現役臨床工学技士が教える医療機器のメンテナンスの範囲や透析機器に関するメンテナンス

都下の透析専門クリニックに勤務している現役の臨床工学技士の立場から透析機器におけるメンテナンス業務について記事にさせていただきます。

臨床工学技士が医療機器のメンテナンスを行える範囲とは?

当施設の臨床工学技士は、8名在籍しており、それぞれの得意分野を活かしながら、分担してメンテナンス等を行っています。当施設は駅近辺のビル3階、4階に入居しており、4階に透析機械室と透析室が集約されています。メーカーは東レにほぼ統一されており、個人用装置1台だけ日機装となっています。多人数用監視装置46台(TR-3300M:44台、TR-7700M:2台)、個人用監視装置2台(TR-3300S:1台、DBG-03:1台)の48床、うち3床を隔離できる構造となっています。当施設はメーカーと定期保守契約を行っていないため、自分たちでできる消耗品は定期的に、トラブルが起きた際には程度によって自分たちで行うか、メーカー対応とするかを判断しています。RO装置についてですが、各種フィルター、紫外線殺菌灯を自分たちで定期交換しています。自動的に取得される水質データ、消毒残量の確認が日常点検であり、エンドトキシンと細菌測定は3ヶ月に1度行って水質を確保しています。オーバーホールは年数を決めては行っておらず、全体の経過を観察しながら数年単位で行っています。透析液溶解装置についてですが、A剤用とB剤用ともに、ETRFフィルター、紫外線殺菌灯を自分たちで定期交換しています。自動取得される濃度と温度の確認、消毒残量の確認が日常点検です。オーバーホールは年数を決めては行っておらず、全体の経過を観察しながら数年単位で行っています。透析液供給装置についてですが、自動取得される濃度と温度、消毒残量の確認が日常点検です。過去に配管接続部より少量の漏れがあった経験から、早期発見のため週に1度は装置内部を念入りに目視で確認しています。

透析で重要になる監視装置のメンテナンスとは?

多人数用監視装置

多人数用監視装置についてですが、まずは液置換後の自己診断の確認から始まります。その後配管末端で透析液の濃度と、浸透圧を確認した後、プライミングを行います。プライミングはカプラーを繋げた後は全自動なので、カプラーとダイアライザーとの接続部から漏れがないか、排液ラインの詰まりによる漏れがないかを確認します。動脈圧と静脈圧の監視ラインにはフィルターを設置しているので、血液回路のチャンバーのレベルを確認してフィルターの接続や緩み、劣化がないか確認します。穿刺を行って治療を開始してからも装置の異音、チャンバーレベルによる圧フィルターの異常、装置からの漏れがないかを適宜確認します。治療後には装置の清掃をして漏れ等を確認します。エアーフィルターは月に1度清掃しています。当施設でよくメンテナンスが必要になる部品は、やはり除水ポンプ関連です。除水ポンプ直下に設置されている受け皿に漏れや結晶が発見されたとき、除水ポンプ回転異常の警報が出たときなどは、除水ポンプを分解し点検を行います。多くの場合は、酢酸による洗浄、Oリング等の消耗品の交換を行うと解決し、その後除水ポンプテストを行い合格することを確認します。カプラーからの漏れは過去に多くありました。その際には自己診断の動特性や静特性のテストをクリアできないことが多いため自己診断で早期発見できることがほとんどでした。現在は、ほとんどが青カプラーと赤カプラーが直接接続できるタイプとなり事例は減りましたが、以前の中間にコネクタがあるタイプで漏れが発生した際には、まず赤か青の方かと漏れの原因を調べ、原因の色のカプラーの交換を行います。その後自己診断を行い合格することを確認します。排液ラインが詰まり、プライミング時などに溢れるにより漏れが起きることがあります。酸性錠剤を用いプライミング毎に洗浄は行っていますが、オンラインHDFで大量置換をしている患者が使用している装置にはやはりタンパク質が付着しやすく詰まりやすいので、配管に目視で確認できる汚れが付着したりプライミング時に溢れる際には清掃を行います。回路を纏める紙テープも原因の一つで逆止弁を詰まらせるので、次亜塩素酸ナトリウム等を用いて洗浄します。透析液清浄化のためには定期的なETRFの交換は欠かせません。透析液供給装置を含め多人数用装置、個人用装置で少なくとも年1回行います。透析液供給装置においては供給圧の低下警報が起きたら、全ての装置においてエンドトキシンや細菌が検出された際には予定を繰り上げ交換することもあります。シリンジポンプのドライバーが異常を起こすこともあります。過負荷警報などは基盤に起因することが多いので、その際はメーカー修理となります。Vチャンバーの液面を調節する機能が不具合を起こすこともあります。最初はメーカー修理でしたが、メーカーが来た際に方法を学び、今では自分たちで調整が可能です。出入口モジュールに起因する漏れも発生します。こちらも修理方法を会得したため、消耗品さえあれば自分たちで調整が可能です。

個人用監視装置

個人用監視装置についてですが、東レの装置に関しては多人数用監視装置と同様のメンテナンスを行っています。日機装の装置に関しては透析液の設定はされていて、いつでも使用可能な状態は保たれており、毎日の水洗と週1度の次亜洗浄と酢酸洗浄も行われていてETRFの交換も年1回は行われ水質管理もされています。しかし全体の透析記録の管理を東レのシステムで行っている都合上、日機装の装置は対応されないため、実際の治療にはもう何年も使用されなくなり、洗浄の際に漏れがないかを目視で確認する程度になっています。