日本の循環器疾患の最後の砦、国立循環器病研究センター病院、世界レベルの医療研究機関の病院で働く技士、技士長に聞いてみた

国立研究開発法人 国立循環器病研究センター

「国立研究開発法人 国立循環器病研究センター」は、構想から11年を経て1977年に開設。循環器疾患の究明と制圧のために設立された国立の開発法人で、国立高度専門医療研究センターの一法人(全国に6か所日本国立の専門医療施設のひとつ)。循環器病は日本人の三大死因のうちの二つ(心臓病、脳卒中)を占めており、国家戦略として循環器病の克服に向けた取り組みが推進されている。今回は、病院、研究所及び企業・大学と共同研究を行うオープンイノベーションセンターの3つの機関が入る、世界レベルの医療研究機関で働く、国立循環器病研究センター病院の井上裕之(いのうえ・ひろし 51歳)技士長と、吉田祐希(よしだ・ゆうき 26歳)技士にお話を聞いてみた。

吉田祐希 技士

Q.臨床工学技士には、いつなりたいと思ったのですか?また入職の理由は何でしょうか?

吉田 技士

母親が看護師と言うのもありまして、医療系には興味がありました。また「何か資格はあった方が良いよ」と言われており、手に職がつく仕事に就きたいと思っていました。高校生の時に、(自)卒業大学が高校へ来て職業説明会を開いてくれた際、機械を使って患者さんを助ける医療職があると聞き、そのような機械を扱えると言うことに興味を持ちまして、臨床工学部(科)のある大学へ進みました。学生の頃は、これを強くやりたいと言う思いがあるタイプではなかったのですが、高校時代の職業説明会で興味を持ったキッカケでもある『補助人工心臓装置』を扱える病院を探し『国立循環器病研究センター』に入職しました。

Q.実際に、臨床工学技士として働いてみて、今のモチベーションと将来目指すところを教えてください。

人工心肺装置や補助人工心臓装置など多種多様な医療機器を用いて体の管理(医療)が出来るという仕事が思っていた通り楽しく感じています。臨床工学技士として医療機器に携わりながら、ドクターと患者さんの間に入り治療に携わっています。勉強すればするほど、医療機器を扱うメリットも伝えられますし、そういった医療機器を使って医療が出来るのが楽しいです。また、やりがいもありますのでモチベーション維持にもつながっています。日々、しっかりと勉強し医療機器を理解した上で、医療に貢献していければと思います。将来的には、私たち臨床工学技士(機械屋)がいいと思う医療機器を臨床の先生方と一緒に使用し『最善の医療』、『チーム医療』の1つのピースとして活躍できればと考えています。

Q.吉田技士の1日のスケジュールを教えてください。

病院の就業時間は、原則、8:30~17:15です。
・人工心肺を担当する業務は、8:00~16:45
・補助人工心臓装置を担当する業務は、8:30~17:15

『人工心肺を担当の際のスケジュール』
5:30 起床
6:30 出発
7:30 到着
8:00 人工心肺の準備
8:30 部の朝礼、朝礼終了後人工心肺の準備
9:00 オペ室(人工心肺業務)開始
(昼:休憩)
16:00 オペ室業務終了、片付け
16:45 本日業務終了
*長時間の手術 16:45以降 オンコール者に交代

残業は、概ね20~30時間程度(只、寒い時期は若干多くなります)。
4年目の吉田技士は、オンコールは月6回程度。
当直、夜勤などの変則勤務もあります。

Q.どんな方に臨床工学技士の仕事はお勧めしたいですか?

看護師さんや理学療法士さんみたいに、直接、患者さんとコミュニケーションを取るような仕事ではありません。コミュニケーションに苦手意識がある方でも、自分に『何ができるか?』『どうすれば改善できるか?』などなど色々と考えられる人にはお勧めで出来ると思います。勉強すればするほど、やれる事が増え楽しい仕事です。現在、将来の仕事に悩んでいる人、迷っている人で機械が好きな人には、先ず、臨床工学技士の仕事がどんな仕事、どんな内容か?調べて頂き知って欲しいです。機械だけじゃなく、臨床も出来る仕事です。『工学系に興味のある方』でも『臨床(医療)に興味のある方』どちらの方々にも、やりがいのある仕事なんじゃないかなと思います。

井上裕之 技士長

Q.学生さんの視点で貴院の魅力は何でしょう?

