【臨床工学技士インタビュー】高度医療を行う各診療科所属の臨床工学技士が集結した東京女子医科大学病院の臨床工学部。専門性が非常に高く医師からの信頼が厚い

東京女子医科大学病院

東京女子医科大学病院は、建学の精神と「至誠と愛」の理念のもと、1908年の開院以来、質の高い安全な医療の提供と、次代を担う医療人の育成に努めてきた。

東京女子医科大学の教育・研究・診療の基盤となる理念は「至誠と愛」であり、「きわめて誠実であること」「慈しむ心(愛)」は教育・研究・診療の総ての場において求められている。本学の理念に従って附属病院も運営され、その伝統は先人から脈々と引き継がれ現在に至っている。

最新の内科治療のほか、手術件数は年間10,000件超。低侵襲手術やロボットを用いた手術件数も国内で有数の高度な医療を提供しており、高度で適切な治療を提供するために約50の診療科を有している。

安心と安全を最優先して、患者さんファーストで患者さんに優しい、かつ高度な医療と教育・研究を行っている。様々な病気を抱えた患者さんが安心して受診でき、病院を出る時には少しでも希望をもって帰宅できるよう、職員が一丸となって努力している。

今回は高度医療を行う診療科でチーム医療を実践する、臨床工学部熊丸隆司(くままる・たかし)副技士長にお話をお伺いしました。

熊丸副技士長が臨床工学技士を目指したきっかけ

熊丸副技士長

理数が不得手ということではなかったので、社会的貢献度ややりがいがあり、社会の中で重要とされる医療職を進路として考えていました。

医療系で活躍できる職業は診療放射線技師がメジャーでしたのでなりたいと思っていました。医療職種を調べていくうえで、臨床工学技士に興味を持ちました。機械全般を担当する業務で、医療機器は発展が目覚ましく伸びしろのある魅力的な職業だと思い進学しました。

今でも、臨床工学技士は伸びしろしかないと思っています。科学の発展があれば、医療機器も進歩していきますので、今後の発展に関与して行けるというのは職業としては魅力的だと思っています。

入職にあたって

地元は熊本なのですが、当時の熊本県内での募集は地域中核病院かクリニックしかありませんでした。スケールで考えた時に、首都圏で働くことは非常に魅力的だと思いました。情報も入ってきやすいですし、特に東京女子医科大学病院は、ほかの病院が治療に苦慮する患者さんが多く多く集まります。

そういう意味でも日本有数の東京女子医科大学病院で働けることは光栄だと思いました。地域医療は地域では非常に必要な存在ですが、東京女子医科大学病院で働くことは、全国に最新医療を広げる成果をもたらすものであって、魅力的だなと思っています。

一日の流れ

カテーテル室の勤務の場合
(心血管カテーテル、カテーテルアブレーション、植込み型心臓電気デバイスなど)

定時 8:00~16:20(お昼休憩1時間) ※透析室は早出、遅出などシフト制
夜勤 16:00~翌8:00 1名(ジェネラリスト業務が出来る人)

8:00 各部署で朝礼、準備(点検、カンファレンスなど)
9:00 カテーテル業務開始
(カテーテル室業務は終わるまで担当。少ない時はお昼で終わりますが、多い日は残業になります。)
11:00~14:00(うち1時間) お昼休憩
16:20 終業

月間残業時間平均30時間(専門性の高い業務を担当している人の残業は多め)
4週7休(+祝日の数)

高度な不整脈治療領域が当院の特徴です。小児のWPW症候群や先天性心臓疾患を伴う不整脈は、カテのサイズが長かったり大きかったりして合わず、治療による不整脈が発生することがあります。小児の複雑な心奇形に対しての解剖的理解が出来ている人が少ないのが実状です。

人工心肺を扱っている方の中には、心奇形の理解をする方はいるのですが、そういった方で不整脈領域の理解がある方が少ないので、他の病院での症例は少ないと思います。小児科と心臓血管外科と循環器内科を跨ぐような治療になりますが、東京女子医科大学病院はその全ての理解がある人がいるので出来るということになります。

ここ3年くらいでローテーションがうまく回り始めているので、心カテ業務と人工心肺業務の両方が出来る人が増えてきました。夜勤1名とオンコール数名で夜間でも対応しています。

教育支援

施設要件になる体外循環技術認定士、人工心臓管理技術認定士などの研修費用は支給されます。臨床工学技士の告示研修は他の業種に比較して高いので、病院から費用を出してもらっています。学会の演題発表者は旅費等の出張費用を臨床工学部の研修予算で出しています。

入職後研修

4月1日に入職すると、病院研修があります。感染、医療安全、個人情報の取り扱い、社会的な教養など社会人・医療人としてや病院のルールなどを習得します。

配属後は、まず透析室でコミュニケーション能力を磨き、更に2年間かけて各業務チェックリストを用いながら業務習得を行い、3年目により深く取り組みたい分野を見つけメイン業務を作ってもらいます。希望した業務が飽和している状態は、当面はローテーション業務といったかたちで業務に就いてもらいます。

