「安全で質の高い医療の実現へ」個々の資質に合わせ若いうちから様々な経験を積むことができる東邦大学医療センター 大森病院。人脈の継承は、臨床工学部延いては病院の貴重な財産。次の世代へ引き継ぐ準備も

東邦大学医療センター 大森病院

2025年に開院100周年を迎える東邦大学医療センター 大森病院は、特定機能病院として高度先進医療を提供する一方、地域の基幹病院としての役割も果たしている。病床数は、916床。外来患者数は、1日平均2,083人(2021年度)、年間手術件数は、10,822件(2021年度)にのぼる。中央機器管理している医療機器の台数は、約1,500台。東邦大学医療センター 大森病院の臨床工学部には、22名(女性3名)の臨床工学技士が所属している。今回は、臨床工学部の森伸一(もり・しんいち)技師長と髙橋諒(たかはし・りょう)技士に話を聞いた。

森伸一 技士長

森 技士長森 技士長

主な業務は、透析室、救命センター、手術室、カテーテル室、機器管理室があります。機器感理室が5名、透析室が5名、手術室が5名、カテーテル室が5名、救命センターが2名です。臨床工学部内にローテーターは3~4名います。救命センターと透析室,手術室・カテ室と機器管理室をそれぞれ大きく2つの形にして誰がどこを担当するかというのは前日もしくは当日に決めて、人手が足りなくならないよう工夫して業務わけをしています。

若手のホープ

髙橋諒 技士 


髙橋技士は、北海道出身。神奈川県の大学へ進学し、東邦大学医療センター 大森病院へ入職。
4年目の期待の若手である。

forista.biz編集部forista.biz編集部

臨床工学技士を目指したきっかけは?

 

髙橋 技士髙橋 技士

医療系の仕事に就きたいと思っていました。色々と調べるうちに、臨床工学技士や臨床検査技師の仕事に興味を持ちました。臨床工学技士になろうと思った決め手は、コメディカルの中で臨床工学技士が一番患者さんと触れ合って治療に関わることのできる仕事だと知り、魅力的に感じました。

 

forista.biz編集部forista.biz編集部

東邦大学医療センター 大森病院を選んだ理由は?

 

髙橋 技士髙橋 技士

大学進学を機に上京しました。どのような病院で働きたいかと考えたときに、様々な業務を経験したいと思っていましたので、ローテーションで業務ができるところを探していました。私が入職したときは3カ月単位で4つの部署を1年かけてまわって、そのあと1カ月ごとのローテーションと聞いていたので、様々な経験を積みたい私に合っていると感じ東邦大学医療センター 大森病院に入職しました。特に、循環器業務は、体力勝負だと思っているので若いうちに経験できたらなと思っていましたのでいますごく充実しています。

 

forista.biz編集部forista.biz編集部

実際に働いてみていかがでしたか?


髙橋 技士髙橋 技士

特にギャップも感じず、思った通り様々な仕事をさせてもらえています。希望していた人工心肺も勉強中です。とてもやりがいを感じています。


森 技士長森 技士長

髙橋技士は、2番目に若い技士なのですが、オールマイティかなと思います。人工心肺時に使用する機器や薬剤と症例についての紐付けもきちんと理解していますし、何より勉強の仕方がわかっています。臨床工学技士としては、機械だけの説明だけできていても不十分でその機械を使ってどのようなことができるか、どのようなことが起きるかまできちんと理解して初めて機械を使えるということになります。その辺髙橋技士は、勉強の仕方も理解していますし、仕事もできて真面目です。

 

1日のスケジュール

髙橋技士のある日のスケジュール (人工心肺業務でオペのある日)

定時8:00~16:30

7:45 出勤
8:00 血圧トランスヂューサーの準備 人工心肺回路のセッティングやプライミング業務 
9:00 手術前に5分程度医師らと手術について確認
10:00 手術スタート
10:45 人工心肺スタート
13:00 人工心肺終了 自己血回収装置が使用されている間は立合い
15:00 手術終了後→片付け・清掃

