臨床工学技士は比較的新しい資格!臨床工学技士の歴史と医療機器の関係とは?MEに始まりCEと呼ばれるまで

臨床工学技士は、人工心肺装置や呼吸器など、さまざまな医療機器の操作や保守管理などの業務を行う、機器のスペシャリストとして医療現場で活躍しており、少しずつ世間からも認知されてきたように思います。現在では、当たり前に医療現場で活躍している臨床工学技士ですが、いつから医療現場で働いているのでしょうか?そして、医療の現場で機器が普及し始めたのはいつごろからでしょうか?

医療機器普及の歴史

そもそも医療現場で機器を使用するためには技術者(Engineering)が開発した機器を医療現場の医療者(Medical)が、使用し効果を確かめる必要があります。ここからMedicalEngineering(ME)という言葉が生まれ、ME機器などと言われるようになりました。そして、このMEこそが臨床工学技士の始まりと言えます。1962年に日本ME学会が設立され、1980年に日本ME学会の中にCE委員会(クリニカルエンジニアリング基本問題研究委員会)が発足し、これが臨床工学技士が国家資格になる第一歩となりました。医療機器の始まりですが、初めて医療の現場で機器が使用されたのは1900年頃と言われています。日本では1950年台から麻酔器や保育器といった医療機器が普及してきており、1960年台には電子系のME(Medical Electronics)専門学校が登場し、卒業後、病院に就職する人たちが登場し、これが臨床工学技士の前身となります。そして、本格的に医療現場で機器が使用され始めたのは1970年台に入ってからで、人工心肺装置や麻酔器、人工透析装置などが登場してきました。
しかし、当時の医療現場では医療機器の操作や管理をする職種は定められておらず、放射線技師や臨床検査技師のような国家資格者が医療機器の業務を行っていましたが、実際には「無資格」のスタッフが医療機器に関する業務を行っている現場が大半を占めていたようです。そして、この医療機器管理業務を行っている人たちのことを現場ではME技師やMEテクニシャンと呼び、ME技術者として医療現場で活躍するようになると、病院ME技術者は主に人工透析や人工心肺業務に従事し、装置の操作や管理を行っていました。同時期にアメリカではCE(Clinical Engineering)という医療機器に関する職種が医療現場で活躍しており、日本では、このころからMEの略がMedical ElectronicsからMedicalEngineerへと変わっていったようです。そんな中、医療機器の発達は目覚ましく、専門知識のある技術者が保守管理を行うようになった経緯もあり、医療機器を扱う職種の国家資格の必要性が高まってきました。

そして、医師会、看護協会、検査技師会、放射線技師会の協力もあり1987年にようやく臨床工学技士法が成立し、翌年の1988年に第一回目の国家試験が実施され、その後、各地に臨床工学技士を養成するための専門学校や大学が設立され始めました。このような背景もあって、臨床工学技士(CE:ClicalEngineer)のことを、現在もMEと呼んでいる病院が多く存在しています。そしてME技術者から国家資格の臨床工学技士となり、最近では医師の働き方改革を進めるにあたってタスクシフト・シェア(医師の労働時間短縮のために業務を移管・共同化するもの)という動きが進み、様々な医療行為が行えるようになってきています。人工透析業務での動脈表在下への動脈穿刺や手術室や集中治療室での薬剤投与のための静脈穿刺、手術室での内視鏡カメラの操作など、機器管理の専門から誕生した臨床工学技士は患者に直接かかわる医療行為も行えるように、業務内容が変化してきています。このタスクシフト・シェアによって、ますます臨床工学技士の活躍の場が広がり、医療現場からのニーズが増えることが期待できます。

今後期待される臨床工学技士の役割とは

2022年現在、臨床工学技士が誕生して35年目を迎えます。今では、4万5千人を超える臨床工学技士が誕生しており、多くの医療現場で活躍の場を広げ、医療現場では「臨床工学技士」が少しづつ認識されてきています。最近では、医療系漫画やドラマで「臨床工学技士」のキャラクターが出ていたり、新型コロナウイルス感染の治療法に臨床工学技士が扱うECMOがニュースで取り上げられるなど「臨床工学技士」という言葉を目にする機会も増えてきました。しかし、他資格と比較しても歴史が浅く、国公立大学に養成校が少ないなど、未だに世間での認知度は高いとは言えません。医療現場で機器が使用されるようになってから50年余り経過していますが、今では医療機器は医療現場にとってなくてはならない存在となっています。現在、医療機器にはAIのような更に高度な技術が使用され始めており、これから臨床工学技士の必要性も更に高くなり、これに伴い仕事の役割も変化していかなくてはならない感じています。今から35年前に臨床工学技士が誕生した時から仕事内容は大きく変化しており、「臨床工学技士」という職種が定着するためにも常に、医療機器の技術とともに臨床工学技士も変化していき、医療現場のニーズに応え、医療に貢献できればと思っています。