臨床工学技士は病院内スタッフに医療機器のスペシャリストとして認識されており、医療機器を使用する際は必ず医師や看護師と連携して治療を行います。医師や看護師との連携が不十分だと医療事故を引き起こす可能性もあるため、円滑に連携を行える環境作りが必要です。救急病院で7年以上働いている私が考える医師と看護師、専門医との連携の仕方についてお話していきます。「専門医」という言葉については、全てを対象にしておらず、臨床工学技士とかかわりの深い透析・内視鏡・循環器・消化器・心臓血管外科・脳外科に限定してお話していますのでご了承ください。
連携するために信頼を得る
臨床工学技士が、他職種のスタッフと上手く連携を取るためには、他職種から信頼を得ている必要があります。理由として患者の生死に直面している現場で、信頼できないスタッフの存在は、最高の医療を提供する妨げになるからです。臨床工学技士がチームの輪に入るためには信頼を得ていることが大前提なのです。特に関係性の深い職種を挙げます。「医師、看護師、専門医」です。医師、看護師とはどの業務においても必ず、関わり合いがあります。医師の中でも専門医と呼ばれる特定の分野に精通した医師がおり、緊急性の高い現場で関わってきます。上記で挙げた職種の方々と連携を取るためには信頼を得ることが重要で、信頼を得る方法についてこれから説明していきます。
医師から信頼を得る方法
医師から信頼を得るための重要なポイントは2つあります。「事前準備を行う」「各業務における担当を作る」この2点を説明します。
事前準備を行う
治療に特別な機械を用いるときは患者の状態が悪く急を要する場合が多いです。そのため、臨床工学技士は即時対応できる準備をしておくことが大事です。自分の病院でいつ何が起こる可能性があるのか考え、必要物品の洗い出し、必要な連絡先をまとめておくといざというとき困りません。医師から治療の依頼が入った際、即座に対応出来ることで円滑な治療が行えます。
各業務における担当を作る
治療中の機器トラブルの際、声がかかるのは臨床工学技士です。トラブルが起こっている間は治療が止まってしまうため、迅速な対応が必要です。臨床工学技士が対応する業務は幅が広く、病院によっては5つ以上の分野に及び、全てを把握することは不可能です。各分野のエキスパートを育成し、担当させることで、トラブル時の迅速対応を実現できます。医師からの業務依頼やトラブル対応に即座に応えることで医師からの信頼を得られ、連携をスムーズに行えます。
看護師の信頼を得る方法
看護師は臨床工学技士が管理している医療機器を使用するユーザーです。看護師が利用する医療機器はモニタ、輸液ポンプ、シリンジポンプ、血圧計、呼吸器、電気メス、保育器です。看護師は上記以外にも多くの医療機器を取り扱います。看護師は医療機器の知識はほぼなく、看護師が把握しているのは一般的な使い方のみです。看護師から呼ばれたときは、高い確率で機器トラブルが起きており、業務が止まっている状況です。輸液ポンプやシリンジポンプ等の機器であれば入れ替えて解決できますが、入れ替え不可能な場合は臨床工学技士としての腕が問われます。トラブルを起こしている機器を直せなくとも看護師の業務を再開できる状況を作り出せることを最優先に考えましょう。臨床工学技士としては機器の故障が気になりますが、看護師は早く自分の業務を再開したいのです。ユーザーの不満を解消することで信用が得られ、今後の業務を行いやすくなります。
専門医との連携
専門医は緊急での治療現場で関わってきます。関わる場面は、心カテ、脳カテ、手術室、急性血液浄化です。臨床工学技士に求められるのは治療と医療機器の深い知識です。患者の状態が悪いため、誤った操作や判断1つで状況が悪化します。専門医の要望に応えられる実力を備えるためにも日々勉強し、研鑽を積む努力が必要です。信頼を得られる臨床工学技士になるためには、「何かあってもこの人なら大丈夫」と思われることです。そのために専門医と同じ現場に何度も立ち、症例をこなし実績のある臨床工学技士と認識して貰いましょう。専門医から信頼を得られれば、その場に居る他の医師や看護師とも連携が取りやすくなります。
まとめ
今回は臨床工学技士の医師と看護師、専門医との連携についてお話してきました医師・看護師との関わりは病院で働く限り絶対ですので、スムーズに行える関係性を築きましょう。連携する上で重要なのは、即座に対応できる知識を有していることです。臨床工学技士が必要な場面の多くはトラブル時です。トラブルに対して迅速に処理できると信頼が得られ連携も取りやすくなります。臨床工学技士が対応しなければならない部門は多いため、各部門に1人エキスパートな人材を配置することで医師や看護師からの信頼を維持できます。医療機器に対する知識を深め信頼を得られる臨床工学技士になりましょう。