臨床工学Q&A教室[回答]2023年7月分

Q1.新規業務拡大方法について

[質問者]koyukiさん(臨床工学技士)

質問者質問者

地方病院で働いている臨床工学技士です。

新規業務拡大方法について質問です。

様々な背景があり施設ごとに業務の新規参入の形態は違うと思うのですが、業務を新たに拡大する際に、拡大が必要な領域に自分から入ってしばらく業務負担が増えるのを覚悟したうえで業務を拡大するのか他の職種から、業務拡大の意見が出るのを待ち、人数を増やしてから業務を拡大していくのかどちらの方がよろしいでしょうか?

人数の増やし方にもつながり、なかなか正解というものはないと思いますが、ご意見有りましたら、よろしくお願いいたします。

A1.北本技師(聖隷浜松病院)の回答

北本技師(聖隷浜松病院)北本技師(聖隷浜松病院)

拡大が必要な領域に自ら入ることをお薦めします。

理由はやはり、自発的に行動する方が前向きに取り組めると考えます。自分たちが実施したいことから取り組めるので優先順位も主導できます。逆に他職種から言われて入ると『やらされている感』ができるのではと考えます。

また、取り組みたくない業務から選択され、スタッフのモチベーション低下にもなるかもしれません。

参入にあたり、人数を確保し望むことができれば業務拡大も実施しやすいかと考えます。業務拡大の機会があれば、それを逃さず参入し対応することでスタッフ数も結果的に増やせる可能性が高くなると考えます。

A1.高倉技士(亀田総合病院)の回答

高倉技師(亀田総合病院)高倉技師(亀田総合病院)

どのような業務拡大か分かりませんが、

① 安全性、収益性などに関係するのであれば早急に取り組むべき内容です。

② ①を除く安易な業務拡大は避けた方が良いでしょう。なぜかと言うと良かれと思い、一度始めた業務を人手が無いから途中で止めてしまう事は避けた方が良いでしょう。

どこの部署も人手不足でも業務を行っています。CEが人員不足に陥ったから新規業務を途中放棄すればCE信頼が無くなります。

よって①を除けば人員を確保してから始めるのが良いと思います。3年後の業務がどのようなっているのか、また人材確保の目途はあるのか総合的に判断し業務拡大してください。

Q2.プログラマからの印刷物の保管義務について

[質問者]はい。CEパパです。(臨床工学技士)

質問者質問者

ペースメーカのプログラマからの印刷物は保管義務ってありますか?

現状、印刷した物をカルテに添付していますが、紙カルテなもので溜まっていってしまいます。診療報酬の欄には、添付または記載なのでカルテに抜粋内容の転記をすれば印刷物は不要ですかね?

「カルテなどの診療録は5年間、レントゲンフィルムなどの診療記録物は3年間」とお聞きしますので、印刷物の保存は3年で、転記した場合、診療記録物はなくなるので、診療録として保存期間は5年間になるのでしょうか?

A2.北本技師(聖隷浜松病院)の回答

北本技師(聖隷浜松病院)北本技師(聖隷浜松病院)

プログラマからの印刷物は貴重な情報源になりますが、印刷物は病院の中で規定できると考えます。

病院として、印刷物を診療記録として取り扱うかどうかです。

診療記録として取り扱わなければ保管の義務はないと考えます。電子カルテや植込みデバイスのデータ管理があるといいのですが、紙カルテの際は情報が何もないのは困りますので、基本は転記しておく必要はあると考えます。

A2.高倉技士(亀田総合病院)の回答

高倉技師(亀田総合病院)高倉技師(亀田総合病院)

診療報酬点数表の医学管理等でB001:心臓ペースメーカ指導管理料では「計測した機能指標の値及び指導内容の要点を診療録に添付又は記載する。」ですから、診療録5年間の保存になります。

紙カルテの場合に添付は嵩張りますが、「要点」を添付又は記載となっていますので重要項目かつ要点のみを添付すればか嵩張り方が違うと思います。それでもなお問題であれば測定記録の要点を診療録に記載すれば嵩張りは無いですね。

仮に計測値の測定記録用紙だけ5年廃棄でも良いし、5年経過した全診療録を廃棄しても問題はありません。あとは事務長?判断で保管期限を決めれば良いと思います。患者によっては何十年も治療を続けている人もいます。法的に5年だからと言って一律5年経過した診療録を廃棄するのは寂しですね。

Q3.記録の保管義務について

[質問者]やさぐれパンダ@薬中.OD(臨床工学技士)

質問者質問者

透析業務をされている同業者の方々へ質問です。

当院ではRO装置の稼働履歴を毎日記録しています(例:供給圧力、ポンプ圧力、純度、透過水量、回収率、排水量、軟水や残留塩素チェックの記録も)。

以前の職場もやってましたが、記録に保管義務はありますか?

