住友病院
大正10(1921)年7月、住友グループの社会貢献活動の一つとして開設され、その後、名称や場所を移しながら、平成12(2000)年には現在の地に移転し、地域の方々に質の高い医療を提供して参りました。
100年という長い歴史と伝統に培われ、当院の理念である「信頼性の高い医療で社会に貢献」をモットーに診療科や職種を超えたチームワークに加えて、患者さまとの確りとしたコミュニケーションを基盤として良質な医療の提供を目指しています。
当院は内科系と外科系合わせて30の診療科、診療科を超えた専門家からなる14の治療センターを有する総合病院で、幅広い疾患に対応可能です。これまでの当院の活動や努力が認められ、News Week誌が選ぶ、「World’s BEST HOSPITALS」に初年2019年度より本年2023年度まで5年続けて選定されております。
今後も地域の中で、その役割が果たせるよう、常に患者さまの声に耳を傾けながら、様々な専門性を持った方々の多職種が連携し、職員にとっても、快適で働きがいのある環境の下、患者さまにも職員にも優しく、高いレベルを有する病院でありたいと思います。
今回は全業務ローテーションで業務習得をする診療技術部臨床工学科の平野玲二(ひらの・れいじ)科長と矢野彩香(やの・あやか)主任にお話をお伺いしました。
矢野主任(左)・平野科長(右)
矢野主任に聞いてみた
臨床工学技士を知ったきっかけ
大学進学に際して、医療職に就きたいと思っていました。特に何になりたいという明確な目標はなかったのですが、母も医療職を色々と探してくれてました。
比較的新しい資格で、工学と医療が合わさったお仕事ということで、臨床工学技士に興味を持ちました。
そして知るにつれ、人工心肺にしても機器管理にしても、色々な診療科や業務に関われる臨床工学技士になりたいと思いました。
住友病院を選んだ理由
色々な業務のある総合病院に行きたいと思っていました。その中でも、人工心肺業務のある総合病院で募集があったのが住友病院でした。
内視鏡とアブレーションは、最近できた業務なので習得出来ていませんが、それ以外の人工心肺、血液浄化、心カテ、機器管理、不整脈業務、ICU業務の一通りの業務は経験してきました。
現在は、出産を機に、オンコールと夜勤のない血液浄化のリーダーとして、部門を任せてもらっています。
全スタッフ3~4業務が出来るように、主任もローテーションを行っています。矢野主任は23年4月に主任に昇進し他の主任も数が揃ってきたので、主任中心の業務管理体制を構築中です。
矢野主任の場合は、まだお子さんが小さく、急なお休み等もあります。またアフェレシスなど血液浄化業務が増える中、当該業務を専門に対応できるスタッフには経験も知識も豊富な矢野主任が適任で、業務リーダーと併せて人材育成もお願いしています。血液浄化の他にも在宅人工呼吸関連業務もお願いしたいと思っていて、NPPV、CPAP、酸素療法などの在宅管理業務にも入ってもらっています。
科全体では主任が2人増えたので、不整脈関連と手術室(人工心肺含む)、機器管理と内視鏡というように、各主任に業務エリアを分担し担当してもらっています。
アブレーションは2年前から開始となりました。心臓カテーテル業務はオンコール対応もあるので、多めに人を割いています。2023年4月からは不整脈専門医師が当院に着任となりましたので、ICDやCRTなどのデバイス植込みも開始予定です。その分野も増員して対応していく予定で考えています。
住友病院に就職出来て良かったと思う点
友達と話してると「色々な業務をしたかったのに、一つの業務しかできない」という話を聞きます。
私は1年目からローテーションで色々な業務に関われたので、一通りの業務が経験出来て良かったと思います。また新入職者へのフォロー体制がしっかり構築されているところも魅力的です。
①マンツーマンのOJTで業務を開始し、習得状況に応じて徐々に独り立ちできるようにしています。
②独り立ちした後も、いつでもフォローできる体制にしているので安心して業務を習得することが出来ると思います。
・マニュアル整備だけでなく、特殊な手技やメーカ説明会などは動画撮影をして専用共通フォルダでいつでも閲覧できるようにしています。
・当直者にも普段実施していない業務で対応困難時は、該当業務リーダーにいつでも連絡して確認できる体制としており、ストレス軽減となるよう環境作りをしています。
