臨床工学技士という職種には、資格が必要です。知っておくべき臨床工学技士法の資格と業務について徹底解説します

まず、臨床工学技士は主に生命維持管理装置の操作と保守点検を行う医療職種で、高度化・複雑化してきた医療システムの中で、特に医療機器の担い手として患者の安全を寄与するために誕生した資格です。この資格と業務について、昭和62年6月2日に公布され、昭和63年4月1日に施行された臨床工学技士法によって定められています。臨床工学技士法は総則、免許、試験、業務等、罰則の全5章、49条からなる法律で、職務を行うにあたりこれを守らなければなりません。

臨床工学技士法とは?

第1条には、この法の目的として「この法律は、臨床工学技士の資格を定めるとともに、その業務が適切に運用されるように規律し、もって医療普及および向上に寄与することを目的とする。」とあります。この第1条は臨床工学技士法のみならず、他医療関係職種の法律第1条でも同様の内容が定められています。

第2条にはこの法の定義として「この法律では臨床工学技士とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の装置及び保守点検を行うことを業とする者をいう。」と定められています。ここに記載されている生命維持管理装置とは臨床工学技士の主義務を一言で表した新語・造語で、この装置の具体的な説明は主に2つあります。1つ目は「人の呼吸、循環、又は代謝の機能の一部を代替することが目的とされている装置」と定義されており、物理・化学的現象・電気生理的な現象を原理とする人工臓器として代行された機能を監視することによって生体機能を正常に近い状態に保つために用いる装置です。これは人工心肺装置や血液浄化装置のような装置が該当します。2つ目は「人の呼吸、循環、又は代謝の機能を補助することが目的とされている装置」と定義されており、電気エネルギーや圧力による機械力などの原動力とその監視部分によって生体機能を正常に近い状態に保つために用いられる装置です。これは、ペースメーカやIABP(大動脈内バルーンパンピング) のような装置が該当します。また、これら2つの「一部を代替」、「補助すること」の境界として人工呼吸器や除細動器のような装置が該当します。

第3条には免許について定められており、登録事項の変更が生じた場合や死亡時は30日以内に、免許取消処分や紛失免許証を発見したときは5日以内に返納しなければならないと定義されています。

第4条には欠格事項について定められており、罰金以上の刑に処された者、臨床工学技士の業務に関し犯罪、不正の行為があった者、心身の障害により臨床工学技士の業務を適切に行うことができない者として厚生労働省で定めるもの、麻薬や大麻などの薬物中毒者に該当する場合は免許を与えない場合があるとしています。

第10~11条には国家試験について定められており、臨床工学技士国家試験は毎年1回以上、厚生労働大臣が行うことになっており、実施事項は毎年厚生労働大臣から財団法人医療機器センターが指定されています。

第37条には臨床工学技士の業務について定められており、生命維持管理装置の操作は臨床工学技士のほか、医師や看護師も行えますが、実務および教育カリキュラムの観点から、生命維持管理装置の操作は臨床工学技士が最も適切かつ信頼されるべき職種となります。なお、保守点検についての記載はないため、誰が行ってもよいことになります。

第38条には特定行為の操作について定められており、この特定行為とは、具体的に医師の指示を受けて行うことのできる業務で、身体への血液、気体、薬剤の投与や抜き取り、身体への電気刺激の負荷があります。具体的には採血や除細動器での電気ショックなどが当てはまります。

第39条にはチーム医療について定められているが、これは各種医療業務法を通じて初めて定義された内容です。今では当たり前になりつつあるチーム医療の実践理念を条文として盛り込んだことから、法が制定された時から将来的に今ある形を実現したかったと考えられます。

第40条には守秘義務について定義されており、ヒポクラテス宣誓に発する職業倫理に定礎されています。したがって、身分を失った後も秘密を保持する必要があり、違反した場合は刑事責任を負うこととなります。その場合罰金刑のほか免許取り消し、停止処分となる可能性もあります。

以上が臨床工学技士法の一部を抜粋した内容となっていますが、この法律の内容をすべて把握し、業務に支障をきたさないようにする必要があります。この臨床工学技士法から、臨床工学技士は医療職の中で唯一、医療で応用される工学的な知識・技術に長けた者として、医療機器の操作を業とすることを規定しており、間接的ではあるが患者への機器の接続、除去操作をも業とすべきと記されていることから、臨床と名のつく資格となっています。この名称の資格を持つ意味も意識して業務に取り組んでいく必要があります。最後に、臨床工学技士にはこの法のほかにも医薬品医療機器等法、高圧ガス保安法などの遵守すべき法律があるため、業務を遂行するために内容を把握する必要があります。