【臨床工学技士インタビュー】中四国でいち早く手術支援ロボットda Vinci を導入した民間病院。名医の集まる病院は、先端医療の導入に理解があり、先端医療機器に臨床工学技士が集まる好循環な病院の倉敷成人病センター

倉敷成人病センター

昭和46年(1971年)に財団法人倉敷成人病センターとして開設した倉敷成人病センター。 「医学の進歩は人間を幸せにするためのものである」を原点に、人間愛と向上心に富み、地域の人々から信頼される医療を提供。

生活習慣病など一般的な慢性疾患から、整形外科・眼科・皮膚科疾患、また消化器、呼吸器、泌尿器、女性生殖器、乳腺に至る全身の悪性腫瘍の外科的治療から放射線治療まで幅広い診療を行なっているほか、リウマチ膠原病、肝臓病、人工透析、不妊治療、小児神経疾患、女性骨盤臓器脱治療、放射線科による動脈塞栓術など特殊専門領域についても力を入れている。

子宮・卵巣がんなど婦人科の手術件数は、岡山で一位、全国トップクラスの手術件数(※)。
倉敷成人病センターの臨床工学科の山下由美子(やました・ゆみこ)技士長と松本沙貴(まつもと・さき)副主任に聞いてみた。

※出典:朝日デジタル‐手術数でわかるいい病院 子宮・卵巣がん手術件数

松本沙貴 副主任 に聞いてみた

松本副主任

臨床工学技士との出会い

医龍と言うドラマを見て、手術室の臨床工学技士がかっこいいと思ったのが最初です。

母が看護師なので、医療系の仕事には、もともと興味はありました。また、父が工学系の仕事をしていたのもあり、家にドライバーや測定器など色々な機械があって、よくいじっていて怒られていた記憶がありますので、物心つく頃から機械も好きだったのかもしれません。

特に、色んな職種の中で新しい業種ですし、どんどん業務の幅が広がっていますので、新しいことをやっていきたい人には向いている業種だと思います。

倉敷成人病センターを選んだ理由

見学に来て、臨床工学技士さんの手術の知識が豊富だと思ったこと。手術室の看護師だけではなくて、「技士さん」とか「MEさん」ではなく、名前で呼んでもらって仕事を依頼されており、レベルの高い臨床工学技士が多く、多職種からの信頼があつい病院だと思い、こんな病院に入りたい、そんなチームのメンバーになりたいと思っていました。

実習では人工心肺などで手術室に入ることはあったのですが、それ以外の手術室業務にも興味があって、倉敷成人病センターの手術室で働いてみたいと思いました。

卒業した1年目は、倉敷成人病センターの臨床工学技士の募集が無かったので、他の病院で働いていましたが、翌年、求人募集があったので、応募して入職させていただきました。

色んな業務に携われて、色々なものの中から極めていける環境はとても良いと思っています。

学生時代と比較した現場で働く臨床工学技士のギャップ

学校では、機械の操作・保守・点検をするのがメイン業務で人とのかかわりが少ないと言うイメージでした。

ただ実際に現場に入ってみると、多職種、患者さん、ご家族、医療機器メーカーの方などとのかかわりも多くコミュニケーション能力が非常に大切だと感じました。

手術室も手術や内視鏡検査では一緒に介助し入りますので、患者さんとは顔を合わせたり機器の貸し出しや在宅機器購入時、高気圧酸素治療導入前には本人だけではなくご家族ともお話することもあります。特にお話することは苦ではありませんし、コミュニケーションの大事さを痛感しております。

臨床工学技士になって良かったことは何ですか?

医療人として患者さんに携われることが挙げられますが、機器の構造に詳しくなれることは家庭でもいきています。

特に当院では、最新の医療機器に触れる機会が多くありますので、向上心につながっています。

ちなみに当院は、内視鏡手術支援ロボットda Vinciを中四国地方の民間病院で最初に導入した民間病院になります。また最新の単孔式ロボットda VinciSPは、中四国で初の導入施設になります。

松本技士の一日の流れを教えてください。

消化器内視鏡業務、高気圧酸素治療業務、手術室業務を担当しています。
消化器内視鏡業務に就く場合、朝内視鏡センターに入ったら、一日ずっと内視鏡業務です。
高気圧酸素治療業務、手術室業務に就く場合は、放射線治療センターにある高気圧酸素治療室と手術室と中央材料室などを行き来しています。

08:30 業務開始
高気圧酸素療法 2件
12:00 お昼休憩
13:00 午後業務
内視鏡センターにて特殊検査の立ち合い
17:20 夕礼
翌日の各自の業務、休憩の調整を実施
17:30 終業

17:30以降は残業当番が1人残り、19~20時くらいまで手術室、中央材料室などの残業(残業のない日もあるし、手術の状況によっては22時~23時になることもある)
定時は、8:30~17:30で、月間残業時間は20時間前後

どう言う人に臨床工学技士を知ってもらいたいですか?

