Q1.臨床工学技士が学士・修士を取得する方法について
[質問者]匿名希望さん(臨床工学技士)
専門卒の臨床工学技士が学士、修士を取得するためにお勧めの方法、最短の方法を教えてください。
A1.高倉技士(亀田総合病院)の回答
勉強には年齢は関係ありません。
社会人を経験してから必要性を感じた者が再教育を受けることは素晴らしい事です。是非学位を取得してみてください。
できれば博士を取得することをお勧めします。大学の教員になるのなら必須です。
教育現場でなくても博士を取得していれば科学研究費助成の申請ができます。
いろいろと視野が広がり研究にも力が入ると思います。
入学は修士課程のある大学院に入学することですかね。
社会人枠を設けている大学もあり、比較的入学しやすいように思えます。
通信制大学院もあります。
最短といっても2年間は掛かります。
働きながら授業料を払うのは少々大変ですが価値はあります。
是非とも博士を目指してください。
A1.北本技師(聖隷浜松病院)の回答
専門学校卒で学士がなくても、大学院入学に見合った同等の学力があると認められた方であれば入学が可能です。
また社会人枠などがある大学院では、経験年数(例として3年以上)なども条件となります。具体的には学会発表や論文投稿などが評価されれば、大学院への入学資格を得ることができます。
ただ論文が原著である必要があったり、投稿先がインパクトファクターのある学術団体であることなど、国公立・私立大学院によりハードルは異なります。
最短は専門学校卒後でも、論文などの条件が整えば、博士を取得するために大学院博士後期課程への入学が可能です。大学院博士課程後期は医学部系では基本4年間(最短で3年間)となります。
私自身も、この方法で博士課程後期を卒業し博士を取得しました。
Q2.業務固定のスペシャリストと業務のローテーションについて
[質問者]匿名希望さん(臨床工学技士)
聖隷浜松さんも亀田総合さんも、入職から、業務固定のスペシャリスト業務とお聞きします。
若い時の方が吸収も早いので、全業務ローテーションで、呼吸循環代謝の基本的な日常業務を習得させてから、スペシャリスト業務を習得させる教育プログラムの方が理にかなっていると思います。どのようなお考えで、一業務特化の教育をされているのでしょうか。
たまたま、一業務特化のイメージが強いだけで、ローテーションのプロフェッショナルみたいなポジションもあるのでしょうか。
A2.高倉技士(亀田総合病院)の回答
臨床工学技士の業務は幅が広く全業務をローテーションするのは時間の無駄と考えています。
1、2年後にローテーションしても全てが中途半端になると考えております。
「できる」と「やれる」では違います。
3年目頃には専門資格を取得し仕事が面白くなり、4年目にローテーションを伝えると拒否されます。
よって経験からですが5年以上の実績があれば、次の部門へローテーションするようにしていますが、ローテーションの判断は、最終的に本人が決めます。また例外もあり1年未満でも諸事情があれば移動を行っています。
1年目にどこへ配属されても基礎医学、薬学、医療設備、共通機器(人工呼吸器、心電モニタ、輸液ポンプなど)は勉強できます。
5年後にローテーションしても、移動先で専門的な業務だけを勉強すればよいので新人より成長が格段に早いです。
40代頃には専門的な業務に就き、その後は臨床以外のマネージメントを勉強していくようにしています。
若い頃の経験は大切ですが10年も間が空くとは「浦島太郎」状態です。
どの部署に居ても失敗の経験は無駄にはなりません
A2.北本技師(聖隷浜松病院)の回答
聖隷浜松病院では、必ず最初に手術室業務を取得します(透析など他の業務に配置はしません)。
手術室の中でも、ひとつ専門業務(誘発電位、インプラント、眼科など)をまずは担当します。
その理由は透析から開始すると新しいことに取り組む姿勢が維持できないことが当院では発生しました。若いスタッフの内に多くの業務を経験して貰いたいので、専門固定するメンバーはよっぽどその業務を専門的に勉強し対応しているスタッフだけを人選することになります。
新人は手術室業務と専門を一つ覚えた後、本人の希望と業務の状況に合わせ、新しい業務を追加していきます。そのため、スタッフによっては多くの業務を担当しローテーションしているスタッフ(手術室、内視鏡、透析、麻酔補助、周産期、病棟などの組み合わせ)もいれば、最低限の手術室と病棟業務だけのスタッフもいます。これは本人の能力やキャパにもよります。
一部固定メンバーは透析のみで、それ以外にチームとしてICU・呼吸器・カテーテル・不整脈・人工心肺チームが15名程度でローテーションしています。基本は一部の固定メンバー以外は専門性の高いスタッフでも業務比率は最大5割程度を目指しています。ただ業務上専門性の高いスタッフは、一部偏り気味に専門業務を実施している状況でもあります。
Q3.医療の発展とその際の臨床工学技士の業務について
[質問者]匿名希望さん(臨床工学技士)
ブタの腎臓移植など、医療の発展と共に、透析など臨床工学技士の主要業務が無くなるのではないかと言う心配があります。
どういった業務は淘汰されて、どういう業務が増えるとお考えでしょうか。
その際、臨床工学技士は、大学病院のような専門性の高い分野で必要とされるのか、またはジェネラリストとして看護師でやれる業務に侵食すると考えますでしょうか。
また臨床工学技士は、こういうポジションにあるべきだというようなお話があれば、お聞きできればと思います。長文、失礼いたしました。
A3.高倉技士(亀田総合病院)の回答
臨床工学技士の業務が淘汰されることは無いでしょう。もし淘汰されるのであれば病院は廃業です。世の中が診療所レベルで治療可能になれば素晴らしいことです。
これは予防医学が進み人類は病気にならいと言う事で、外傷などを除けば罹患しても比較的の簡単な治療で済むこと言う事になります。これが現実になれば人類は幸福になります。その時は失業しても仕方がない事です。
究極の病気克服は「脳移植が可能」、「ウイルス根絶」になったとき生命科学の集大成と言えるでしょう。
臨床工学技士が看護業務に侵食する暇は無いと思います。
まだまだ臨床工学技士としてやらねばならぬ事は沢山あります。現状に満足することなく更なる目標に向かって努力することで、業務が淘汰されるという心配はなくなると思います。
A3.北本技師(聖隷浜松病院)の回答
ブタの腎臓移植も患者さんにとって必要な発展で普及されれば透析は縮小されることが予想されます。
しかし、現時点では動物実験の段階で生存も確実性がないことから当分先の話だと考えます。
近い未来としては、医療機器が使用されるその最前線で臨床工学技士は活躍できますので、当面は大丈夫かと思います。
ただ、いろいろと効率化や省力化がDXで進みますので透析の担当従事業務も効率化されることが予想されます。シャントエコーや穿刺技術、患者さんの評価など、専門性の高いスキルなどを磨き、必要とされる存在であり続ける努力は必要だと考えます。
新たな可能性の業務には是非チャレンジしてはどうでしょうか。