八尾徳洲会総合病院
1978年7月1日八尾市久宝寺に開院し、2009年同市若草町に新築移転した。 地域医療に対する貢献や学術的貢献はもとより、次世代を担う医療人の育成、地域医療継続のための経営基盤の強化を目標に掲げている。臨床工学技士歴28年で、技士長の藤田和睦(ふじた・かずよし)さんにお話を伺った。八尾徳洲会総合病院の特徴と臨床工学科の陣容などについてお聞かせください。当院は八尾において緊急医療を担っており、年間7000件を超える救急搬送を受け入れています。臨床工学科が関わる業務としては特に循環器系疾患に力を入れ、24時間365日対応しております。現在、臨床工学科には臨床工学技士が27名在籍しており、そのうち女性が6名、1名は育児休暇中です。役職者は8名おります。
私どもが管理している機器は500台ほどで、毎日200件程度、定期点検とは別に点検しています。当院はICUが8室ありますが、日勤帯は1名を配置し、夜間も含め血液浄化等の対応を行っています。かなりの時間ICU滞在していることになりますね。この他にも、ドクターカーに臨床工学技士が同乗していくこともあります。例えば、患者様が人工呼吸器をつけたまま退院される場合などです。補助循環がついている状態では2名が乗って行きます。機器に何かあったときは医師のサポートが必要になるためです。シフトについては夜勤が1名、待機者は3名という体制です。心筋梗塞の患者様が運ばれて来たときには、心臓カテーテルが必要になりますので、その場合は夜勤者と待機者を3名とも呼び出して対応するという形をとっています。
臨床工学技士の育成方針についてはいかがでしょうか。
基本はローテーションです。と言うのも、夜勤に入るにはある程度さまざまな現場で対応できるスキルが必要になってきます。先ほどお話した心臓カテーテルのほか、緊急の透析や内視鏡などのスキルが必要です。最近ではDSAと呼ばれる、脳神経外科や放射線科による血管造影撮影検査への対応など、業務範囲は広がっています。そのような理由から、さまざまな業務をまんべんなく経験することが必要となっています。
新人の教育体制についてもご説明頂けますか?
教育体制については、まず血液浄化や透析において、スタッフがある程度安定的に対応できるよう配置をします。未経験者は、医療機器の扱いに加えて、患者様とのコミュニケーションや、ほかの医療従事者との連携などにおいて、未熟なところがありますので、はじめのうちは基礎的なことを身につけてもらいます。また、血液透析は月曜日から土曜日まで安定的に業務があるため、できれば一つ業務の要(かなめ)となること覚えて、そこからさまざまな業務に移っていくという体制をとっています。新人は1週間から2週間程度、当院の業務と連携の必要性の理解を深めてもらうことを目的に各現場を一通り見て回ることになります。そこから例えば血液透析の業務の習熟度や、コミュニケーションの取り方などを見計らいながら、各部署に配属となります。
その後は、ある業務での技量が一段落したら、次の業務へと移っていくことになります。本人が希望すれば、人工心肺なども経験します。新人の研修期間は、おおよそ3カ月から6カ月としています。
夜勤や残業、有給取得などの状況についても教えてください。
当院の勤務時間は月曜日から土曜日まで日勤帯は8時から16時半、日曜日は日勤帯が8時半から17時、夜勤は16時半から翌朝の9時までという2交体制です。夜勤は早ければ、入職2年目や3年目で始まります。ただし、当院に入職をご希望の方には、あらかじめ夜勤や待機に入る意思を確認してから採用しています。
私どもはゼネラリストを目指して臨床工学技士を育成していますが、年々業務が専門的になりつつあり、バランスをとりながら経験を積んでもらうことを心がけています。専門性について具体的に説明しますと、例えば心臓カテーテルでは日勤もしくは夜勤・待機の内3名が対応することになりますが、心臓外科の緊急手術では、人工心肺を操作できる臨床工学技士が必ず呼び出されるということになります。
残業時間については、スタッフに負荷がかからないように配慮し、月平均20時間前後に収めるように調整しています。有給休暇はスタッフ間で協力しながら、年間に取得できる日数を消化できるように調整しています。一人当たりの年間取得日数は、平均15日くらいです。
1日のスケジュールを教えていただけますか?
