臨床工学Q&A教室[回答]2023年10月分

Q1.教育ラダー・認定資格について[制度]

[質問者]匿名希望1さん(臨床工学技士)

質問者質問者

教育ラダー・認定資格についての質問です。

当院の教育ラダーでは、院内ライセンスで業務を任せていただいて、業務習得の証として認定士を取得して、卒業というラダーになっています。もちろん、取得後も臨床に入りながら業務の精度はあげています。

貴院の教育ラダーと認定士の取得について、どのような制度を敷いているか教えてください。(何か1つの業務について具体的にお話いただけますでしょうか)

A1.北本室長(聖隷浜松病院)の回答

北本室長(聖隷浜松病院)北本室長(聖隷浜松病院)

素晴らしい制度をお持ちですね。

当院では当初は教育ラダーとして、Lv.0-4まである中、認定士をLv.2またはLv.3になるためには必ず取得、専門の取得をLv.4に入れていました。

しかし、認定取得のための費用補助もないことから、現在では認定及び専門のレベルに本人があるかどうかを病院独自で判断していく方向へ修正しています。認定や専門を持ったスタッフがスタッフを判断することになります。

今までは認定や専門など知識面のみの判断から実務面の判断が増えます。判断するための材料や尺度の問題はありますが知識面だけでなく、技術や医師・看護師とのコミュニケーションまで含まれるので、よりよい評価になるのではと考えます。

A1.高倉室長(亀田総合病院)の回答

高倉室長(亀田総合病院)高倉室長(亀田総合病院)

特に業務(治療)に携わる為に各学会認定資格の3つの取得を必須としています。

・透析技術認定士、
・体外循環技術認定士、
・高気圧酸素治療専門技師

これらは、治療に直結していると考えています。操作中に何かトラブルが発生した場合に臨床工学技士はだけの資格で操作している者と、認定取得の者とでは若干ではありますが認定が無いと責任を問われる可能性もあると思います。

当院では透析治療を行うのであれば3年間実務経験をさせて透析技術認定を取得させています。

その後に透析液安全管理責任者研修会の受講させるようにしています。これは診療報酬「J038人工腎臓」の留意書きの最後の文章に関連学会が示されている基準に基づき、水質管理が適切に行われていることが望ましいと記載されている。透析液安全管理責任者は研修会など履修しなければならないのは当然だか、それ以外の者でも透析業務で必要であるので思われる透析液安全管理の受講を推奨したい。

2016年透析液水基準(日本透析学会)の1章 1-8安全対策4)では①透析装置の管理計画と実施報告書を保管する。②適正使用のための研修会を開催する。③管理者との情報共有が示されている。
注)では透析液安全管理者は透析用水原水から排液までの質と安全に熟知し、かつ所定の研修を履修した者と記載されている。
よって診療報酬の施設基準から読み取ると学会基準による水質管理ができていればならない事になる。

J027 高気圧酸素治療も同様に関連学会より留意事項が示されているので、十分参考とすべきものである。と明記されているので高気圧酸素治療専門技師の取得が必要である。

学会では高気圧酸素治療専門技師を配置し管理と操作をさせなければならないと、記載されている。ここでは「望ましい」とは記載されていないので操作するには認定資格が求められているので注意してほしい。

 

Q2.教育ラダー・認定資格について[採用]

[質問者]匿名希望1さん(臨床工学技士)

質問者質問者

また中途で採用する際、資格を持っていても、実際に臨床で使えるかは別物だと思いますが、採用に際してはどのように判断されますでしょうか。

資格と経験はどのようなバランスで、選考されますでしょうか。

A2.北本室長(聖隷浜松病院)の回答

北本室長(聖隷浜松病院)北本室長(聖隷浜松病院)

中途採用者の資格については、持っているかどうかでは、当然持っている方を評価することにはなります。

実臨床でどれくらいの期間と症例数を経験しているかがポイントになるかと考えます。

どれくらいの能力があるかは実際に仕事をしてみなければ判断できないので、会話の雰囲気から感じ取るしかないですね。

A1.高倉室長(亀田総合病院)の回答

高倉室長(亀田総合病院)高倉室長(亀田総合病院)

中途採用において取得資格は参考程度にしています。資格と経験だけでは採用判断材料にはしていません。

①健康、②協調性、③MEに対する情熱を面談で感じ取り選考しています。

 

Q3.穿刺への取り組みについて

[質問者]匿名希望2さん(臨床工学技士)

質問者質問者

穿刺の上手い下手、痛い痛くないは、穿刺をした数という教育で、1日10回穿刺して3か月くらいで患者さんからも褒められるような穿刺が出来るようになりました。

貴院の臨床工学室では、上手い、痛くない穿刺を行うために、どのような教育を行っていますでしょうか。

A3.北本室長(聖隷浜松病院)の回答

北本室長(聖隷浜松病院)北本室長(聖隷浜松病院)

