【臨床工学技士インタビュー】兼務体制による業務間フォロー体制を行っている市立室蘭総合病院。臨床工学技士の増員・業務拡充を行い、医師の働き方改革および看護師不足による業務衰退(症例件数や患者数の制限)を出来る限り無くす為の取り組み!

市立室蘭総合病院

明治5年に前身である診療所を元室蘭に開所して以来、北海道西胆振(にしいぶり)圏域の基幹病院として室蘭市をはじめとする近隣市町村住民に高度医療を提供しています。また、平成9年6月には現在地に移転新築し、「患者にやさしく、風土にふさわしい病院」を建設理念として近代的機能を有した病院として、地域を代表する「市民病院」として生まれ変わりました。

西胆振地区では、地域周産期母子医療センターの日鋼記念病院、心臓血管外科の製鉄記念室蘭病院、脳神経外科の市立室蘭総合病院と、複数の中核となる医療機関において急性期医療を3病院が協力して提供している。また、療養病床等も整備されており、入院、外来ともに高い圏域内自給率を維持している。

市立室蘭総合病院は、救急医療については、頭部外傷を含む高エネルギー外傷に対応できる西胆振圏域内唯一の医療機関として、室蘭市内における救急搬送の約38%(約1,300台)、西胆振地域における救急搬送の約27%(約2,000台)の救急車の受け入れをしている。

「病院の理念」おもいやりのこころがかよう病院
「病院の基本方針」
・信頼される医療を持続的に提供します。
・自治体病院としての役割と責任を担います。
・経営の健全化と効率化に努めます。

今回は働きやすい環境作りと業務拡大を続ける臨床工学科課長の山田洋平(やまだ・ようへい)技士長にお話を伺いました。

山田技士長が臨床工学技士を知ったきっかけ

山田技士長

幼少のころから機械が大好きで、パソコンやラジコン、ギミック系なども好きでした。

両親は医療従事者、父が薬剤師で、母が看護師でした。方向性としては親の影響が強いと思いますが、医療には興味があり、薬剤師か、放射線技師になろうと進路を考えていました。

医療系の仕事に興味を持っていたところ、機械に触れるような工学系の医療職があるということで臨床工学技士を知り興味を持ちました。当時は帯広に住んでいたのですが、関西の風土に興味があったので、神戸の学校に行きました。

何故、市立室蘭総合病院に入職したのですか?

臨床工学技士のすべての業務に興味があり総合病院を考えていたところ、登別市の病院に単身赴任していた父が求人を見つけ市立室蘭総合病院を受験しました。

神戸での就職も考えましたが、親に何かあった時を考えて北海道で就職したいと思っていました。ここから実家までは、高速でも3時間くらいかかります。

実家近くの帯広市にも募集はあったのですが、総合病院の求人は無かったと記憶しています。インターネットも無い時代でしたので北海道外から求人情報や病院の情報取得は大変な時代でした。

一日の業務の流れ

定時 8:50~17:20
7:50~17:20(透析室1名早出:1時間前残業)
8:10~17:20(各業務立上げ2名、40分前残業)

残業 25時間前後(前残業が多い)

呼出待機(24時間体制) 1名(3年目以降)
・ICU(PCPS)、CHDF、ペースメーカー業務、機器トラブル対応など

業務 管理職業務と、救急集中治療の業務担当も兼任しています。
・RST(呼吸ケアチーム)スタッフとして人工呼吸器を使用している全患者の情報収集及び設定変更プランや離脱計画、離脱対応
・ドクターカーおよび救急車両の運転

8:10 各々の業務準備
9:00 CE室で始業ミーティング(内視鏡、透析は業務が始まっているので、各業務担当より1名が参加)、各業務の予定、対応手術の件数把握、人員のヘルプ、周知事項などの共有。
9:15 各持ち場で業務開始
・救急集中治療(ICU/HCU/ER、病棟出張透析、眼科、脳外科)
・医療機器管理業務(機器点検・メンテナンス・呼吸器搬送 等)
・透析(外来、入院患者)
・手術室(ペースメーカー業務)
・内視鏡業務
お昼休憩は1時間、業務が終わると他の業務のヘルプに。
17:20 終業