臨床工学技士は、まだ他の医療職と比べ新しい職種です。またタスク・シフト/シェアで、業務の幅が広がっていく職種でもあります。医療機器も常に進歩しているので常に新しいことにチャレンジしたい人、医療機器に興味がある人は、進学の際に、興味を持ってもらえると良いと思います。

山下由美子 技士長 に聞いてみた

山下技士長

新入職の場合、どのような研修・配属先があるのでしょうか?

臨床工学科は、大きく透析部門とそれ以外に分かれます。

配属技士18名(女性8名)のうち、4名が【透析】、14名が【それ以外業務】を担当します。

【それ以外業務】は、①手術室業務(中央材料室業務含む)、②内視鏡センター業務、④高気圧酸素治療業務、⑤機器管理業務を担当します。

【透析】は、3か月間、透析室で先輩技士に付きっきりで、プライミングから回収、穿刺その他一連の業務を修得して、4か月目には1人で業務が行えるようにします。

そして、エコー下穿刺も当院では臨床工学技士が担当しているためその技術を習得するため日々研鑽しています。また、透析部門システムの管理やシャント管理なども看護師と協力して実施しています。

【それ以外業務】は、各業務を1週間ずつ周り、浅く広く業務を覚えて行ってもらい、少しずつ業務を覚えてもらいます。1年目は、機器管理と手術室の外回りが主な業務になります。

当院は総合病院並みに手術件数が多い施設です。よって、手術室では症例数の多い手術の外回り業務(ロボット含む各種医療機器の操作方法やトラブル対応、手術の概要や準備物など)から学んでもらい、中央材料室での洗浄・滅菌と各種光学機器の点検で正常な状態と異常な状態の判別ができるように学びます。

その後は、清潔野での清潔補助業務(清潔野での機器の受け渡しやセッティングなど)やスコープオペレーター(内視鏡カメラの操作)などの業務を行ってもらいます。

当院では中小規模で幅広い診療が行われているため、まずは、広く臨床工学技士の業務全般を覚えて行ってもらう体制にしています。各業務を覚えた上で、専門性をあげていきます。

当院はロボット手術などの低侵襲手術の症例数も多いのですが、眼科の手術も多く近年では眼科領域も医療機器や手術の技術が日々進化し、最先端の医療機器を使用するため臨床工学技士が介入しています。

眼科の手術は繊細な手術(術野が非常に狭く、使用する器械は全て小さく非常に繊細)だからこそ、精細で鮮明な手術映像にこだわるため、独自に調整したカメラコントロールユニットでの高精細4K3Dモニター手術顕微鏡システムでの低侵襲手術なども医師と共に取り組んでいます。

また臨床工学科の主任は、事務部の資材購入部門も兼任しており、医療機器や医療材料の価格交渉や、患者さんにメリットのある資材の選定をしています。また算定が変わる度に、保険点数の有無なども含めて、事務と企業、臨床の橋渡しもしています。

研修・学会や認定士取得について

業務に関連する資格として、透析技術認定士、消化器内視鏡技師、臨床ME専門認定士、高気圧酸素治療専門技師、3学会合同呼吸療法認定士、手術関連専門臨床工学技士、周術期管理チーム認定臨床工学技士等があります。現在は、各者に専門領域を極める意味でも資格にチャレンジしている段階です。

学会発表への取り組みとしては、内視鏡、高気圧、手術室、低侵襲手術(内視鏡外科手術、ロボット手術)などの学術発表が多いです。他には、中央材料室に臨床工学技士が積極的に介入し、看護部から臨床工学科へ部署を移管し業務をしていると言うのは、当院は早い段階から取り組んでいますので、その辺りの学術発表も多いです。

講習会、交通費、宿泊費の支援はしており、告示研修は業務で必要になる臨床工学技士から順次研修に行っています。

技士会について

臨床工学技士の職能団体である日本臨床工学技士会からの情報の収集だけでなく学術活動を通して、可能な限り情報提供も行っています。また当院が属する岡山県の臨床工学技士会は各種の講習や意見交換会を開催してくれ、施設間同士の横のつながりがしっかりしているのが特徴です。

当院も高気圧治療を始めたばかりですが、岡山県臨床工学技士会のつながりの中で、施設見学させていただいたりとてもスムーズに運用を開始することができました。

病院の特徴と求人PR

総合病院みたいに、一つの業務を極めると言うのではなく、色んな業務に取り組める経験出来ると言うのが大きいと思います。

最先端のロボット手術の購入・導入サポートからピンセットなどの硬性小物、ガーゼなどの医療材料、高額な医療機器の仕入れなども行いますので、臨床だけではなく、価格交渉をしながら良いものを仕入れると言う病院経営にも携わって行くような幅広い業務になります。

先進的な医療機器も入ってきやすい環境ですので、臨床工学技士にとっても良い環境のある病院だと思います。見学採用についてはお問合せ下さい。

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一般財団法人倉敷成人病センター 倉敷成人病センター 臨床工学科
〒710-8522 岡山県倉敷市白楽町250 Tel.086-422-2111(代)
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