井上 技士長

国立循環器病研究センターは、循環器に特化した専門施設です。年間の人工心肺症例数は約800例と国内でも屈指の症例数を誇っています。臨床工学技士を目指している方、臨床工学技士で循環器領域に興味のある方々が研修・見学に来られ、循環器領域の全般の知識・技術を身に付け、その後、体外循環(人工心肺)、補助人工心臓、不整脈領域のスペシャリストとして、専門性の高い人材として活躍しています。ただ、総合病院ではありませんので循環器領域以外に関しては、劣るところもあろうかと思いますが、大変、魅力のある施設です。

当センターの特徴、魅力ですが、国内最高峰の循環器専門施設を自負しています。国内の循環器疾患の『最後の砦』と認識し、常に緊急(断わらない)体制で業務に向き合っています。脳・心臓疾患などは、1分1秒を争う疾患ですので、病院棟屋上にあるヘリポートを活用し近畿、東海、中四国から救急搬送、受け入れも多くあります。稀な疾患やかなり重症な心疾患などは、北海道から沖縄まで全国各地から運ばれてきます。もう1つの魅力ですが、多くの症例を行っている施設ですので、メーカから最新の医療機器の提供もあります。なので、最新医療機器を使った症例に触れる環境にあると思います。

Q.入職後(4月1日~)には、どう言う順番でお仕事を覚えるのでしょうか?

まずは、透析室に入ってもらい透析業務・治療を覚えてもらっています。概ね3か月程度で知識・技術の到達度確認(試験)を行い、合格した者から次のステップ(人工心肺業務)へとステップアップしていく流れです。1年目での人工心肺業務としては、主に準備等の補助業務が出来るようになるのが1年目の課題です。
2年目以降は、人工心肺の補助業務プラス心筋保護装置の操作➡人工心肺装置の操作へと移行していきます。

Q.2年目終了(3年目以降)は、希望業務につけるのでしょうか?

年に2回程度のヒアリング(面談)を実施し希望の業務を聞き調整しています。しかし、どうしても業務を滞りなく実施することを優先し配置しますので希望に応えられないこともあるのではないかと感じています。吉田さんには、現在、人工心肺業務に従事してもらいながら、術中のVAD業務も覚えてもらっています。勿論、透析業務も行ってもらっています。後、当院はスペシャリストを育成する施設だと考えています。知識・技術を身につけた上で、人工心肺、補助人工心臓、不整脈領域のスペシャリストを育成していきたいと考えています。

Q.タスクシフトについてどのような連携を取られているのでしょうか?

タスクシフトに関しては、各施設でも悩み・検討している課題かと思います。当院においても、各診療科や部門から多くの要望・依頼を受けています。要望・依頼、課題を相互に問題提起しながら、診療科と擦り合わせながら進めています。益々、臨床工学技士の期待、必要性を感じています。

Q.循環器病の手術が多い病院ですが、臨床工学技士の配置は、どのようになっていますでしょうか?

現在のスタッフ総勢ですが27名(内訳:男性17名、女性10名)です。手術室は12室/カテ室は9室あり、心臓血管部門(成人チーム、血管チーム、小児心臓外科チーム)3チームで編成されています。緊急症例も多く、人工心肺症例も1日、並列で5~6症例することもあります。そのため、手術室に10~15名のスタッフを配置、補助人工心臓に1~2名、心カテや不整脈業務に5~8名、集中治療業務2~3名、透析業務3~4名のスタッフ配置、日々23名程度のスタッフを各領域に従事しています。

Q.男女比、実習や見学受け入れ状況について教えてください。

男女比ですが、男:女=17:10です。大学や養成校でも女性比率が増えていると聞いています。概ね、大学や養成校の比率に近いと思います。見学に来られる方も、男女半々?最近では、女性の方が多いように思います。実習は受け入れていますが、現在、コロナ禍であり、一時中止しています。見学に関しても同様です(受入れ校:5校です)。余談ですが、当院で実習終了し、当院に憧れ入職したスタッフも数名います。

 

取材協力

国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 臨床工学部
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