神戸市民の基幹病院として、市民の生命と健康を守ることを目的に質の高い医療を提供する「神戸市立医療センター中央市民病院」。救急医療から高度医療まで対応し地域医療をリード

神戸市立医療センター中央市民病院

34診療科を有する神戸市域の基幹病院として、1次から3次救急まで対応しており、厚生労働省が発表した「救命救急センターの評価(令和3年度)」において、平成26年から8年連続で第1位に選ばれている。同院では臨床工学技士が5つの部門に分かれて活躍し、研修などを通じ幅広いスキルを身につけることができる。

臨床工学技術部の坂地一朗(さかじ・いちろう)技士と、入職1年目の牧蓮太(まき・れんた)技士にお話を伺った。

臨床工学技術部の陣容などについてお聞かせください。

坂地 技士

体制は、正規職員27名と非常勤(レジデント・アルバイト)職員2名に加え、医療機器保守点検委託職員5名となっています。正規職員枠のうち、育休代替の方が2名いらっしゃいます。

このうち男性は22名、女性は5名で、年代別では50代が1名、40代が4名、30代が14名、20代が8名です。管理職3名(2名は現場と兼務)で、私自身はほとんど臨床の現場に入ることはありません。部門別では、手術部門が8名、救急・映像医学部門が7名、臨床支援技術部門が5名、集中治療・血液浄化部門が5名+1、中央医療機器管理部門1名+1(+は非常勤職員)という内訳です。

新人の教育体制についてもご説明頂けますか?

新人はまず、4月から各部署を1年間で一回りして、その後に正式な部署に配属という形になります。4つの部署を3カ月ずつ、1年というローテーションです。ここにいる牧は手術部門に配属予定です。

勤務時間帯などの状況についても教えてください。

定時は8時から16時45分まで(休憩1時間)の7時間45分勤務です。夜勤はおおよそ月2回で、これに加えてオンコール(緊急時に備えた待機)が部署にもよりますが、月5~10日ほどあります。

臨床工学技術部の特徴についてはいかがでしょうか。

当院の臨床工学技術部は5つの部門に分かれて業務を行うという体制です。手術部門では人工心肺をはじめTAVIなどの心臓カテーテル関連、ステントグラフト治療、手術支援ロボット対応を行っています。救急・映像医学部門では、IVRセンターの造影検査や血管内治療、アブレーションなどを行っています。

また、集中治療・血液浄化部門では、血液透析や各種血液浄化とCAR-T療法対応など、臨床支援技術部門では植込みデバイス対応や呼吸器関連業務、内視鏡業務では医師のサポートで処置具の操作を実施しています。中央医療機器管理部門では病院全体の医療機器の管理やトラブル対応だけでなく医療機器の購入計画を立てるなど、一般的な業務から新しい治療にも対応し、各科のカンファレンスにも参加しています。

先ほど触れましたが、今年度から1年目は各部門をローテートして業務全般を経験してもらうことと、コロナによる休務者対応もありますが、経験者も配属部門を主業務として他部門への研修を行い幅広く業務を経験できる体制としています。また、法人としてですが資格取得支援制度もあり、資格取得のための補助があります。

当院においては、一般的に臨床工学技士が従事する業務をほぼ網羅していることと、部署ごとに関連するカンファレンスには技士も出席するなど、医師らと密にコミュニケーション取っているところも特徴です。

研修は、メインの業務をしながら、その日の業務のバランスを見て、余裕があれば、「まず全員が透析業務をできるようにしよう」と取り組んだ結果、透析に関してはほとんどの技士がこなせるようになっています。現在では、手術室の担当だけれども内視鏡も扱えるといったように、配属部門以外の業務をこなせる技士が増えています。新人は2年目からが、配属先での仕事になります。

臨床工学技士には専門外のスキルも身につけさせたい、という意図でしょうか?

私としては、臨床工学技士として幅広い技術を身につけてほしいです。正式な異動は年1回といったサイクルですが、今までの技術をある程度担保しながら、業務が落ち着いたら他の部署にも研修に参加して、腕を磨いてもらいます。

スペシャリストとゼネラリスト、どちらが良いのかというのは難しい問題ですね。私自身の個人的な考えとしては、将来管理職を目指すのであれば、複数の部署を見ていた方がいいだろうとは思います。一方、スペシャリストとして、技術を磨き自分のポジションの確立を目指すのもありだと思います。いずれにしても、自分の適性に応じてキャリアを歩んでほしいと考えています。また、臨床工学技士のキャリア形成のひとつとして可能性を広げるモデルになれればと、私自身も大学院へ進学しています。

神戸市立医療センター中央市民病院に入職された経緯について教えてください。

就職については、人工心肺ができる病院を探していましたが、なかなか合格できず、年が明けてから募集があった神戸市職員を受験しました。学生時代は人工心肺業務に就きたかったのですが、配属された西市民病院では透析室業務だけでした。

