近頃、医療ドラマやメディアにも登場する医療現場の職種「臨床工学技士」。以前は、医療職としてあまり知られない職種ではありましたが、昨今の新型コロナウイルス感染症で「ECMO」と呼ばれる医療機器を扱う職種として注目を浴びました。そんな臨床工学技士ですが、病院やクリニックで「ME」と呼ばれたり、「CE」と呼ばれたりすることがあります。なぜ?ふたつの呼び名があるのでしょうか?今回は臨床工学技士の通称名で「ME」、「CE」の違いは?「ME」、「CE」と呼ばれる理由について詳しく解説していきます。
臨床工学技士とは?どんな職種?
臨床工学技士は、厚生労働大臣の免許を受け、医師の指示のもと、血液浄化装置、人工呼吸器、人工心肺装置などの生命維持装置を操作し、現代医療に欠かせない医療機器のスペシャリストとして活躍しています。直接、患者さんの命と関係するものが多く、高度な技術と知識が必要です。また、これらの医療機器を安全かつ正常に稼働させるため保守点検を行い、日々高度化する医療機器を専門的知識で管理しチーム医療に貢献しています。勤務先は主に病院やクリニック、医療機器メーカーです。臨床工学技士は、1987年に誕生した比較的新しい国家資格で、医療機関においてME(Medical Engineer)や、CE(Clinical Engineer)と呼ばれることもあります。
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ME(Medical Engineer)って何の略?
MEとはMedical Engineer(メディカルエンジニア)、医療エンジニアの略です。メディカルエンジニアは日本語に訳すと「医療機器の技術者」となります。そしてMEは医用生体工学、臨床工学を指し、ME機器とは工学技術を駆使して開発された医療機器、特に患者の診断、治療、モニタリングに使用される医療機器のことを指します。ME機器は1950年代から使用され始めたと言われています。MEという言葉は、当時、ME機器を管理する人を指す言葉として使われました。
CE(Clinical Engineer)って何の略?
CEとはClinical Engineer(クリニカルエンジニア)、臨床工学技士の略です。1987年に臨床工学技士が誕生すると同時に、臨床工学技士を意味する「CE」へ呼び名が変わります。臨床工学技士の職能団体である公益社団法人 日本臨床工学技士会は、「Clinical Engineer(CE)」に呼び方を統一しています。
しかし、それまでME機器を管理していた技術者をMEと呼んでいたことの名残から、いまでも医療機関において「MEさん」と呼ばれることが多くなっています。
ME、CEの歴史
では、なぜMEやCEと呼ばれるのでしょうか?1950年代、日本の医療にME装置が導入され始めた頃、ME装置の取り扱いに長けた技術者が必要とされ、診療放射線技師や臨床検査技師にその業務が依頼されることがありました。その後、さまざまな学会や企業が設立され、1970年代には病院や診療所に「ME技術者」、当時は「MEテクニシャン」と呼ばれた人たちが登場するようになったのです。一方、1970年代に入ると、米国の病院でも臨床工学部門が登場するようになりました。米国のCEは機器を安全に使用するための保守点検や修理が中心業務でしたが、日本のMEは医療機器の保守点検・修理にとどまらず、操作や運転を中心業務としていました。このように、日本のMEは日本の高度化する医療を機器管理を通して支えて来ていたわけですが、1980年に「クリニカルエンジニアリング基本問題研究委員会(CE委員会)」が発足されます。そこではCEを「生命科学と工学技術の間で、臨床医療に直接貢献することを目的とした学問技術分野」と定義しました。その後、すでに国家資格として確立されていた診療放射線技師や臨床検査技師に並ぶよう、臨床工学技士も国家資格化されました。1987年には臨床工学技士法が制定され、翌年1988年には第1回臨床工学技士国家試験が実施されました。
臨床工学技士は、医療機器のスペシャリストとして誕生した国家資格ですが、まだ新しい資格の為、歴史も30年程度です。沢山の医療機器が存在する中で、臨床工学技士が管理・メンテナンスする以前は、誰が医療機器の管理・メンテンナンスを行っていた?臨床工学技士が誕生した理由ときっかけは?徹底解説しています。
まとめ
このように、「ME」や「CE」と呼ばれる臨床工学技士ですが、ふたつの呼び名で呼ばれる背景にはこういった歴史があります。いま現在ではCEに呼び名を統一していますが、医療現場ではいまだ長年の名残のせいか「MEさん」と呼ばれることが多いように感じます。どちらにせよ、臨床工学技士は現代の高度医療技術、高度医療機器を扱う重要な職種です。今後もますます臨床工学技士は飛躍を続けていく存在となることが期待されています。
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