【臨床工学技士インタビュー】日本一の病床数を誇る藤田医科大学病院。学会発表に積極的に参加できる環境は、大学病院の強みである臨床・教育・研究の3つの柱がしっかりと機能し連携が取れているから。豊富な臨床経験は、さらなる高みを目指す臨床工学技士たちにとって望ましい職場だ

日本一の病床数を誇る藤田医科大学病院

1,376床という一つの医療施設としては日本最多の病床数を誇る藤田医科大学病院は、大学病院でありながら地域の基幹病院としても機能している。また、近年増加している外国人労働者などにも安心・安全な医療を提供できるよう院内の案内を多言語で表記。さらに、ブラジルからの移住が多い地域性も踏まえ、ポルトガル語、スペイン語の専属通訳も配置している。

医療従事者は、3,300人、年間の手術件数は、14,000件以上。臨床工学部には、44人(女性22人)が在籍。系列病院も含めると64人にものぼる大所帯になる。入職後は、ME管理室と血液浄化センターの2部署のうちどちらかに配属される。ME管理室では、医療機器管理業務や各種診療支援業務、集中治療室業務を担当し、血液浄化センターでは慢性維持透析が主な業務となる。今回は、櫻井尚(さくらい・ひさし)副部長と清水弘太(しみず・こうた)技士に話を聞いた。

臨床工学部の歴史

半世紀の歴史がある藤田医科大学病院だが、臨床工学の歴史は浅く、2000年に組織化された。7人ほどしかいなかった立ち上げ当初のメンバーの1人が、櫻井副部長だ。

私は、1988年に臨床検査技師として救命救急センター検査部に入職しました。当時は、検査技師業務として、人工呼吸器のメンテナンスや透析業務を行っていた関係で、臨床工学技士の国家試験がはじまるタイミングで免許を取ろうという動きになりました。2000年ごろ、救命救急センター検査部から独立して、ME管理室を立ち上げました。来る日も来る日も病棟中の輸液ポンプやシリンジポンプなどを集めてきては清掃するという繰り返しで当時は結構大変でしたよ。(笑)

 

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大変な時期を経たからこそ今があるのですね?

 

櫻井副部長櫻井副部長

長い年月がかかりました。少しずつ業務を開拓しながら臨床工学技士の人数を増やしてきました。藤田医科大学病院は、病床数が多いため医療機器の使用頻度も高くなり、その分不具合の報告も多くあがってきます。これらの情報から医療機器や医療器材の弱点が見つかる事もあり、いち早くメーカーへの改善を要求する事で、医療機器の安全面にも貢献していると自負しています。

 

人材育成

 

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研修制度はどのようになっていますか?

 

櫻井副部長櫻井副部長

新人はカリキュラムに沿って研修を行います。ME管理室に配属となった場合は、24時間血液浄化対応を行なっている関係もありますので、まずは、夜勤業務に入れるように約1年かけて研修を行います。夜勤業務に就くには最低限、補助循環業務(ECMOなど)や急性血液浄化業務、人工呼吸器管理業務、医療機器トラブル対応業務が行えることが要求されます。

その後、本人の希望も聞きながら人工心肺業務、アブレーション業務、モニタリング業務といった専門性の高い業務を担当してもらいます。各業務6~8名のチームで担当します。

 

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産休・育休復帰後なども働ける環境ですか?

 

櫻井副部長櫻井副部長

お子さんが小さいうちは夜勤が難しいと思うので、夜勤のない血液浄化センターに配属して仕事が続けやすい環境を作るように心がけています。現在、3人が時短勤務をしています。もちろん、小さなお子さんがいても本人の希望があれば夜勤のある部署で働くことも可能です。そのために毎年、アンケート調査、面談を実施してスタッフの意見や要望を聞き取っています。

 

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どのような要望がありますか?

 

櫻井副部長櫻井副部長

担当業務の変更や、関連病院への異動希望だけでなく、大学を併設しているものですから、『教員になりたい』や、『大学院に通いたい』などの声もあります。学費は個人の負担になりますが、働きながら大学院に通うことも可能です。

 

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大学病院特有の環境はありますか?

 

櫻井副部長櫻井副部長

藤田医科大学病院では、学部との連携を図っています。私たち臨床工学技士が大学の講義を手伝うこともありますし、逆に学部の教員たちが病院の業務を手伝いに来てもくれます。週に3日、午前中だけなどと限定的ではありますが、血液浄化の後片付けや医療機器の清掃・チェックなどもしてもらいます。お互いに行き来することによって、スタッフとのコミュニケーションも取れますし、私たちとしては学会発表をするときのアイデアを色々ともらうこともできるので非常に助かっています。

 

附属の大学からの入職

学会活動にも積極的に参加しスキルアップを図っているのが、入職10年目の清水技士だ。清水技士は、藤田医科大学の医療科学部・臨床工学科を卒業後入職し、臨床工学部のME管理室に配属された。

 

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1日のスケジュールは?