あるのであれば何年分ですか?

A3.北本技師(聖隷浜松病院)の回答

北本技師(聖隷浜松病院)北本技師(聖隷浜松病院)

保管の義務として、

”定期点検計画書,点検報告書,修理報告書などの記録と,修理業者の修理及び試験の記録の保存期間として 3 年もしくは有効期間に1年を加えた年数と義務付けられており(薬事法施行規則第 190 条)、これに準拠すること” ※

が望ましいと考えます。

医療機能評価など受審の際も3年間は必要になるかと考えます。今回のお話は日常の点検記録ですが、

”日常点検・定期点検を行った際は、機器ごとに記載された報告書を保管する。なお、保存期間は薬事法に準拠し,3年もしくは有効期間に1年を加えた年数とする。” ※

※(公社)日本臨床工学技士会 医療機器管理業務指針検討委員会「医療機器管理業務指針」より引用

A3.高倉技士(亀田総合病院)の回答

高倉技師(亀田総合病院)高倉技師(亀田総合病院)

日本透析医学会では「測定結果などの記録書類を作成し,診療録に準じて保存されている」と掲載されている。診療録5年保存

透析液清浄化ガイドライン((公社)日本臨床工学技士会)は、透析療法における安全性 担保のための遵守事項として、粉末透析液の溶解や透析液原液の希釈及び装置の洗浄・消毒に 用いる透析用水について、化学物質の管理基準値(最大濃度)未満に管理することとしています。水質の確認は年1回以上行い、測定結果を文書で最低5年間保管することとされています。

Q4.法定の保管物・期間について

[質問者]フォリスタビズ編集部

forista.biz編集部forista.biz編集部

意外と知られていない注意すべき保管物とその期間の例などありますでしょうか。

また保管期間を満了した保管物(診療録、診療記録物)は、期間満了後に即時廃棄するのでしょうか。

それとも、貴院では棚卸のような記録の廃棄のサイクルというものがあるのでしょうか。

A4.北本技師(聖隷浜松病院)の回答

北本技師(聖隷浜松病院)北本技師(聖隷浜松病院)

診療記録の保存期間は5年間と義務付けられています(保険医療機関及び保険医療担当規則第9条)。

この「5年間」には注意が必要で、上記担当規則第9条では、

”保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあっては、その完結の日から五年間とする。” ※

とされています。

診療日から5年ではなく、「完結の日」から5年間となります。

「完結の日」については明確な定義がありませんが、完治していなければ?カルテの保管期間は5年以上継続することにもなります。多くの施設でカルテを廃棄している施設はないかと考えます。当院も最低でも10年以上は保管しています。

医療機器に関しては、法定耐用年数と医療機器の償却期間が多くの施設で同一期間に設定されます(施設により異なる可能性はあります)。

その期間は最低でも病院は保管していると考えます。

万一、償却期間を待たずに破棄する際は、資産破棄の手続きなどが必要となり手続きが煩雑となります。

破棄した医療機器の保守記録などは、医療機器を使用した患者で不具合が発生したと報告を受ける可能性があるので通常の医療機器は最低でも5年間、保管しておく必要があるのではと考えます。

※電子カルテの保存期間と医療機関における文書保管について | 【セコム医療】(https://medical.secom.co.jp/it/karte/column/post-5.html)より引用

A4.高倉技士(亀田総合病院)の回答

高倉技師(亀田総合病院)高倉技師(亀田総合病院)

医師法で最終記載日から診療録は5年
医療法施行規則:指定再生医療等製品 使用した記録20年
特定生物由来製品  使用した記録20年 輸血施行はここに該当
その他麻薬関係も記録保存が必要です。

保管期間を満了後は基本廃棄していますが、電子カルテに変わり場所をとらないので長期保存でも良いと思います。また小児から診療を受けていたが、最終診療から5年過ぎたから廃棄は良い事ではないと思います。

当院で治療を受けていた患者の診療録はは死亡するまで保存していた時もありました。しかし死亡確認は現実的ではないので20年経過していると廃棄します。

 

 

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