【臨床工学技士インタビュー】沖縄の海が綺麗だったので琉球大学病院に転職、琉球大学で医学博士を取得し、学会発表や臨床工学技士会活動、国際交流も

琉球大学病院

琉球大学病院(りゅうきゅうだいがくびょういん)は、国立大学法人琉球大学が沖縄県中頭郡西原町に設置する大学病院で、沖縄県で唯一、また、日本最南端かつ最西端の大学病院。特定機能病院の承認を受けるほか、都道府県がん診療連携拠点病院、エイズ治療拠点病院、肝疾患診療連携拠点病院、沖縄県災害拠点病院に指定されている。2020年(令和2年)4月1日に琉球大学医学部附属病院から琉球大学病院へ名称変更。

2022年6月:臨床工学室を廃止
2022年7月:医療技術部臨床工学部門を設置

琉球大学病院基本理念

病める人の立場に立った、質の高い医療を提供するとともに、地域・社会に貢献する優れた医療人を育成する。

基本方針は、理念を実現するために作られています。
1)生命の尊厳を重んじた人間性豊かな医療の実践
2)地域の医療・保健・福祉に対する貢献
3)先端医療技術の開発・応用・評価
4)専門性及び国際性を備える優れた医療人の育成
5)働きやすくやりがいのある職場環境の整備

琉球大学病院臨床工学室は2008年に循環器業務を開始。循環器業務を担当し、沖縄県臨床工学技士会の副会長を務め、学会活動も精力的に行う矢島真知子(やじま・まちこ)技士(医学博士)に琉球大学病院の業務をお伺いした。

琉球大学 矢島真知子 技士に聞いてみた

矢島技士

臨床工学技士はどのように知りましたか?

私が高校生の時、母が看護助手の仕事をしていて、母から臨床工学技士という仕事を聞きました。医療職に興味があり、機械いじりが好きで、物理が好きだというのを知っていたので、興味を持つと思ってすすめてくれたのだと思います。

どうして臨床工学技士になることを決めたのですか?

小さい頃は病院通いが多く、優しくカッコいい医師や看護師に憧れがあり、小さい頃から将来は病院で働きたいと思っていました。そんな中、臨床工学技士という職業があることを知り、医学の知識だけではなく、医学と工学の両方を学べるということで、進学を決めました。学ぶのであれば、大学が良いと思って、臨床工学科を設置した第一号の北里大学の4期生で入学しました。医学と工学が学べて国家資格が取得できる、ということくらいしか知らなかったので、臨床工学技士がどういう仕事かは、よく知りませんでした。

どうして琉球大学病院に入職したいと思いましたか?

埼玉生まれで埼玉育ちだったので、最初の就職は埼玉医科大学病院でした。仕事の傍ら、先輩の影響でスキューバダイビングを始めて沖縄の海にハマりました。サイパンやパラオ、メキシコなど海外にもスキューバダイビングをしに行きましたが、沖縄は、どこを潜っても海が綺麗です。埼玉で7年間働いたのですが、人生で一度は埼玉から外に出てみたかったのと、寒いのが苦手で、沖縄の海にハマったこともあり、沖縄に行こう!と決めました。そのタイミングで、たまたま募集があったんです。

どのようなお仕事に従事されていますか?

主に循環器業務をやっています。当院では、循環器業務においては縦割り業務ではなく循環器領域の周術期(術前・術中・術後)すべてを6名で対応している特徴があります。

循環器業務はカテーテル室で行われる虚血に対するカテーテル治療や不整脈治療、ペースメーカ植込み、手術室やICUでの人工心肺、補助循環装置の操作と患者管理、またハイブリッド手術室で行われるストラクチャー(Structural Heart Disease:SHD)※ 業務としてTAVI(経皮的大動脈弁留置術)※ やMitra Clip(経皮的僧帽弁クリップ術)※、ステントグラフト術※ などにおける清潔介助や外回り業務があります。また、沖縄では唯一の大学病院ですので、県内では補助人工心臓患者さんの管理をすることができる唯一の施設になり、補助人工心臓の外来業務などもあります。

私は、それぞれの分野を勉強する一つの手段として不整脈治療専門臨床工学技士認定や心血管インターベンション技師認定、体外循環技術認定士、補助人工心臓管理認定士などを取得して、質の高い患者さんの対応ができるように心がけています。学生時代も勉強が必要ですが、入職してからも医療機器は日進月歩に進化し続けていますので、日々勉強が欠かせません。

※SHD(Structural Heart Disease、構造的心疾患):弁膜疾患、先天性心疾患、心筋疾患など、心臓の構造異常によって病的状態をきたす心臓の病気のこと
※TAVI(経皮的大動脈弁留置術):胸を開かずまた、心臓を止めることなく、カテーテルを使って「人工弁」を患者さんの心臓に装着することができる治療法
※Mitra Clip(経皮的僧帽弁クリップ術):心臓の弁のひとつが正常に働かなくなって、心臓の中で血液が逆流する病気の治療法
※ステントグラフト術:ステント(金属のチューブのようなもの)とグラフト(人工血管)を組み合わせた器具(ステントグラフト)を用いて、カテーテル操作によって血管の中に留置することにより、瘤に直接血圧かかからないようにして破裂の予防をする手術法のことです。

やりがいは何ですか?