 

清水技士清水技士

定時8:00~16:15

7:45 出勤
8:00 業務開始、手術室業務 準備、オペ対応
14:00 オペ終了→休憩(昼食)45分
15:00 機器点検集中治療室(ICU)業務のヘルプなど
16:15 終業

[夜勤]16:00~翌朝8:30 1人に加えて、人工心肺対応2人、モニタリング対応1人、夜勤者のバックアップ1人のオンコール体制。基本的に夜間は5人で対応する。

 

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月の残業はどのくらいありますか?

 

清水技士清水技士

日勤帯で残った業務は夜勤者へ引き継ぐので通常業務での残業はほとんどありません。例えば、18時や19時に透析の回収があっても夜勤者が担当しますので、月の残業時間は、10~20時間程度で、そのほとんどが診療支援業務による残業になります。定時で業務が終了すると17時には家に着くので、家事や子育てにもきちんと参加できますし、勉強の時間を取ることもできます。

 

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臨床工学技士を目指したきっかけは?

 

清水技士清水技士

父親は会社員で親族に医療関係者がいたわけではないのですが、私が高校生の頃は就職難という不況な時期であったこともあり、手に職を付けたいと思っていました。

漠然と医療系がいいなと思っていたときに、“医龍”というドラマがあって、初めて人工心肺というものを知りました。医者でも看護師でもないのにオペ室で働ける臨床工学技士という職種がかっこいいなと思い興味を持ちました。

 

知識を深められる環境

 

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藤田医科大学病院を選んで良かった点は?

 

清水技士清水技士

大きい病院なので、豊富な臨床経験が得られるというのが一番大きいところですね。人工心肺症例数は年間200例を超え、急性血液浄化も年間3,000例を超える症例数をこなしています。他の病院では受け入れることが困難な症例を、当院では積極的に受け入れておりますので、臨床経験を重ねるという意味合いでは藤田医科大学病院の魅力は非常に大きいと思います。また、大学病院の3つの柱(臨床・教育・研究)のひとつである“研究”の環境は特に整っているという点が藤田医科大学病院の強みかなと思います。

 

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清水技士はどのような研究をしているのですか?

 

清水技士清水技士

現在、集中治療室(ICU)を担当している麻酔・侵襲制御医学講座に研究員として入局しており、集中治療医と一緒に臨床研究を行いながら発表しています。

集中治療領域では、敗血症を合併することが多いです。当院のICUでは、敗血症治療の一助として急性血液浄化を積極的に行っています。私の専門は急性血液浄化のため、敗血症と急性血液浄化を絡めた研究をメインとして研究活動を行っています。

 

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学会活動をする環境は整っていますか?

 

清水技士清水技士

医師は研究について非常に精通しています。私たちの研究は臨床を絡めて発表することが多いので、発表に関して様々な切り口を提案してもらえます。医師とディスカッションしながら研究活動を行うことができるので、そういう面でも研究を行う環境が整っていると思います。もちろん、医師たちは嫌な顔をせず、快く学会活動の指導をしてくれます。

 

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これからの目標は?

 

清水技士清水技士

藤田医科大学病院では、医局に研究員としての登録が9年以上経つと、医学博士を取得することが可能になります。私はあと2年でその資格が得られるので、2年後には学位論文を書いて医学博士を取得したいというのがひとつの目標です。また、後輩たちに学会活動をしやすい環境を作ってあげたいなとも思っています。これまでは自分の学会活動で精一杯だったのですが、歳を重ねてある程度、学会活動に慣れてきたので今度は教える側として後輩に学会活動を普及していきたいという思いもあります。

 

求める人材

 

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求める人材は?

 

清水技士清水技士

臨床工学技士の仕事は多職種と協力しながら行うことが多いため、コミュニケーション能力が高い人材が望ましいと思います。また国家試験をクリアして臨床工学技士になれば、働きながら臨床で必要な知識は得られますので、希望する病院にぜひ挑戦してもらいたいです。あとは、2つの仕事が同時にできるような視野を広く持てる人が望ましいですね。

 

櫻井副部長櫻井副部長

大学病院の3本の柱である臨床・教育・研究を意識できる人。それと、時代とともに医療安全がより求められるようになっています。インシデントは、ついうっかり確認を忘れたなどということがほとんどです。生命に直結する仕事が多いなか、患者さんを自分の家族と思えるような人であればミスが起こりにくいので、そういった人材が欲しいですね。

※医療の過程において、エラーが発生したか、あるいは発生しかけたが患者に障害を及ぼすことなく医療事故には至らなかったもの。

 

取材協力

藤田医科大学病院 臨床工学部
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