そして、2年目の冬に阪神淡路大震災で本館が全壊となり一旦は西神戸医療センターへ応援に行くことになったのです。その後、西市民病院に帰ってきてみると、16床あった透析室が6床での再開となりました。ちょうどその時に、中央市民病院から応援に来られていた麻酔科の医師に中央市民病院には臨床工学技士がおらず人工心肺も業者の方が対応されていることを伺いました。

その医師から、「研修に来ないか」と声をかけられて、西市民病院の院長に相談しました。西市民病院は立て替えても心臓の手術はしないが、集中治療室は造るということで集中治療業務に対する研修の承諾が得られたため、土曜日に出勤して振替休暇を火曜日にしてもらい、毎週火曜日に中央市民病院の集中治療室で研修することになったのです。そこから集中治療への関わりに興味を持ち、中央市民病院への異動を希望したというのが経緯です。

臨床工学技士を目指す人へのアドバイスをお願いします。

医療は日々進歩していますので、新しいものに積極的に取り組み勉強したいという意識がある人にとっては、向いている職種だと思います。もちろん、患者さんの治療や医療の安全に貢献する業務に携われることも、やりがいにつながります。

すでに国家資格を目指されている方は、コミュニケーションスキルやディスカッションできる能力を磨いてほしいです。きちんと聞かれたことに対して自分の思っていることを伝えられる人が求められます。採用試験の口頭試問では、こちらの質問に対して、自分の思いを的確に伝えられるかどうかを重視しています。

ここからは牧さんにお伺いします。

技士になられたきっかけについて教えてください。

牧 技師

高校時代に理数系が得意だったため、はじめは工学部に進学しようと考えていました。そこで工学部を卒業してから就ける仕事について調べていたところ、エンジニアなどの職種には興味がわきませんでした。そうしたときに、臨床工学技士を見つけて、子供の頃に医療系の道に進みたいと思っていたこともあり、この職業なら自分の得意分野を医療の場で活かせると思ったため、臨床工学技士を目指しました。臨床工学技士について調べていくうちに人工心肺に興味をひかれたという理由もあります。かっこいいイメージもありました。

地元は福井県で、高校卒業後は専門学校へ進学するために、神戸に出てきました。神戸は福井からそれほど距離的にも遠くなく、実績もある学校だったので選びました。

神戸市立医療センター中央市民病院についてのイメージはありましたか?

神戸市在住の人であれば、真っ先に名前が浮かぶ医療機関でもあり、専門学校の先輩方にも入職された方がいらっしゃいました。就職活動する前から知っていました。

実際に働いてみて、患者さんとのコミュニケーションだけではなく医師や看護師ら他の専門職とのコミュニケーションが重要だと感じました。

また、病院にもよるとは思いますが、当院では臨床への介入度が高いと思っています。患者さんとの医療の現場で接する機会が考えていたより多いと感じています。医療機器の扱いについては、4~6月の3か月間で当院が管理している呼吸器に関しては、一通り点検できるようになりました。機器のトラブル対応については、先輩の後ろについて見ながら、日々勉強している状況です。

1日のスケジュールを教えていただけますか?

6:00 起床
7:15 出勤
7:30 プライミング、調剤、患者情報収集
8:30 朝礼申し送り
8:45 午前クール患者入室
12:00 休憩
13:00 午前クール回収、午後クール患者入室
17:00 午後クール回収、翌日準備
18:00 退勤

といったスケジュールです。

ご自身の仕事のやりがいについては、いかがでしょうか。

楽しく仕事をさせてもらっていています。ローテーションというプログラムのお陰でもあると思いますが、技士として基本的なことが覚えられます。教育の面でも、先輩方からやさしく教えていただいています。楽しく働きながらも、もちろん勉強もしっかりしてバランスはとれていると感じています。

最初の配属は機器管理の部署でしたが、そこにいたときは、院内の認知度として機械のトラブルがあったら、まず臨床工学技士というイメージだったと思います。臨床工学技士は自然に耳に入る職業ではないですが、一時ECMO(エクモ)などで認知度が上がったと思います。これからも少しずつ、臨床工学技士の認知度が高まればいいと思っています。

今後の抱負についてもお聞かせください。

現在はローテーターとして仕事をさせて頂いているので、現段階では、3か月という短い期間ですが、1つでも多くできる業務を増やしていこうと考えています。来年以降はおそらく、手術部門にしばらく配属になるかと思いますので、専門性を高めつつ、1年目に経験したことは、最低限忘れずに技術を磨いていきたいです。

そして何よりも、現場の方や同業者から信頼される存在になりたいと考えています。臨機応変な仕事ができる技士になり、「彼に任せておけば大丈夫」と思われる存在を目指します。緊急時などに、「困ったら臨床工学技士の出番」と頼られるように頑張っていきたいです。

 

取材協力

神戸市立医療センター中央市民病院 臨床工学技術部
〒650-0047 神戸市中央区港島南町2丁目1-1 TEL:078-302-4321(代表)