臨床検査技師と臨床工学技士の仕事内容の違いと仕事をする場所、範囲、患者との関わり方を比較

最初に結論を申し上げますと、臨床検査技師と臨床工学技士は名前は似ていますが、その仕事内容は全く違います。仕事のやり方も、仕事をする場所も、患者さんとの関わり方も何もかも違います。何がどう違うのか、具体的に説明していきます。

臨床検査技師とは

臨床検査技師は、医師の指示のもとで必要な検査を行い、その結果を報告するのが仕事です。医師はその報告された検査結果をもとに治療方針を決定します。そのため、臨床検査技師は正しい検査結果を迅速に医師に報告することが使命です。

臨床検査技師が活躍する場所

臨床検査技師が勤務するのは主に病院やクリニックの検査室です。検査室には、患者さんから血液や尿などの検体の検査を行う検体検査室と、心電図や超音波検査装置などを用いて患者さんの身体機能の検査をする生理機能検査室があります。検体検査室の中では、検査を行う精密機械が何台も稼働しており、病院の規模にもよりますが、1日に何千件、多い時には何万件もの検体を検査します。検体検査においての臨床検査技師は、検査機器がきちんと稼働して正しい検査を行えているか、機器が出した検査結果が正しいものであるか、全ての検体を常にチェックし、結果を医師に報告しています。生理機能検査室は、検体検査室とは別に設置される場合が多いです。生理機能検査は心電図や超音波検査など、機械を使って患者さんの体に直接触れながら行う検査がほとんどです。そのため、患者さんの緊張をほぐし、スムーズに検査が行われるように声かけをしたり、コミュニケーションを取ることがとても重要です。

新型コロナウイルス感染症に関わる業務

新型コロナウイルスの感染が広がる中で、PCR検査というワードをよく聞くようになったと思いますが、これを行っているのも臨床検査技師です。PCR検査は検体検査の中の細菌・ウイルス検査という部門に含まれます。PCR検査は数多くある検体検査の中でも特に臨床検査技師のピペット操作(ピペットという道具を使ってごく微量の溶液を寸分の狂いもなく計り取ること)の精密さと正確さが求められる検査です。現在急速にPCR検査の全工程の機械化が進んでいますが、まだまだ人の手に頼っているところも多くあります。またPCR検査は手順が複雑で、新人の臨床検査技師が一朝一夕で習得できるような検査ではありません。かなりの熟練度が必要です。そういった失敗が許されない検査を、自分も感染する危険性がある中で臨床検査技師は行っています。

臨床工学技士とは

臨床工学技士とは、医師の指示のもと血液浄化装置や人工呼吸器などの生命維持管理装置の操作を行ったり、それらが安全に正しく使用できるように保守点検を行ったりする医療技術者です。臨床工学技士が扱う生命維持管理装置を使用している患者さんは、そういった装置がないと生きていくことができない方たちばかりです。よって、臨床工学技士のミスひとつが患者さんの命に直結する責任ある仕事です。

臨床工学技士が活躍する場所

臨床工学技士が勤務する場所は配属先によっても多岐にわたりますが、代表的なものは透析室での勤務です。透析とは、腎臓の機能が著しく低下して老廃物や水分の排泄ができなくなった患者さんに対して行われる治療のことです。臨床工学技士はこのような患者さんに装着される血液浄化装置の管理を担いますが、透析治療をしている患者さんはそれが正しく行われないと命を落としてしまうため、責任重大です。

新型コロナウイルス感染症に関わる業務

新型コロナウイルスの感染拡大によって、重症患者を救う最後の砦として名前を聞くようになった人工心肺装置(ECMO)ですが、これの管理を行うのも臨床工学技士です。特にECMOはその高度な性能ゆえに小さなトラブルが命取りになることがあります。例えば、患者さんに挿入されている管の中に小さな気泡が1つでもできてしまうと、その気泡が患者さんの肺や脳の毛細血管につまり、命を落としてしまいます。そういった気泡や装置に異常がないか臨床工学技士は常に目を光らせます。臨床工学技士が扱う生命維持装置というのは患者さんの命を繋ぎ止める最後の生命線のようなものなので、その管理を一手に担う臨床工学技士は、医者や看護師と同じようにチーム医療において欠かせない存在です。

臨床検査技師と臨床工学技士の共通点

臨床検査技師は検査を通して患者さんを助けるプロフェッショナル、臨床工学技士は生命維持装置を通して患者さんを助けるプロフェッショナルです。何もかも違うこの両者ですが、ただひとつ共通しているところがあります。それは、その仕事の先に患者さんの命があるということです。臨床検査技師も臨床工学技士も、ひとつのミスが患者さんの命を脅かすかもしれない、責任ある仕事です。そのミスは一見とても小さなミスかもしれませんが、それが巡り巡ってとんでもない事態に発展することがあります。その不利益を被るのは多くの場合患者さんです。臨床検査技師も臨床工学技士も、このことを頭に入れて、日々の仕事に向き合う必要があります。また、この両者は医者や看護師に比べて知名度も低いため、患者さんに感謝をされることも少ないです。しかし、辛い治療を乗り越えて患者さんが退院された話などを聞くと、自分の仕事が患者さんの笑顔に少しでもつながったのかもしれないと、達成感を感じることもあります。この記事を読んでこの両者の仕事に興味を持った方がいれば、ぜひ目指していただきたいですし、もし病院で見かけたら「頑張って!」と静かなエールを送ってあげてほしいです。

【参考記事】
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