理学療法士の立場から、臨床工学技士に気を付けてほしいことをお話しします。臨床工学技士の役割は、血液浄化装置、人工呼吸器、人工心肺装置といった、生命維持管理装置を安全に操作・管理することであるという認識です。その中で、理学療法士と臨床工学技士の関わりは、人工透析中のリハビリテーションです。人工透析中のリハビリテーションはシビアであるため、私が勤めている病院では透析後にリハビリテーションをすることを推奨しています。私が勤めている病院以外の病院でも、透析中のリハビリテーションをおこなっているところは少ないと考えます。では、理学療法士と臨床工学技士との関わる時間はどれほどあるでしょうか。ここではあくまでも私が勤めている病院での話をさせていただきます。私たち理学療法士が、透析室に入る機械は透析後に、電子カルテ内に管理されていない情報を見るときのみでした。概ね、電子カルテ内で透析中の状態は把握できます。そのため直接、臨床工学技士にコミュニケーションをとりに行くことはほとんどないに等しいです。
臨床工学技士と理学療法士の連携に必要な事とは?医療現場の課題
上記からチーム医療が推奨されている現在、私が勤めている病院では理学療法士と臨床工学技士との関わりが薄いように感じます。理学療法士の業務を臨床工学技士が把握していない、臨床工学技士が理学療法士の業務を把握していない、その分離した業務形態が患者の運動機能向上・維持を妨げていると考えます。理学療法士の立場から、見て多職種への理解、そしてコミュニケーションが重要であると考えます。多職種との関わりが薄くなってきている今、多職種への理解を深めるための勉強会等も、減ってきているように感じます。オンラインを活用した勉強会で、臨床工学技士がどのような視点をもって機器を扱っているのか、理学療法士を含めたリハビリテーションに対する疑問や、関わり方の提案などを行っていってほしいと思います。お互いがディスカッションできる場を共に作っていくことも必要であると思います。その連携が、患者様の予後、人生に影響を与えるのではないかと考えます。腹膜透析選択している患者は月に1回程度の通院であるところ、血液透析を選択している患者は病院や施設に週3回通い、1回約4時間程度の時間を費やして血液の浄化を行います。そのため透析患者は通院時間も含め、1日の内の大半を透析時間に費やします。患者の状態によっては、4時間以上時間を費やすこともありました。
透析中は常時臥床状態、しかし臥床期間が長いと廃用が進みます。廃用が進むことで、筋肉量や心肺機能の低下が生じます。患者の運動機能の維持・機能維持による転倒予防を、理学療法士を含むリハビリテーション科は、担っています。そのため日々の運動、リハビリテーション科によるストレッチや有酸素運動が必要になります。ですが、透析日の理学療法を実施する時間の確保は困難であると感じます。多くの患者は、透析後の疲労感が強く、運動を拒む患者もいらっしゃいます。そんな患者にリハビリテーションの必要性を促すことは難しい場合が多いです。透析を必要とする患者は糖尿病が原因の方が多いですが、Ⅱ型の糖尿病患者の多くは、栄養士指導内容を遂行できない方が多いです。そのため、糖尿病性腎症となり、透析に至るのです。運動も同様に、リハビリテーションを促しても運動を遂行できない方が多いように感じます。特に高齢で、認知症を呈している患者は、疲労感を理由に運動を強く拒みます。私たち理学療法士は、透析患者に対して、運動プログラムの立案、負荷量の調整は行えます。しかし根本的な疲労感を調整することは困難です。しかし、人工透析を実際に実施している臨床工学技士には、その点を考慮した関わりができるのではないかと考えます。臨床工学技士には私たち理学療法士ができない、透析時間の調整を図ることで疲労感の軽減に努めていってほしいと思います。上記では透析後のリハビリテーションについて記載しましたが、下記に透析中のリハビリテーションについても記載します。
医療事故を未然に防ぐ為に臨床工学技士が心がける事
透析中にリハビリテーションを行う利点として、透析中の足がつることや血圧低下の頻度が少なくなります。そのため透析中のリハビリテーションの必要性もあるでしょう。透析中のリハビリテーションの際は、行える施術や運動は制限されます。その中で理学療法士が注意することの一つがシャントです。巡回の際には、シャント側の上肢の固定状態の確認をしていただく必要があると感じています。機器に関しては、理学療法士は知識不足です。機器の理解がある臨床工学技士からの注意喚起も私たち理学療法士には必要です。お互いが知らないことを理解して、声掛けをしていくことがなによりも気を付けてほしいことだと感じています。医療はチームです。チームはどの職種が抜けても成り立たないと感じています。そのことをお互いが周知した上で、気を付けてほしいことを今後も共有していけると幸いです。