有と業務伝達

[オンコール(当番)] 緊急手術・カテーテル治療、業務重複時の夜勤対応困難な場合 など
[残業時間の目安] 月平均10時間程度(多いスタッフでも2030時間程度)

8:30 朝礼 (夜勤者より当日勤務者へ伝達、周知事項について報告を実施)
8:40
 各部署配置先へ (配置先で個別に詳細な情報伝達を実施した後、業務開始)
 ・スタッフ個人で複数部署の業務を掛け持ちすることはありませんが、当日の業務量のバランスを考慮し、流動的に配置数を調整しております。
16:45
 終礼 (各部門の代表者より、夜勤者への申し送りを実施)
17:00
 終業
 ・各部門で業務が残っていれば当日のオンコール担当者が残業となりますが、
・可能な限り、夜勤者へ業務を引継ぎし、残業時間の短縮に努めています。

内丸メディカルセンター業務

内丸メディカルセンターは医療機器保守管理業務が中心で、固定人員ではなく、矢巾附属病院から日替り派遣

医療機器保守管理 … 運用管理、点検・修理
デバイス外来 … 動作確認、遠隔モニタリング

矢巾附属病院業務

医療機器保守管理 … 運用管理、点検・修理
術業務支援 … ロボット支援下手術システム(da Vinci / hinotori)、人工心肺、神経刺激
血液浄化業務 … 慢性維持透析、急性期血液浄化、特殊血液浄化、末梢血幹細胞採取
集中治療業務 … 人工呼吸器・酸素療法、補助循環
血管造影・心臓カテーテル部門 … カテーテルアブレーション、植込み型デバイス(ペースメーカ・ICD)

現在、内視鏡部門での業務支援・介入について構築中。

教育環境

各種学会活動(演者・座長など)には積極的に取り組みを行っております。これらの活動には、対外活動補助として病院からの費用の援助が行われております。

今までは、業務に関連した資格の取得は、自己研鑽という病院側の認識でした。しかしながら、施設認定に係る専門資格の取得に対しては、病院側の支援が得られるよう調整を進めております。
また、院内研修の他に、メーカーにて開催される勉強会・研修会にも積極的に参加を行い、高い専門性と知識のアップデートに努めております。

新入職員への教育支援について

入職から4日間は、事務方の行う全新入職員を対象にした、医療安全・事務接遇・社会人としての心構えといった研修に参加し、5日目より臨床工学技士の通常業務に入ります。

1か月間、機器中央管理を担うCEセンターを中心に対応を行います。院内医療機器への理解を深めるために、保守管理業務を通して、院内にはどのような医療機器が存在し、病棟ごとにどれくらいの需要があるかなどを把握していきます。

2か月目からは実際の臨床業務を始め、半年後には休日の日勤対応、10か月を目安に夜勤業務対応を始めることが当面の目標になります。夜勤対応に向けては、広い分野の知識と対応する能力が必要とされますが、習熟度に応じた教育体制を整えております。補助循環や緊急カテーテル治療への初動対応(オンコールが来るまでの準備)が出来るように、先輩スタッフより丁寧に指導が行われますので心配はいりません。

1年目でラダー初級、2年目でラダー中級、3年目で業務習得といったイメージで、ローテション業務を経験し、ジェネラリストとして院内の多くの業務へ対応出来る体制を構築しております。その中で、自分の目指すべき姿、キャリア形成を進めていきます。5年目以降は、専門性を高めたスペシャリストを目指します。

採用について

地方の大学病院ではありますが、岩手県内だけでなく北東北の拠点病院として、重要な役割を担っております。岩手医科大学附属病院は、県内、東北でも先駆けとしてロボット支援手術装置(da Vinci、hinotori)が導入され、各診療科の取り組みで、積極的な低侵襲治療が行われております。また、病院の経営方針として、TAVIやMitraClip、WATCHIMANなど、先端医療技術の導入にも積極的です。

採用方法は、適性検査、専門試験、面接(事務方、臨床工学部長、技士長)にて判断され、合否が決定されます。

当院で働いてみたいという方、興味・向上心を持って、自分の意見・考えを述べることができれば問題ありません。意欲を持って、患者さんの為に考えて、率先して行動できる人であれば、是非とも採用させていただきたいです。

一緒に働きやすい組織を作っていきましょう。

 

取材協力

岩手医科大学附属病院 中央診療部門 臨床工学部
〒028-3695 岩手県紫波郡矢巾町医大通2丁目1−1 Tel.019-613-7111