患者さんが医師や看護師には言えないことを臨床工学技士の私には話してくれて、「あなたと話ができて良かった」と言ってもらえた時や、患者さんの安心した笑顔と「ありがとう」の言葉をもらった時にやりがいを感じます。そして、急変した患者さんの対応をした際に、患者さんの命を救うことができた時にやりがいを感じます。

また、機器の不具合があった時に、すばやく原因を究明してリカバリーした時や、事前に危険や不具合を予測し対応していたからこそスムーズな検査、治療ができた時も私たち臨床工学技士が存在する意義を感じ、やりがいにつながっています。

将来どのような臨床工学技士になりたいですか?

医療機器の操作、管理のスペシャリスト。患者さんの立場に立って声掛けができて、医療機器に対しての不安を取り除くことができる臨床工学技士です。

琉球大学病院における業務

当院の業務体制

臨床工学技士26名(男性21名、女性5名)

・透析室業務(外来透析、病棟出張透析)
・機器管理業務
・内視鏡業務
・高気圧業務
・手術室業務
・ICU業務
・循環器業務…6名体制

循環器業務の1日の流れ

6名体制で下記業務を行います。定時は8:30~17:15、業務により早出があります。

・カテーテル業務(虚血(SG※、CAG※、PCI※)、不整脈(アブレーション))
・ストラクチャー業務(TAVI、Mitra Clip)
・補助循環業務(IABP※、ECMO、Impella※)
・補助人工心臓(VAD※)業務(体外式VAD、植込み型VAD)
・ペースメーカ関連業務(ペースメーカ、ICD※、CTR-D※)
・人工心肺業務(人工心肺メイン操作、心筋保護液注入)

※SG:ステントグラフト
※CAG(coronary angiography):冠動脈造影検査
※PCI(Percutaneous Coronary Intervention):経皮的冠動脈インターベンション、カテーテルで、冠動脈の狭くなった部分を治療する方法
※IABP(Intra Aortic Balloon Pumping):大動脈内バルーンパンピング、バルーンカテーテルを大腿動脈から挿入し、胸部下行大動脈に留置し、動脈圧または心電図に同期させてバルーンをヘリウムガスで収縮・膨張させることにより心臓の圧補助を行う補助循環装置
※Impella(インペラ補助循環用ポンプカテーテル):小型の心内留置型ポンプカテーテル
※VAD(Ventricular Assist Device、補助人工心臓):働きが低下した心臓のポンプ機能を補助する人工臓器
※ICD(Implantable Cardioverter Defibrillator、植込み型除細動器):体内植え込み式で、心室頻拍や心室細動などの致死的不整脈への治療を行い、心臓の働きを回復する補助人工臓器
※CTR-D(Cardiac Resynchronization Therapy Defibrillator): 心室の同期障害を改善する心臓再同期療法(CRT)と、致死的不整脈による突然死を予防するICD(植込み型除細動器)療法の両方の機能をもった治療機器

循環器業務担当で入職した場合

1週間ほどは、病院のオリエンテーションがあります。2週間目からはベテランの先輩と一緒に業務を習得していきます。循環器業務を一緒に回りながら、ポイントを教えていく要領で教育していきます。

当院では新人さん一人に対してベテラン一人に固定する教育(プリセプター制)ではなく、3名のベテランがなるべく均等になるように3分割しています。3分割は1日単位で区切るのではなく、基本は症例ごとに区切っています。プリセプター制は教え方の違いや重複がなく、効率は良さそうですが、3分割することで教育する側の一人の負担を減らし、質の良い教育が可能です。また、3人のベテランが新人さんの個性を共通理解できるので、個々に合わせての教育が可能で、色々なことが効率よく習得できます。また、循環器業務は、時間がある時には、症例の復習やECMOのプライミング練習などの学習の時間としています。

一人である程度対応できる目安は、心臓カテーテル検査は6か月、治療は1年。
人工心肺は、セカンドは6か月、メインの操作は1年半くらい。
ペースメーカやICDチェックは2年。
3年間循環器業務にいてくれると、一通り業務が出来るようになります。
資格を含めて独り立ちするのには、5年くらいかかります。

大学病院なので教育支援や、進学、研究されたりする方は多いですか?

当院では2008年に臨床工学技士の循環器業務が始まったばかりですが、他病院で経験を積んだ臨床工学技士が業務を確立するにあたって、認定士取得や講習会、学会参加は積極的に行っています。
教育支援としては、告示研修の3.8万円は個人負担ではなく、学会発表の出張費、宿泊費の実費は出してくれます。

私は、修士も博士(Ph.D.)も、琉球大学で取得しましたので、働きながら学ぶ環境もあります。Ph.D.取得は、女性の活躍を広げる活動や、体外循環技術などの国際交流の場での発言、学会活動に役立っています。現在、私と同様に修士課程に進んでいる後輩や、近い将来に修士課程に進むことを念頭に置いて働いている後輩もいますので、刺激しあいながら学べる環境だと思います。

見学・採用

見学については随時受け入れています。

臨床工学技士(任期付常勤職員)の募集要項は、非常勤ではなく、一般の会社の試用期間のようなものですので、任期付=3年の試用期間を経て、常勤職員になるという募集で、正規雇用職員、常勤職員です。試用期間も、正規職員と同じ給与テーブルで、見習い給与ということはありません。3年間無断欠勤などをせずに問題なく仕事に従事していたら、そのまま常勤職員として雇われます。循環器業務を幅広く、入職してすぐにやることができますので、特に循環器業務を希望する方を募集しています。

 

取材協力

琉球大学病院
〒903-0125 沖縄県中頭郡西原町上原207 Tel.098-895-3331(代)
募集要項(pdf)
医療職員募集