業務担当者以外のスタッフは月の勤務の中で、メインの業務を含め2~3個の業務を兼務する形でスケジュールが組まれている。

臨床工学科のメンバーと拡大について

17名(うち女性2名、20代10名)の組織です。内視鏡、眼科特殊処置室業務や脳アンギオなど看護師でやっていた業務をヘルプしてシフトしてきた結果、20代が多く、色々な業務に就けます。

「院内で医師・看護師のサポートに対しフレキシブルに作業に入れる職種は臨床工学技士ですので(透析・内視鏡・脳アンギオ・呼吸器検査搬送・手術室業務などその日の状況に合わせ人員コントロールが比較的フレキシブルに行うことが可能)、医師・看護師の作業軽減やタスクシェア・タスクシフトに少しでも貢献していきたい」

と病院に掛け合った結果

・スタッフの増員(11人→16人、今後20人までの増員予定)
・CE室の移設拡張(地下1階2室:計62㎡→2階3室:計120㎡)
・ユニフォームの一新プラスCEのバックプリント(臨床工学技士という職業の啓蒙活動の一環として、誰が見てもCEと分かるユニフォームに一新)

といった拡大を承認いただきました。

現在のメンバーは、20代の10名は2人が室蘭出身で、他の8名は他の地域の道内から来ています。ジェネラリスト業務は北海道では珍しいので、札幌の養成校からの応募者が多いです。

現在、夜勤や当直はなく、オンコール体制です。オンコールによる時間外勤務を減らすために、宿日直体制(以下、当直)の導入を予定しています。

当直を導入する事で医療機器の病棟夜間配送も可能となり、病棟の固定器台数の削減を進め院内の機器台数を減らす事で更新費用・維持費用・修理費用の削減を進める事が出来ると考えております。

さらに夜間休日の機器トラブルに対しての不安解消や緊急性の高い臨床対応が迅速に行えることなどを当直のメリットとして考えております。

高エネルギー外傷(高所からの転落、事故など)の98%は市立室蘭総合病院に運ばれています。室蘭には三次救急がなく、より高度な医療を必要とする患者に対して年間に数件、救急車に乗ってPCPS(V-A ECMO)や人工呼吸器につないだ状態で札幌の病院まで行くようなこともあります。

臨床工学技士のやりがい

臨床工学技士はエンジニアなので機器に関し特化しています。

個人的にはICUでは呼吸療法認定を取得し、経験を積むことで集中治療領域での人工呼吸管理に関しては、どのドクターにも引けを取らないよう努力しております。特に、人工呼吸器やペースメーカーなどのコアな設定部分は、特定の看護師・医師(循環器科・心臓血管外科・麻酔科)ではない限り、どうしても苦手とする分野と言わざる負えません。

生命維持管理装置と呼ばれる機械を介した治療という分野において、我々CEがいる事で、患者さんにより良い医療を提供できる事が一番責任とやりがいを感じる部分です。

臨床工学技士は歴史的にまだ浅く認知度はまだまだですが、昨今の医療分野で医療機器の種類や性能、対応分野が増えているからこそ必要性ややりがいのある職業だと思います。

新卒で入職したら

病院で辞令交付されて、市の職員としての研修、病院各分野からの研修が1週間くらいあります。各臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士などが何をしているのか、輸血のオーダーの仕方、病院のルール、電子カルテ、感染、医療安全、接遇などの研修です。

2週目からは、すべての業務を3か月ずつローテーションします。透析室から始まる人も、手術室から始まる人も、集中治療室から始まる人もいます。

3か月間で各業務の基礎的なところを覚えます。機器管理であれば、3か月ですと病棟の機器トラブル対応までは出来ませんので、機器管理室に戻ってくる輸液ポンプやシリンジポンプの使用後点検、定期点検を覚えます。各業務は、業務リストで理解度を確認しています。

