臨床工学技士が仕事で扱う医療機器は、多数。その中で3つの主な医療機器を解説!経験や学習が必要であり、日々の点検が重要な医療機器です。

臨床工学技士の仕事で扱う機器を例に挙げると透析装置、呼吸器、人工心肺装置、輸液ポンプ、シリンジポンプ、除細動器などがありますが、これはほんの一部であり、実際は、これ以上に多くの機械、装置を扱います。そして、これらの機械や装置は基本的に患者さまに使用する機器です。そのため、臨床工学技士が扱う機械、装置は操作ミスや故障による誤動作が起こると患者さまの命に関わるものが多いため、扱うのに経験や学習が必要なものや、日々の点検が重要な機器ばかりです。今回は、臨床工学技士が仕事で扱う3つの主な機械、装置についてまとめました。

臨床工学技士が扱う3つの主要機器とは?

人工心肺装置

まず、人工心肺装置についてです。人工心肺装置は、心臓の手術の間、心臓と肺の代わりをするために必要な装置です。心臓は、全身に血液を送ることが主な役割ですが、その送り出すという作業のなかにも、いろいろな役割があります。その中の一つとして、肺に血液を送るという重要な役目もあります。心臓から送り出された血液は酸素を全身の組織に渡しながら戻ってくるため、心臓に戻ってくるときには血液中の酸素がほとんどない状態になっており、心臓に戻ってきた血液は、右心室から送り出され、肺で酸素をもらって左心房に帰ってきます。ですが、心臓手術の場合、右心房の手前(上下大静脈)から血液を脱血し、左心房のあと(上行大動脈)に送血するため血液は肺を通らないことになります。そのため、人工心肺装置には、人工肺という膜を介してガス交換を行う装置がついており、血液が肺を通らなくても血液を酸素化できるような仕組みになっています。

人工心肺装置には3〜4つのポンプがついており、全身に血液を送るための送血ポンプ、術野で吸引した血液を回収する吸引ポンプ、術野の視野を保つために使用されるベントポンプ、それに定期的に冠動脈に栄養を送るポンプがついており、術中これらを臨床工学技士は操作しています。このように臨床工学技士は人工心肺装置の準備から操作までを行い、心臓手術の間、患者さまの心臓の代わりを行うために集中して操作に専念しています。

透析装置

次に、透析装置についてです。透析装置とは、腎臓の代わりをする装置です。腎臓は24時間、365日絶えず働いていますが、何らかの疾患が原因で腎臓の働きが落ちたり、機能しなくなった時に、人工透析装置によって腎臓の働きの代用を行います。人工透析装置は、ダイアライザに透析液を送り、血中の電解質の調整や血液から余分な水分を除水、老廃物を除去するために使用します。人工透析装置の内部には透析液を送り出すためのポンプや、除水のコントロールをしているポンプなどが、チューブで連結されており、複雑な構造をしています。そして人工透析装置は必ず、密閉された状態でなければなりません。もし、装置内の連結部分やポンプなどの部品のどこかにほんのわずかな隙間でもあると、透析液が漏れてしまい、密閉が壊れ、漏れ出た分は体から除水されてしまうため、血液から設定された水以上の除水をしてしまい、急激な血圧低下により患者は、ショック状態になる危険があります。そのため、臨床工学技士は治療中や、治療前後に人工透析装置の点検を行い、装置内から液漏れがないかや動作に異常がないかなど点検し、患者さまに安全な医療を提供しています。

人工呼吸器

次は人工呼吸器についてです。人工呼吸器は、何らかの原因によって呼吸状態が悪くなった患者に使用する機器です。一般的に人工呼吸器というと気管に管を挿入することによって、患者の呼吸を補助する機器のイメージがありますが、COPDなどに使用されるマスクタイプの呼吸器などもあります。呼吸器は、全く自発呼吸のない患者から自発はあるが、呼吸努力が弱い患者など、さまざまな状態に対応するため、色々な機能や患者の呼吸状態を把握するためのセンサーなどがついています。患者に自発呼吸器がある場合、呼吸器は患者が息を吸ったタイミングで肺に空気を送り込まなければなりません。患者の呼吸に同調していないと、患者は息を吐きだせず、窒息の危険があります。そのため、呼吸器にはトリガーと呼ばれる機能がついており、この機能により患者の呼吸に同調して空気を患者に送り込むことができます。臨床工学技士は、点検を行い、トリガーがきちんと動作しているかなどもチェックしています。その他にも、呼気の二酸化炭素を測定するETCO2センサーがついている呼吸器もあります。ETCO2とは呼気中の二酸化炭素のことで、患者の呼吸状態を把握するためにとても重要な値になります。

しかし、このセンサーがなければ、動脈穿刺行い採血後、動脈血のガス分析を行い血中の二酸化炭素濃度を見るしか方法がなく頻回に動脈穿刺を行うのは侵襲的で患者に負担がかかります。このセンサーにより非侵襲的に常時、呼気の二酸化炭素濃度を測定できるため、動脈穿刺という負担をかけることなく患者の二酸化炭素濃度を測定できます。このように呼吸器は患者に空気を送り込むだけでなく、患者の呼吸状態を把握するための機能やセンサーが組み込まれており、操作だけでなく、これらが正常に動作しているかをチェックするのも臨床工学技士の仕事となります。以上、主な臨床工学技士の扱う機器について、まとめました。臨床工学技士は機器の操作だけでなく、患者さまに安全に医療を受けていただくために機器を使用していない時、正常に動作するかなどの保守業務も重要な仕事となっています。