痛くない穿刺への取り組みすばらしいですね。

当院は穿刺のうまい下手を減らすために、再穿刺率軽減のグループを作り、患者個々のシャントについて走行や内腔の状態、刺す方向などカルテをつくります。シャントエコーも行いながら対応を検討しています。

失敗が発生した際は振り返りを行い次に繋げます。

痛くない穿刺に関しては針が入りやすい角度や針の切れ味、針先を傷つけないなど基本的なことは行っています。

A1.高倉室長(亀田総合病院)の回答

高倉室長(亀田総合病院)高倉室長(亀田総合病院)

穿刺までの教育は①座学を受け②模擬血管への穿刺訓練③指導者監視下で実穿刺をさせます。評価表を用いて評価が全てクリアできれば独り立ちの判断要素としております。

ほんの一項目ですが

4、5月 穿刺介助
6月 抜針、止血
を経て早い者は3か月、遅くとも6か月目位までに独立させるようにしております。

 

Q4.学生時の学びの時間・内容について

[質問者]匿名希望3さん(学生)

質問者質問者

大学生1年生です。半年間、色々な先輩方とお話して、ME1種、2種、心電図検定は早めに取っておくべきだと感じています。

仮に、先生方が大学1年生で丸々残り3年の時間があるとしたら「私ならどういう目的を立てる、時間の使い方をする、何を学ぶ。」など、ご指導、ご意見、御座いますでしょうか。

A4.北本室長(聖隷浜松病院)の回答

北本室長(聖隷浜松病院)北本室長(聖隷浜松病院)

ME1種、2種、心電図検定と目標を持ちクリアーしていくことは素晴らしいことだと思います。

実習前までには終わっていると実習で見る景色も変わってくると思います。

それに加え、心電図でもいいですし、透析や呼吸器、人工心肺など興味があることを勉強するのはいいことだと思います。より深掘りすると実習でももちろん役立ちますし、将来の方向性も自然と芽生えてくるかも知れません。

学生の間にできることはいっぱいあります。できるだけ多くの人ともコミュニケーションをとり、人間力も磨いて下さい。

A1.高倉室長(亀田総合病院)の回答

高倉室長(亀田総合病院)高倉室長(亀田総合病院)

ME2種、1種に限定します。心電図検定は心電図に特化してしまうので、就職後に必要があれば取得するとよいと思いますが、考えに個人差があるので分りません。

ME2種、1種は医用工学を幅広く網羅しているので学生が勉強するには丁度よいと思います。

生涯教育を考えれば早く資格を取ろうと思わなくても良いのでは。実際に医療現場に出て何が足りないか分かった時点で一つ一つ資格を取ればいいのではないでしょうか。

なお、色々な資格をたくさん持っているような資格マニアは要らないです。大学生であれば、友人を多く作ること。時間を無駄にしないでME以外のことにも興味があれば何でも勉強してみる

「好きこそ物の上手なれ」無駄な勉強は何一つありません。

 

Q5.後方支援病院に臨床工学技士が不在の場合の医療機器管理について

[質問者]匿名希望4さん(臨床工学技士)

質問者質問者

貴院では、患者さんをお任せする後方支援病院に臨床工学技士が不在の場合、医療機器の管理は、どのようにされていますか。

当院では、後方支援病院の医療機器管理も業務とすることがあります。(後方支援病院に臨床工学技士がいない場合、機器が無く貸し出しになる場合など)

A5.北本室長(聖隷浜松病院)の回答

北本室長(聖隷浜松病院)北本室長(聖隷浜松病院)

当院からの患者さんを受け入れてくれる病院に臨床工学技士がいない際は、当院と提携し臨床工学技士を派遣するかどうかになります。

例えば浜松市リハビリテーション病院に臨床工学技士がいないため、当院から1名派遣し手術や医療機器の立ち会いにも対応しています。ただし、病院間で費用の契約を行い派遣しています。

それ以外にも検診センターやサテライトの病院に臨床工学技士を派遣する業務も聖隷グループ内では実施しています。

クリニックや医院では、提携が難しいので医師看護が対応することがほとんどとなります。

医療機器代理店やメーカーの協力を得るなど各施設によるかと思います。

病院外のことはなかなか難しいですね。これからは在宅などでも臨床工学技士の対応が課題になるのでどう取り組むか検討が必要です。

A1.高倉室長(亀田総合病院)の回答

高倉室長(亀田総合病院)高倉室長(亀田総合病院)

後方支援病院が保健所への届け出上で貴院と違う医療施設であれば、医療機器管理は現実的には行えません。

CEが不在であれば、貴院と後方支援病院側とで協議し機器管理の業務委託を受けるのが良いのか? 事務長に相談してみてください。

施設長が違う後方支援病院に臨床工学技士が居なくとも、他職種の人が行えば良いことです。医療機器安全管理責任者の配置は医療法規定されています。