臨床工学技士の資格をとるには?医療におけるエンジニアとも呼ばれる臨床工学技士。養成所や国家試験の合格率も

臨床工学技士は、主に医療機器を担当する専門医療職種です。医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行う事を業とすると定められています。臨床工学技士の資格は、指定の養成所で3年以上必要な知識と技能を修得し、国家試験に合格すると取得できます。臨床工学技士の養成所には大学や専門学校があり、それぞれの特徴をみて選択するといいでしょう。

医療で活躍する専門職種:臨床工学技士のほかには?

医療の現場では、医師だけでなく、医師の診療補助に従事する看護師や医療技術者が働いています。医療技術者のことをメディカルスタッフと呼び、代表的な専門職種をあげます。

・臨床検査技師:検体採取・採血・生理学的検査等
・診療放射線技師:X線・CT・MRI検査・放射線治療等
・臨床工学技士:生命維持管理装置の操作等
・理学療法士:身体の基本的動作能力の回復運動・電気刺激等
・作業療法士:身体又は精神障害に対する応用的動作能力・社会的適応能力の回復作業等
・言語聴覚士:音声・言語機能又は聴覚障害に対する機能の維持向上訓練等
・救急救命士:救急救命処置

メディカルスタッフは、各専門職種毎に業務が定められており、専門性を活かして他のスタッフと連携しながら医療にあたります。どの職種を選ぶにしても、メディカルスタッフとして働くなかでコミュニケーション力を磨いたり、人の役に立ちたいという姿勢は必要です。

臨床工学技士とは?

臨床工学技士は、医療におけるエンジニアとも呼ばれます。医学と工学の両面の知識をもち、高度化する生命維持装置の操作や保守点検を行い、安全性の確保と性能の維持を担当するためです。臨床工学技士が取り扱う生命維持装置には次のようなものがあります。

・人工透析装置:腎臓の機能障害に対し、人工的に血液のろ過を行う装置
・人工呼吸器:呼吸の機能障害に対し、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が正常になるよう呼吸の補助や代行をする装置
・人工心肺装置:心臓の手術中、血液を体外に循環させて心臓と肺の役割を担う装置
・ペースメーカ:心臓の機能障害に対し、心臓の収縮のタイミングをコントロールする機器

このように、いのちに直結する装置を操作したり点検をしたりする責任があります。そのため、日々新しい知識を学ぶ姿勢が大切です。

臨床工学技士になるには?

臨床工学技士になるには、まず臨床工学技士の養成所で3年以上必要な知識と技能を修得し、国家試験に合格すると臨床工学技士の資格取得が可能です臨床工学技士の養成所で修得する専門科目のうち、主な業務である生命維持管理装置に関連する項目では、医学・工学ともに深く学びます。そのため、医学だけでなく機械に関連する分野にも興味がある人が向いています。

臨床工学技士養成所で修得する科目例

基礎分野:医学・工学の基礎分野を学びます。

・人体の構造および機能
・臨床工学に必要な医学的基礎
・臨床工学に必要な理工学的基礎
・臨床工学に必要な医療情報技術とシステム工学の基礎

つぎの専門分野を理解するには、基礎をしっかり身につけておくことが大切です。

専門分野・臨床実習
業務で携わる治療に必要な医学知識や医療機器に関する技術を学びます。臨床実習では「自分の働く姿」を想像して、将来について考えていくいい機会です。

・医用生体工学
・医用機器学
・生体機能代行技術学
・医用安全管理学
・血液浄化装置実習
・医療機器管理業務実習
・集中治療室実習における人工呼吸器実習
・手術室実習における人工心肺装置実習

このように生命維持管理装置に関連する項目だけでなく、医療で使用されている医療機器全般の知識や技能を修得します。

臨床工学技士の養成所:大学がいい?専門学校がいい?

臨床工学技士の養成所には、主に大学と専門学校があります。

大学では、臨床工学について4年間かけて学び、一般教養や卒業研究など余裕をもって幅広い知識を修得できることが特徴です。卒業後は臨床工学技士として病院や医療機器メーカーに就職する他、大学院へ進学して研究を続ける道があります。

専門学校では、臨床工学について3年間かけて学びます。研究よりも即戦力として活躍できるようにプログラムされており、実習、国家試験の合格や就職に力を入れていることが特徴です。近年は大学の養成所が増加しており、大学が40校程度、専門学校が20数校です。理工系や医療系学校の卒業者の場合、2年制の養成所で学び臨床工学技士を目指すことができます国家試験の合格率は84.2%(令和2年度)で、国家試験対策は学校によって差があるため、各学校の合格率なども参考にして選ぶといいでしょう。

臨床工学技士の就職先:総合病院、透析専門クリニック、医療機器メーカー

臨床工学技士の主な就職先は、国公立や私立総合病院、透析専門クリニックや医療機器メーカー等です。各養成所には全国から求人があり、求人数は卒業生の2倍以上といわれていますので、臨床工学技士は必要とされているといえます。病院の求人は欠員の補充や増員の場合であるため、毎年求人があるとは限りません。希望する病院がある場合は、病院見学・実習に行ったり、就職状況を問い合わせたりと積極的に行動することも大切です。

臨床工学技士の国家資格まとめ

臨床工学技士とは、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行う専門医療職種です。臨床工学技士の資格は、指定の養成所で3年以上必要な知識と技能を修得し、国家試験に合格すると取得できます。臨床工学技士の養成所には、4年制大学や3年制の専門学校等があり、医学と工学について学びます。

国家試験の合格率は84.2%(令和2年度)。卒業後の進路は、就職では総合病院、透析専門クリニックや医療機器メーカー等があり、大学院へ進学する人もいます。臨床工学技士を目指すなら、コミュニケーション力を磨き、人の役に立とうとする気持ちや新しい知識を学ぶ姿勢をもっていてくださいね。