臨床工学技士になるためには、臨床工学技士国家試験の受験資格を卒業後に得ることができる学校に進学する必要があります。この学校には大きく分けると、大学、専門学校の2種類があります。これにより、在学期間が3年、4年と変わってきます。また、一概に臨床工学技士の養成校といっても、文部科学大臣、都道府県知事が指定した臨床工学技士養成校とそうでないものも存在しており、今回は私が卒業した文部科学大臣、都道府県知事が指定した臨床工学技士養成校である大学でどのような勉強を行っていたのかを紹介します。
臨床工学技士の専門学校ではどんな勉強をするの?
1年次
まず、養成校での最終目的は臨床工学技士国家試験に合格することです。1年次では臨床工学に必要な数学、物理学、情報科学などの工学の基礎分野の勉強、生物学、解剖学などの医学の基礎分野の勉強や、臨床工学技士の仕事が実際にどういったものかを学びます。この過程で、臨床工学技士国家試験に合格するための基礎や臨床工学技士の業務イメージを身に着けていくことができます。この工学と医学の基礎を通して医療人の土台を構築していきます。これは専門学校でも同様のことを1年次に行っています。
2年次
つぎに、2年次では医療機器の原理を理解するために医学系、工学系の科目をバランス良く学んでいきます。この段階から医療機器の原理を学び始めるため、1年次ではでてこなかったような、具体的な医療機器の名前が現れ、臨床工学技士に、必要不可欠な基礎知識を学び始めます。また、大学では電気回路を学ぶための工学系の実習も始まり、専門学校に比べ、より工学的な内容を学んでいきます。一方専門学校では1年後に国家試験ということもり、臨床工学技士国家試験の合格指標ともされている第2種ME技術実力検定試験の受験を行う時期でもあり、この試験で不合格の場合はこの段階で留年が確定する学校も存在します。
3年次
つぎに、3年次では、医療機器の扱いに関する専門知識について、実習を通して実践的に学習を行っていきます。この時期から学内での実習が本格的に始まっていき、実際の医療現場で、使用される医療機器を直接使用し、実際の業務イメージを構築していくことで、現場で必要となる知識や技術を実践的に修得し、専門的な知見を得ていきます。臨床工学技士としての医療機器の知識を得るほかにも、医療人として社会に出るためのマナーや、学内実習を通して一人ではなく、グループで学びを通していくことで、将来現場に出たときに、必要なコミュニケーション能力も得ることができます。大学では、この時期に、第2種ME技術実力検定試験が合格できるように勉強を行っていきます。専門学校では臨床工学技士国家試験が控えているため、医療機器の扱いに関する専門知識についての実習はもちろん、実際の医療現場で行う臨床実習や国家試験対策、就職活動などがあり、大学に比べて特に多忙な1年になります。
4年次
4年次では、学んできた知識や技術を臨床実習で実践し、卒業研究を行います。大学生は4年間の集大成として挑む1年で、臨床実習、就職活動、卒業研究の3つの目的を着実に達成していき、最終的に臨床工学技士国家試験に合格することが目的となる1年です。特に、臨床実習は実際の医療現場に行き、学校の先生ではなく現場の臨床工学技士から直接指導される貴重な経験です。つぎに、就職活動は他の一般大学とは異なり、複数内定を得ることや内定後に辞退するということは養成校としての信頼を失うため、禁止行為となっています。そのため、1回の内定で就職先を確定させる必要があるため、自分が行いたい業務がその病院に存在しているかなどをしっかりと厳選し、後悔のない就職先を選定することが重要です。
しかし、臨床工学技士は需要がまだまだあるため、就職できないという人はいないというのが現状です。また、卒業研究は、研究課題の解決に取り組み、その内容についての発表を行うもので、これは抄録の作成やパワーポイントを用いた発表を通して、研究の流れを経験することで、就職後に生かせる場面も多々あり、専門学校ではあまり経験できない内容を全員行える大学ならではの貴重な経験です。11月ごろからは本格的に国家試験対策もあり、生徒や先生含めて一丸となって一つの目標に向かって努力することで、ゴールを目指していきます。
以上が、基本的な臨床工学技士になるための養成校での入学から卒業までの流れです。養成校によってはこの一連の流れの中に独自の特色が存在し、この特色次第では唯一無二の経験を得ることができます。実際私も学校独自の経験を得て、人生観が変わる、非常に有意義な経験ができました。就職率や合格率という点も養成校を選ぶうえで重要な選択肢ではあると思いますが、学校独自の経験というものが養成校を選ぶ重要な指標になると思います。このほかにも養成校を選ぶ基準は様々あると思いますが、この養成校の選択は、将来臨床工学技士になるにあたって、将来を左右する重要なものとなるため、自分に合う養成校を見つけていくことが重要です。