臨床工学Q&A教室[回答]2023年3月分

Q1.他部署と連携について

Q1.さびくさん[臨床工学技士]
聖隷浜松病院といえば様々な臨床業務拡大に積極的な印象を受けますが、医療機器の購入や機器選定などの用度経理関連業務、医療ガスや設備管理などの施設関連業務、医療機器ネットワークや電子カルテ連携などの情報関連業務などの事務との連携必要とするような業務を専任・兼任で行っている技士の方などはいらっしゃいますでしょうか?または臨床工学室に寄せられている需要やそういった臨床以外の業務展望などがあったら、教えて頂きたいです。

A1.北本 技士(聖隷浜松病院)
医療機器購入時の機種選定は放射線関連や臨床検査など、特殊な医療機器以外は基本的には臨床工学室で機種選定し見積もりや値段交渉も行います。手術室も医療機器は各診療科からの申請ではなく、臨床工学室からの起案で申請し購入します。購入委員会にも参加し用度経理関連とも協働しています。

医療ガスの設備に関しては施設担当が保守点検を行っています。集中治療室や手術室の医療ガス・電源のシーリングなどの管理、配管移行の酸素流量計や吸引器などは臨床工学技士の管理となります。医療ガス検討委員会には臨床工学技士も参加し設備の変更や配管の切替え時など協働し対応しています。

医療機器ネットワークは、手術部門システム、集中治療室などの重症系システム、透析システム、内視鏡部門システムなど個別の部分に関しては情報システム室と協働しています。情報セキュリティに関しては情報システム室にお任せしている状況です。

各部署との関連業務は各担当の役職者と担当リーダーが臨床業務と兼務で対応しています。事務的な業務を専任で担当しているスタッフは居ません。ただ、今後は用度など資材を購入管理する。情報が得意な臨床工学技士が情報システム室などの事務部門で専属として担当することも、専門性を活かすよい機会と考えます。

Q2.業務の固定体制について

Q2.Stさん[臨床工学技士]
これだけ人数がいると業務はほぼ固定体制ですか?

A2.北本 技士(聖隷浜松病院)
2023年4月時点で臨床工学技士93名(産休育休は4名含む)が所属しています。そのうち固定メンバーは透析室に一部固定で10名、ICU・呼吸器・カテーテル・人工心肺・補助循環・不整脈関連で15名が固定されています。それ以外の手術室、病棟業務、内視鏡室、周産期(NICU・GCU・MFICU)、透析はローテーションで対応しています。すべての業務を行うのではなく手術室と病棟業務を基本業務として、個人の資質に合わせ業務を追加していきます。

Q3.指定研修について

Q3.指定研修のすゝめさん[臨床工学技士]
お世話になっております。指定研修関連の質問です。院内の指定研修修了者が増えずタスクシフトが思うように進みません。何か妙案はありますでしょうか。

A3.北本 技士(聖隷浜松病院)
告示研修参加の費用負担が病院から行えると比較的進むと考えますが、自費負担で研修に参加するとなると、なかなかご苦労されているのではと考えます。今後、新卒の学生が告示研修内容も含め国家資格を持った状態で採用されると、資格に甲乙が発生します。給与に反映すると参加者が増えるかも知れませんね。

業務の視点では、当院コンプライアンスを重視する視点から、透析の穿刺をシャントの接続は告示研修なしで、もちろんOKですが、返血はシャントではなく静脈穿刺とも捉えられ、グレーである可能性があるので、告示研修修了者のみが穿刺業務を実施することを腎センター運営会議で決定しました(もちろん施設により考え方は違うと思います)。

告示研修に参加しないスタッフは透析への新たな配置は行わないなど、現時点の業務においても棲み分けを実施していくことで考え方が変わるといいのですが・・。

Q4.転職までの経験年数について

Q4.ペコさん[臨床工学技士]
新卒で入職してから転職するまでの経験年数どれほど必要だとお考えでしょうか(現在の職場にはない業務を学びスキルアップ目的の場合)。

A4.北本 技士(聖隷浜松病院)
新卒で入職してから転職するまでに必要な年数は、おそらくすべての業務を行うと40年でも足りないと思います。各業務を作業レベルで実施するだけでも、当院のように臨床工学技士の業務に幅がある施設では、10年はかかるのではないでしょうか。一つの業務を作業レベルで学ぶだけなら3年程度でも大丈夫か・・。転職をするのであれば、現在の施設より、より良い施設にステップアップすることをお勧めします。

Q5.NICUの常駐化について

Q5.あか座さん[臨床工学技士]
貴院では周産期枠があり、渡邉先生を始めとしてNICU常駐化をされていますが、常駐化をするにあたって困難であったことともたらしたメリットを教えていただきたいです。当院も常駐化を目標にしており、上司や上層部に訴えかける上での材料があると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

A5.北本 技士(聖隷浜松病院)
周産期枠として、2名の人員枠を獲得し日々業務を実施しています。NICUの規模にもよりますが、総合周産期センターとして、大きな施設では人工呼吸器や保育器の台数も多く、1名では日々の点検と定期点検だけでほとんど時間を取られます。

まずは実務を人工呼吸器と保育器の使用中点検、医療機器終了後の日常点検と定期点検を開始してはどうでしょうか。NICUは閉鎖的な施設も全国的には多いと聞いていますが、臨床工学技士の視点を入れることで安全性は確実に高まります。医師や看護師の負担を人工呼吸器の準備や導入、回路交換など臨床の部分でも参加することで医師・看護の対応も変わると思います。特にトラブル対応や勉強会など実施していくことで臨床工学技士の存在意義も高まります。ある程度コミュニケーションが取れたら、医師・看護が実施している患者ラウンドやカンファレンスに参加し、少しずつ意見交換ができるといいですね。

Q6.ChatGPTについて

Q6.しがないCEさん[臨床工学技士]
今話題のChatGPTと臨床工学技士との関わりはどうなっていくとお考えですか?AIが診療の補助をして行く流れが生まれて行く中でCEの立ち位置は変わっていくと思い質問させて頂きました。

A6.北本 技士(聖隷浜松病院)
AIの機能はどんどん活用するべきと考えます。我々人間が不得意としている部分の精度を確実に上げてくれると思います。AIも答えを導くプロセスを確認できることで、最終的に人も判断を信用できるか確認していけば相当活用できると思います。ただし、その判断ができる能力を養う必要があると考えます。

Q7.内視鏡業務(スコープオペレーター)のはじめ方について

Q7.匿名[臨床工学技士]
2025年度から内視鏡業務を始めますが、どのように始めるといいですか?スケジュールやどのようなことを習得したらいいか、術中以外の鍛錬はどのようなことをされているか、詳細に教えてください。

A7.北本 技士(聖隷浜松病院)
スコープオペレーターを開始するにあたり、解剖や術式をある程度自己学習し、事前に使用するカメラ装置の操作方法、基本的な視野展開の方法を学習しておきます。画面を急に動かさない、ぶれない、どっかいかない、視野角度の理解した操作ができる、動きが逆にならないなど基本を身につけること。その上で執刀医から手術映像を確認しながらレクチャーしてもらうことで、どのように視野展開をすれば良いかを確認できます。

医師がどのように見たいかを常に意識し視野展開をする癖を付けると良いと思います。特に視野展開が難しい症例は事前にシミュレーターなどで練習すると良いと考えます。

慣れるまではそれほど時間はかからないので基本的な操作を覚えたら臨床で経験を積むことで自然とうまくなることが多いようです。

 

 

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