血液浄化部門としては、アフェレシスの件数は比較的多いと感じています。新たな治療法や透析との同時療法なども積極的に実施して、教育体制や安全対策にも力を入れています。
一日の業務の流れ
定時 8:30~16:45(実労働7.5時間、45分休憩)
腎センター業務(人工透析業務)2クール
8:15 臨床工学科朝礼(前日の申送り、当日の業務予定、連絡事項報告など)
8:30 透析室の機械室の機械点検・透析プライミング・情報収集など
9:00 患者さん入室(受け持ち制、ほぼ入院患者さん)、新人や若手スタッフのフォロー、エコーガイド下穿刺やサポート、アフェレシス業務の準備、ICUなどの出張透析業務等
11:00 お昼(交代制)
14:00 1クール目返血、2クール目の受入れ
16:45 終業、以降は週1回で残業当番
18:30 2クール目返血
20:00 閉場(入院状況※によっては、18時くらいに終わることもある)
※入院患者中心の透析業務の為
月間残業5~20時間程度
将来なりたい臨床工学技士像
将来は色々な業務に携わって色々な人と関わりたいです。経験できていない業務も含めて、ローテーション業務に入りたいと考えています。今は子どもといる時間とバランスを取りながら、業務習得していきたいですね。
産後の働き方
以前は病児保育も利用していましたが、今は、子どもの急な発熱でも休める環境がありますので、家庭と仕事のライフワークバランスは保てています。
お子さんがまだ2歳なので、時短勤務の選択ができますが、本人の希望で、フルで入ってもらっています。
当直や緊急当番は免除し、土曜、祝日などは、透析に対応してくれてます。旦那さんも協力的で助かっています。
平野科長に聞いてみた
新卒が4月に入職して来たら
1日目は病院で多職種含めて合同オリエンテーションに参加します (院長挨拶、医療安全、感染など)。
2日目は臨床工学科で医療人・社会人としての心得、礼儀・接遇、現場の顔見せなどのオリエンテーションを行います。
3日目からはプリセプター制度でOJTに入ります。1か月で業務を変更しながら適性をみます。
1年目は2業務ペアで1か月ずつローテーションで業務を担当します。「透析と在宅のペア業務」、「手術室(人工心肺以外)と内視鏡のペア業務」のOJTに入ってもらいます。
その後、他スタッフにも適正など確認を行い、本人の希望も考慮して、主任会でどの業務に配置するか決定します。まずは内視鏡や透析など毎日実施する業務かつ、フォローが出来る人数の多い業務を習得していきます。
新卒者は心カテ業務を3か月目から必須で習得していきます。日常業務を習得し2~3年程度をメドに、定期的に面談して本人の意見も聞きながら、人工心肺や不整脈などの業務に就きます。
当直業務は緊急カテ初期対応、CRRT、人工呼吸器、HFNC、NPPV、機器管理のトラブル対応を行います。当直開始時期は3年目が目安です。
オンコールは緊急カテの対応です。人工心肺は新しいドクターが入ってきて、今は年間60~70件に増加したので、対応できる技士を増やしているところです。
臨床工学技士は18名(男性14名・女性4名、20代8名・30代6名・40代2名・50代1名・60代1名)です。
ここ数年、アブレーション、在宅人工呼吸関連業務、内視鏡を始めて増員が続いたので、比較的新しいスタッフが多く20代が多くなっています。
教育支援
病院としては、タスク・シフト業務を拡大する前提がありますので、告示研修費用は支援してもらっています。
病院の施設認定に必要な資格(体外循環認定士や腎代替療法専門指導士)は取得と資格維持に対する費用は病院支援されます。各種専門や認定に対する資格手当はありませんが、評価対象となり人事考課に反映されます。
今までは、少ない人数で業務拡大していましたので、まずは人材確保、臨床教育が優先しておりなかなか学会参加の推進ができる環境にありませんでした。現在は科全体の人数も増えており、学会参加を推進しています。演題発表に積極的なスタッフには、サポートする体制を整えています。
どこの病院でも発表が苦手な方はいると思いますので、強制はしておりません。強制されてやる業務程、嫌なことは無いと思いますので。
コロナ過でWeb開催の学会が続いていたので、現地開催での学会に参加したことがなかった3年目の呼吸を担当しているスタッフと一緒に名古屋に日本呼吸療法医学会に行って来ました。現地開催ならではの熱量を感じて刺激を受けて、切磋琢磨してくれたらいいなと思います。
