明和病院
明和病院は、戦時中に軍事用の航空機を作っていた川西航空機株式会社の付属病院として創設した4つの病院のうちのひとつであった。戦時中迷惑をかけた地域の人たちに恩返しがしたいと、1945年(昭和20年)に医療法人として再出発した歴史ある総合病院だ。地域の人たちのためにとの思いにあるように「親切で信頼される病院」を目指している。31の診療科に357の病床数がある明和病院は、「ゆりかごから看取りまで」の途切れない医療を提供している病院機能評価認定病院である。
臨床工学室には12人(女性1人)が所属している。今回は、谷垣勝文(たにがき・かつふみ)技士長と玉岡大輔(たまおか・だいすけ)技士に話を聞いた。
身近な先輩
玉岡技士は、大阪の4年制の大学で医療福祉工学科を卒業後、明和病院に入職し現在3年目。
明和病院を希望した理由は?
明和病院には、人工心肺はないのですがそれ以外の業務には広く関わることができるというのが大きかったですね。あとは、実家から自転車で20分ほどの場所にある地元の病院だということもありよく知っていました。
臨床工学技士を目指したきっかけは?
父が臨床工学技士なのですが、中学校のときに『進路に迷っている』と相談したら、臨床工学技士がどのような仕事かを教えてくれました。もちろん、臨床工学技士という職業は知っていましたが、父は家で仕事のことを話すことがなく詳しくわかっていませんでした。クリニックが休みの日に、父が勤めていた透析のクリニックに連れて行ってもらいました。そこから臨床工学技士の仕事に興味を持ちました。
やりがいは?
現在、血液浄化部門の業務に携わることが多いです。人工透析の業務で穿刺をするのですが、上手くいかないこともあります。
上司や先輩方にアドバイスをもらうだけでなく、患者さんからも『ほかの人はこんな風にしてるで』『思いきってやってかなあかん』とあたたかい声をかけてもらいます。次の機会に穿刺が上手くいくとやっていてよかったなと感じますね。患者さんはフレンドリーで色々と話しかけくれますので業務がしやすいです。総合病院なので手術室も入っていますし、呼吸器系もありますし、大学で勉強してきた大半のことに関われるというところが明和病院の特徴ですね。
上司として玉岡技士の仕事ぶりはいかがですか?
上出来だと思います。新人プログラムは人によって進み具合が違うので半年で差が出ることもあります。その点玉岡技士は、スムーズに業務を覚えてくれました。入職して1年半を過ぎたころにはオペ室を含めた全体的な業務に入ってくれていました。
1日のスケジュール
玉岡技士のある日の勤務
定時8:30~17:00 (透析室勤務の場合)
8:00 出社
8:20 ミーティング
8:30 業務開始(始業前点検)
9:00 透析スタート(6人~8人の穿刺を担当)治療中の日常点検や夜の分、翌日の分の透析の材料準備など
11:30 昼食(30分)
12:00 透析終了時業務(回収・片付け)
14:00 休憩(30分)
14:30 夜の分、翌日の分の透析の材料準備など
中央管理している機器の保守・点検
16:00 ミーティング・血液検査データ処理業務
17:00 終業
週4回、月曜日・水曜日・金曜日の17:00~23:00と土曜日は15:00~20:00にも透析を実施しているため、オンコール対応は年に2、3回程度。月の残業は、平均で25~30時間程度。
業務の均等化
谷垣技士長
入職したら、まずは血液透析からはじめてもらいます。約半年間、前年入職の先輩が教育係として新人につきます。もちろん、その先輩だけで新人教育をしていくのは難しいので、さらにその上の先輩がフォローに入っています。穿刺をするのは先になりますが透析終了時の作業、ここまでを夏前後くらいには習得できるようなスケジュールで教育を行なっています。
そこから先は人にもよりますが、カテーテル治療、ME機器の保守・点検など業務の幅を広げてもらいます。新人プログラム終了後もしっかりとしたキャリア形成ができるようにキャリアラダー※を採用して毎年評価しています。
※臨床工学技士に求められる技術や知識を段階的にレベル分けして、各レベルで到達すべき具体的な目標を設定、客観的評価を行います。
勤務体制はどのようになっていますか?
明和病院の臨床工学室は、血液浄化部門と手術室・病棟部門の2部署に分かれています。内訳は、血液浄化部門10人、手術室・病棟部門2人ですが、手術室・病棟部門を2人で回そうと思うと業務量的には結構大変です。数カ月ごとにローテーションする形で血液浄化部門、手術室・病棟部門を回って業務をするということを以前はしていましたが、2、3か月期間をあけると(機械が新しく導入されるなど)業務内容が変化していくので元の場所に戻ったときになかなかすぐに対応できない部分もありました。
現在は、血液浄化部門と手術室・病棟部門の全業務を12人全員で行うようにしています。
それはどうしてですか?
部署によって忙しい時間帯や期間があります。例えば、手術室での業務は忙しいのに血液浄化部門が落ち着いているなど部署ごとに忙しさの差が出てしまいます。忙しさというのも均等化したいというところがありまして、全員が全ての業務を対応できる形にしました。
タイムスケジュールである程度動くので、ひとつの例としては、午前中は心臓カテーテル業務に入って、午後から透析室の業務をしたり機器管理の業務をしたりするなど、忙しいところに空いている人を送るようにしています。
それは、3年目の玉岡さんもされていますか?鍛えられますね?
そうですね。色々な業務をさせてもらえるので良い環境で仕事ができています。
将来はどのような技士を目指していますか?
ラジオ波業務のような病棟やオペ室の業務ももっと習得してジェネラリストとして関わっていけるようになれたらと思っています。また、透析室でも勤務していますので、谷垣技士長が持っているような透析技術認定士の資格を取得したいと思っています。
求める人材
入職を希望される前に病院見学をお願いするようにしています。そのときにお話をするのが、入職からおよそ5年でジェネラリストに向けての全般的な業務をしっかりと覚えてもらい、それ以降に関しては専門性を突き詰めたいなど人それぞれ希望があると思うのでスペシャリスト寄りになるよう教育をしていくと説明しています。
そのうえで、人と接することが得意な人。苦手な人はなかなか務まらない仕事かなと思っています。臨床工学技士は、工学の前に“臨床”と付いているように患者さんのそばで治療の補助や機械の操作をすることになります。そこには、治療を受ける患者さん、治療の方針を決める医師、24時間患者さんを看る看護師など多くの人が関わります。臨床と付いているからには、人とコミュニケーションをとるのが苦手であっても努力して克服できる人が望ましいですね。