15:15 休憩(昼食) 45分

16:00 オペ室の機器管理 搬送用のモニター 夜間使用する装置の保守・点検など
16:30 終業

月の残業時間は、20時間程度。当直は、月に3~4回、オンコールは月に7~8回程度担当する。

森 技士長森 技士長

月に1回以上は、必ず連休がとれるようにシフトを組んでいます。緊急対応などがあっても連休は必ず取れるように調整しています。いまは、リフレッシュする時間も大切ですからね。ちゃんと休暇がとれるように、臨床工学技士全員がECMO(体外式膜型人工肺)も組めるようにするなど、救命センターで必要になる業務の底上げをしています。

 

患者さん以外の人生も左右する仕事

Q.循環器業務を希望した理由は?


髙橋 技士髙橋 技士

学生の頃から循環器系の業務に興味を持っていました。学校で解剖や生理学など心臓の勉強をしていて、わからないなりにカッコいいなと思っていました。私が担当している人工心肺業務というと心臓の手術とか血管の手術の際に使います。例えば、術前、階段の登り降りがつらくすぐに息切れをしてしまうような患者さんが楽に生活できるようになる手助けができたり、カテーテル室であれば、心筋梗塞で1分1秒を争うような患者さんを救えたりと、死亡率が高い病気を抱えている患者さんに対して手術をして病気を取り除くことができるという点に魅力を感じました。

Q.業務のなかで印象に残っている出来事はありますか?


髙橋 技士髙橋 技士

50歳くらいの男性の患者さんで、大動脈解離になった方がいました。大動脈解離は、処置をせずにいると24時間後には死亡率がかなり高くなる危険な病気です。助かるには裂けた血管を取り替えるという手術をするしかない病気で、手術のときには人工心肺を使用します。その患者さんには、奥さんもお子さんもいらっしゃいました。お父さんが助かるのと助からないのでは家族の人生まで変わってきますから、そういう手術がうまくいったときには本当によかったなと心から思いますし、充実した気持ちになります。

Q.目標はありますか?


髙橋 技士髙橋 技士

体外循環技術認定士の資格を来年取得したいと思っています。せっかく取り組んできた業務ですので客観的に認めてもらいたいというのもありますし、施設認定に関わる資格ですので病院へ貢献したいという気持ちもあります。あとは、心筋保護の分野をもっと勉強したいと思っています。心臓止めるときに使う薬があるのですがそれがしっかり流れているかというのを手術中に確認する方法があまりありません。すごく難しいことで実現できるかはこれから次第ではありますが、医師らとチームを組んで何かいい方法を発見できたらいいなと思いますね。

 

求める人材

森 技士長森 技士長

性格の良い人がいいですね。私たちの仕事は、人と接することが多いですから人に対する態度が重要になってきます。やさしい人できちんと会話ができる人が望ましいです。勉強は入職したあとでいくらでもできますからね。

 

次の世代へ引き継ぐ

森 技士長森 技士長

心臓外科の医師などによくお願いされるのですが、臨床工学技士として「横のつながりを残してあげて」と言われます。横のつながりというのは、ほかの病院の臨床工学技士たちとの関係です。コロナの状況もあって残念ながらいまの子たちには全然横のつながりがありません。横のつながりがあると、新しい医療機器の操作方法やメリット・デメリットをすでに導入している病院から生の声を聞くことができます。実際に機器を使う人でないとわからないこともありますので大変参考になります。また、技術的なことや薬の組成ついてなど様々な情報が入ってくるという意味でも横のつながりは大変重要になります。そういう貴重な財産を部下たちに残してやりたいと思っています。

 

取材協力

東邦大学医療センター 大森病院 臨床工学部
〒143-8541東京都大田区大森西6-11-1 Tel.03-3762-4151(代)