8:00〜
部署の準備、手術室であれば麻酔器の点検など、心臓カテーテルでは各装置が正常に起動するかチェック。内視鏡装置およびスコープ洗浄器などの整備点検など、それぞれの部門で対応することがあります。
8:45
いったん集合して、各部署の代表者が出席して朝礼を行います。日勤帯は部署へ配置した人員で対応していますが、緊急症例などのため部署の人員では対応が難しい場合には、ほかの部署から応援に入ることもあります。従いまして、各部署が常に連絡をとれる体制で対応しています。
16:20終礼
業務の進行具合、その日にあった報告事項の伝達などを行います。
八尾徳洲会総合病院で働く魅力はどのようなところでしょうか?
さまざまな業務が行えることが、魅力ではないかと考えています。病院見学を希望される学校法人様に対しては、積極的に見学を受け入れていますので、当院を魅力的に感じて応募頂いているケースもあります。採用に関しては、病院に長く勤めてもらうことが重要と考え、見学に来られた方への質問には正直にお答えしています。また、当院のセールスポイントとして、学会への加入と認定資格の取得を推進している点が挙げられます。認定資格に当院はかなり力を入れており、キャリアアップを目指したい臨床工学技士に対するサポートは手厚いと言えます。
ご自身の仕事のやりがいについては、いかがでしょうか。
私が入職した当時は、約10名の臨床工学技士がさまざまな部署にいて、とても頼られる存在であったのを思い起こします。現在でもその風土を守り続けていると自負しています。そういった環境が、仕事を続けてこられた背景にあると思います。実際に、医療機器について何か困りごとがあると、医師や看護師が私どものところに来られることもあります。
医療機器メーカーからデモンストレーションや機器の紹介があり、その機器が当院で使えそうな場合は、説明会も開いています。医療機器の安全使用の観点から、看護師ら適宜関係する部署を含め、研修会などを実施しています。
私は現在、管理職としての業務の傍ら、臨床工学技士として人が足りない現場にスポットで入っています。まだまだ、若い人たちには負けたくない、という想いもあります。臨床にも携わっていますし、品質改善のための支援といった業務にも関わっています。
藤田さんご自身は、臨床工学技士の仕事についていつ面白いと感じられましたか。
国立循環器病研究センターから通っていた専門学校へ実験補助のお誘いがあり、私もそのメンバーに選んで頂き、アルバイトとしてさまざまな実験などに携わらせて頂きました。そうした体験から臨床工学技士の仕事に、強い興味がわきました。もともと、医療機器自体への興味はありました。国立循環器病研究センターでは、人工心臓の開発などをお手伝いすることができ、特に人工心肺にとても関心を持ちました。専門学校卒業後は、長野県の病院で2年勤務した後に、大阪出身だったこともあり、1997年に当院へ入職しました。
臨床工学技士の社会的役割についてあらためてお聞かせください。
やはり根底にあるのは、医療安全であると考えています。患者様に安全で安心な医療を受けて頂くうえで、臨床工学技士は、メディカルスタッフの一員として重要な役割を担っていると思います。このことを大前提に考えますと、臨床工学技士に求められる能力は年々高まっており、私どもが医療を支える一翼を担っていることを皆様に理解して頂きたいと思います。当院では脊椎の手術でナビゲーションを使用したり、ここ最近では(手術支援ロボットの)ダヴィンチのセットアップを担ったりするなど、手術室における業務がさらに広がってきています。医師が症例を数多くこなすことができる環境を提供し、私どもの業務自体が増えてきたことについてはありがたく感じています。
これから臨床工学士を目指す若い人へメッセージをお願いします。
当院の臨床工学技士のメンバーは平均年齢が約30歳です。若いスタッフといろいろ話をしながら、働きやすい職場を目指しています。一番採用で大切にしているのは、コミュニケーションです。なぜならば、円滑なコミュニケーションが図れないと医療的安全が確保できず、関係者の良好な状態も保てません。医師や看護師など、それぞれ立場が異なる医療従事者とスムーズにコミュニケーション図ることができれば、良い仕事ができます。
最近では、男性の臨床工学技士が育児休暇をとったことがあります。また現在産休中の女性技師も、秋には職場に復帰する予定です。このようにライフスタイルに応じて、スタッフが働きやすい環境を今後も整備していきたいと考えています。これから新たに雇用する人材を大切にし、魅力を感じて頂ける職場づくりを目指していきます。学生さんの見学は、随時受け付けております。採用につきましては、採用情報をご覧ください。