当院の臨床工学部は各診療科所属であった臨床工学技士を2002年8月に一つにまとめ、診療支援部門の一つとして設立しました。2013年からローテーション業務を始めました。センター制時代の名残もあり、各部門は専門性が非常に高く各診療科から高い評価を得ており、スペシャリストがチーム医療の中核を担っています。

自論ですが、ある程度高い山を築くにはすそ野が大事で、多岐に渡る業務が出来ているからこそ、上に伸びると思っています。私はずっとカテーテルしかやっていなかったので、志願して他の部署にも行かせてもらい業務習得しました。

今は研修がありますので、入職後2年間の研修で基本的なことを修得してもらっています。先進的な医療をやっている病院ですので、医師から求められるレベルが非常に高く、ある程度スペシャリティが無いと対応できません。ジェネラリストも必要ではあるのですが、少なくとも一業務は自分が得意とする分野を持ってもらわないと難しいため、専門的な業務に進みたいと思ってくれる人を求めています。大まかにスタッフは4階層に分かれています。

・専門的にその業務リーダーを担うスペシャリスト
・スペシャル&ジェネラリスト(スペシャルな部分を残しつつジェネラリスト業務を行う)
・完全なジェネラリスト
・2年間の研修中の人

40歳以上のスタッフが1/2くらいいますが、その方たちは、スペシャリストですので、少なくとも一つ以上の他の業務を修得してもらうようにしています。

診療科の建物が離れているため【第一病棟】は透析室と手術室業務、【西病棟】はカテ室とハイブリッド手術室とCCU、【中央病棟】は手術室とカテ室、【東病棟】はICUとERなど、同じ建物の業務を修得してもらいます。行き来が大変なため病棟ごとの業務という珍しい状態になっていますが、それだけでは足りないため、他の業務も習得してもらいます。私より年下の人には、出来るだけ色々な業務を見てもらうことが出来るようにしています。

2年間の研修プログラムは以下のようになります。
ローテーションする順番は各年度の入職者数次第で変更されます。

1.透析室 4か月
2.カテ室 4か月
3.手術室 6か月
4.ICU 4~6か月
・ICUは全身管理だが1.2.3.の次だと代謝、循環、呼吸が分かった状態なので4か月程度かかる
・早い段階でICUだと、循環や呼吸の理解が出来ていないので、6か月程度かかる
5.ME機器管理室 2か月
・残りの期間は習得不足の分野や植込み型補助人工心臓(VAD)のトレーニング

上記の業務の他、ペースメーカーなどの植込み型心臓電気デバイス(CIED)管理などもあります。CIEDは2,000人以上の患者さんの管理をしています。

採用に関して

心臓移植ができる施設は全国に11カ所しかありませんが、そのうちの1病院になります。心臓に関しては抜きん出た施設ですので、心臓の分野に興味のある方に来てもらえると非常にありがたいです。VADの患者さんは多くいらっしゃいます。

日本の医療を切り拓く病院ですので、最先端で専門的な臨床工学技士業務になります。日本で行える医療は全て出来る病院です。医療技術・医療機器は日進月歩であり、VADに関しても不整脈治療デバイスにしても、よりよく新しくなっていきます。よりよくなるということは機能が増えることですので、常に知識や技術をアップデートしなければならないため、これに対応できる向上心が必要です。仕事は食べていくためにするものという考えでは、厳しくなってくると思います。

同じカテーテル治療でも、他の病院では手の付けられない重症度・難易度の高い患者さんの治療となりますので、他の病院の1症例とは違ってきます。深い業務理解が必要です。

求める人材は?

私が求めるのは責任と向上心です。またチーム医療が提唱されていますので、社会性も必要です。臨床工学技士というと職人気質の方が多いかと思いますが、自分一人で完結できる臨床はないので、医師や看護師をはじめとした他職種とのコミュニケーションが必要な業務が多い職種です。

採用試験は専門試験、適性検査、小論文、面接になります。学力は平均あれば十分です。最終的に欲しいと思うのは、東京女子医科大学病院に来て何をしたいんだという意欲です。様々なメディアで情報は取れると思いますので見学は来ても来なくてもいいです。働く上で、現場を見ておきたいというのであれば、来てもらえればと思います。

東京女子医科大学病院で働き続けてもらいたいとは思いますが、ある程度の年齢になると地元に戻るなど転職される方がいます。日本の医療・臨床工学技士という目で見た場合には、女子医大は女子医大のキャパシティがありますので、専門的に覚えてもらった業務を転職されるときに、地域の病院に行って広めてもらうのも東京女子医科大学病院の役割だと思っています。大学ですので教育で得た業務を広めるという意味では退職が悪いことだとは思っていません。附属病院が足立区と千葉県八千代市にもありますので、そこで地域医療に還元してもらうという活かし方もあります。

給与

給与は専門卒は3年就学なので、1年分金額が低いだけで、2年目には大卒と同じ給与になります。その後は昇進で差がついていきます。

専門学校や大学などの養成校の実習も受けていますし、実習でいい人がいると欲しいというような話も出ます。最終学歴での足切りはありませんので、意欲的に最先端医療に関わりたいという方は受験いただければと思います。

 

取材協力

東京女子医科大学病院 臨床工学部
〒162-8666 東京都新宿区河田町8−1 Tel.03-3353-8111
採用情報