2年目からは兼務が始まります。4~5月に、意向を聞きながらメインの2業務を決定します。複数業務が出来るようになりますので、以後、業務を増やす時には、透析と手術室業務をやってた人は、透析と内視鏡というように、片方の業務を変えるか、追加して出来る業務を増やして行きます。

3年目も同様にメイン2業務が3業務になるとか、自信のない業務を再習得してもらったりします。メインは常に2~3業務ですが、メイン業務の入替がありますので、全業務を出来るようになります。業務のスケジュールとしては、メインの2~3業務が振られます。どうしても人が調整できない場合に、修得済みの業務にサポートとして入ることもあります。

当院の勤務体制の特徴

一つの業務に長く従事するのではなく、複数の業務を「兼務」する勤務体制を導入している。
1) 他の業務スタッフのフォローが出来る
2) 必要な休みが取りやすくなる
3) 他の業務の大切さや大変さを共有できる
4) いろいろな業務の知識や繋がりを生かす事が出来る

兼務体制の業務の在り方

1) メインの業務(2~3業務)
・基本的に勤務に振られる業務

2) サポート(1~2業務)
・1つの業務メインの休みが多い場合などに代わりに勤務に振られる業務

3) フォロー(5~7作業)
・メインやサポートのフォロー・手伝い

市立室蘭総合病院 臨床工学科の詳細紹介資料をみる (外部リンク)

教育環境について

学会参加(発表・聴講)も、認定士資格取得費用も病院が負担してくれます。告示研修費用も病院が負担してくれます。以前は各自が日臨工の保険に入る体制でしたが、医療事故の保険も病院が入ってくれていて負担してくれています。

出張予算も上限がありますので、道内なら各業務2人(トータル8~10人)くらい、本州の学会は年に2~3人までなど調整します。地方の病院なので、学会の演題発表よりも聴講に価値を感じています。専門性の高い学会に参加して得た情報を持ち帰って来て、業務に反映させ病院に還元することに価値を感じています。

今年入られた5名の志望動機

5名中室蘭の人は2人で、他の3名は別の生活圏になります。

北海道の病院では、色々な業務が出来るジェネラリストを育成する病院というのは少なく、専属や専従になる施設が多いです。

当院では各業務間で助け合いの出来る体制をベースとしている事、それが出来たうえで各分野のスペシャリストを目指すスタンスである事に理解と興味を示しています。

福利厚生について

有給取得率平均は20日/人/年となっております。夏季休暇4日と最低5日の年休取得が必須となっています。
女性技士で結婚されて室蘭に残った方がまだいませんが、結婚しても働き続けられる職場環境作りをしていきたいと考えています。

育休制度などは、市の職員になりますので、「室蘭市職員の育児休業等に関する条例」が適用されます。
仕事も生活の一部ですので、仕事だからしょうがないとならないように、きちんと必要な休みが取れたり、プライベートの都合を考慮できたりなど、ライフワークバランスの良い職場環境を作るのが一番大事だと思います。

あと、今まで放射線技師や検査技師や薬剤師と同一の白のケーシーだったのですが、院内認知を含めてCEの存在意義や、何をしているのか、色々な仕事に入って行くうえで、CEを認識してくれることは非常に大事だということで、財務を説得してCEの制服を作ってもらいました。

採用について

色んな業務をやりたい人。自分から出来ることを探して、臨床工学技士が出来ることを見出せる人。我々はもっと医療に携われるのではないかと言った未来志向のある人。に来てもらいたいです。

公務員なので、長くいれば昇給はしていくのですが、そこに甘んじないのが大事で、病院の為になることを考えられる人は、患者さんに還元することにつながります。

 

取材協力

市立室蘭総合病院 臨床工学科
〒051-0012 北海道室蘭市山手町3丁目8−1 Tel.0143-25-3111
採用情報