学会に参加する機会を増やして、中堅スタッフには積極的に演題発表をしてもらいたいと思っています。ある程度の年数勤務してもらったら、専門の分野を作ってもらって、主業務とサブ業務合わせて3~4業務を受け持ちながら、専門性を高めて学会発表や資格取得にも取り組んでもらえたらと考えています。
出張で学会に聴講に行った場合は、聴講内容を臨床工学部長・副部長(共に医師)も含めた毎週金曜のカンファレンスで報告しています。私も学会聴講に行くと報告します。臨床工学科に還元することを目的としていますので、報告・共有することを仕組化しています。
働く環境
当院には医学図書室があり、院内にない文献は常勤している司書が大学や他病院図書室と連携し、取り寄せしてくれます。また職員食堂も低価格で美味しく、メニュー豊富です。
休暇については、有休休暇に加えてリフレッシュ休暇が3日あります。今年は有休休暇は80%以上取得出来ており、100%取得を目指しています。
住友病院の臨床工学科の特徴
患者さんもそうなのですが、「住友」の名称のせいか敷居が高く感じられるようで、養成校の先生からも、なかなか採用してもらえないだろうと言われることもありました。
しかし、そのようなことはありません。地域支援病院として、地域の医療機関との連携にも力を入れています。
一方で経営と言う意味では、安定した病院ですので、就職先としても安心頂ける病院であると思います。
臨床工学科は臨床工学技士のできる業務全般をおおよそ網羅しています。診療科縦割りの業務ではなくて、代謝だけ、循環だけ、呼吸だけを見るのではなく、臓器関連で診る環境がありますので、よりチーム力が上がるようにしていきたいと思います。
私自身が進歩が途絶えて組織の足かせになってはいけないので、色々な学会に参加しながら、臨床工学技士のタスクシフトやタスクシェア、業務等の最新情報をアップデートしていきたいと思います。内視鏡も人数は増やして緊急対応が出来るようにし、麻酔アシスタント業務も検討しています。
どこか一つの大学病院の系列ではなく、各診療科の垣根も低く、職種を問わず各職員が連携して患者さまを診ているので、患者さまにとっても良い環境だと思います。
垣根が低い結果、他職種連携して確立した業務例
■直近の取り組み
人工呼吸器早期離脱を目的として、包括指示導入によりCEによる人工呼吸器操作を行える体制を構築。医師・看護師・理学療法士・CEによるチーム医療で早期離脱を図っています。学会で発表予定にしています。
■現在取組み中
①病棟でのバイタル測定機器(血圧計・体温計・SpO2など)データをモバイル端末を介して転送し電子カルテの熱型表に連携するバイタル連携システムを導入準備中です。
②バイタル連携システムにはEWS機能も導入しRRTコールと早期MEWSスコア化につなげるシステムも併せて構築中です。看護部が導入希望でCEが中心となり、医師・システム室・業務室(用度課)とも連携して進めています。
③最終的に医療機器管理システムを電子カルテと連携しICT化を図り、業務改善を進めています。
採用について
一次試験:書類選考とCEのみ面接官の一次面接。
面接官は科長と主任3名と参加できる業務リーダーで面接
二次試験:適性検査、専門試験(国家試験レベル)、二次面接。
面接官は5名(医師の臨床工学部部長、副部長、臨床技術部部長の3名と人事室長1名、CE科長1名)。
3~5名程度ずつの集団面接(応募人数で調整)
誠実な人を求めていきます。チーム医療を行いますので協調性も重要です。また人に同調するだけではなく、自分の意見をはっきりと言えて、メンバーの一員として参加できる人を求めています。
今いるメンバーとの相性も見ています。チームに合わない人だと、仮に個として優秀な人でも、チーム力としては下がってしまうので、チームに合う人材かどうかというのはよく見ているところです。そういう意味合いでも、現場の目で面接してもらいたいので主任や業務リーダーにも一次面接官として見てもらっています。
科長からありましたが、協調性は大切だと思っています。
あとは柔軟性のある人。これしかやりたくないとか言わずに、周りも見て仕事をしてくれる意欲的な人が欲しいです。
現在、実習を受け入れている3校の学生や、それ以外の学校からも学生が当院の選考を受けてくれています。募集を出している際は、見学等も積極的に受け入れておりますので、ぜひご参加ください。
住友病院 診療技術部 臨床工学科
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