【臨床工学技士インタビュー】色んな業務が出来るから理解が深く楽しい!5年で一通りの業務を習得し、ドクターには学会や進学に協力頂けて、幅が広く奥の深い業務習得が出来る旭川医科大学病院臨床工学技術部門

旭川医科大学病院

2024年4月から始まる医師の働き方改革が、いよいよ目前に迫ってまいりました。これまでよりも短い勤務時間でこれまで通りの病院機能を維持するためには、医療の効率化を最大限行う必要があります。そのためには、これまで尽力してきました、かかりつけ医との連携、特定看護師育成、ICTを用いた病院間情報連携などの取り組みに加えて、外来・入院の様々な場面でのデジタルトランスフォーメーションの活用なども検討してまいります。

旭川医科大学病院の基本理念である「大学病院としての使命を認識し、病める人の人権や生命の尊厳を重視した先進医療を行うとともに、次代を担い、地域医療に寄与し、および国際的にも活躍できる医療人を育成する」を堅持しつつ、働き方改革による職員の満足度向上をはかり、それらが結果として皆様に提供する医療のさらなる良質化や患者さんの満足度向上に繋がると信じております。

今回は、旭川医科大学病院の臨床工学技術部門を黎明期から支える宗万孝次(そうまん・こうじ)技士長にお話をお伺いしました。

宗万技士長(前列・中央)

宗万技士長が臨床工学技士になったきっかけ

医療系の資格というガイド本をみて、出来たばかりの資格で、機械をいじるのが好きな人に向いている資格として、臨床工学技士が紹介されていました。新しい職種というのに魅力を感じ、興味を持ちました。

医療機器の保守点検がメインと言うような書き方がされていましたが、直接的にも間接的にも人の為になりたいという思いで医療系の進学を志し、北海道で最初に出来た西野学園(平成元年)の一期生として、臨床工学技士になりました。

就職について

1病院目は、旭川厚生病院で7年勤めました。当時は、臨床工学技士がいなくて1期生のCEでした。最初は手術室の機器管理でしたが、心カテ検査、ICU・NICU、血液透析などの業務に就きました。教わる人がいませんでしたので、ICU業務は、看護師やドクターに教えてもらいました。

厚生連は、札幌、網走、帯広、俱知安(くっちゃん)、遠軽(えんがる)など各地に透析センターがあるので、転勤もあります。私は旭川出身なので、何かあれば親を支えたいという気持ちもあり、転勤はしたくないと思っていたところにタイミングよく旭川医科大学病院での求人があったため、転職しました。

転勤がないのも転職の理由の一つですが、大学病院なので色々なことをやっていて、経験を活かしてもっとレベルアップが出来るのではないかと思い旭川医科大学病院に転職しました。当時はCEが2名手術室専従で、手術室業務以外は2名で対応していましたが、ほとんどはドクターがやっていました。

前職の経験があって他の業務にも明るかったので、ドクターの仕事を徐々に臨床工学技士にシフトさせていきました。手術室の機器管理以外の機器管理が、当時は遅れていたので、CEセンター(医療機器の中央管理部門)の立上をさせてもらいました。

業務について

私の専門は集中治療領域になりますので、ICUで若手のスタッフのフォローにあたることはありますが、各部署の責任者にお任せしています。

大学病院と言うと、スペシャリスト業務だけをやるイメージがあるかと思いますが、私が一通りの業務が出来る環境が楽しいと思っていますので、ジェネラリスト業務になります。

ICUは呼吸・循環・代謝の全ての業務があるので、色々な業務が出来ることが好きになった理由だと思います。なるべく各業務責任者に現場はお任せして、委員会など管理者業務に専念するようにしています。

旭川医科大学病院の業務

他の職種より30分前倒しの8:00~16:45(7時間45分労働、1時間休憩)が、臨床工学室の定時になります。

7:50 手術室にて朝礼を行います。
8:00 各配置部署で業務を開始します。
・血液浄化業務、人工心肺・補助循環業務、高気圧酸素治療、ME機器管理業務、カテーテル検査室業務、手術室業務、ペースメーカー・ICD業務、ICU・NICU業務
・血液浄化業務と手術室業務の早出当番は7:00~15:45
・血液浄化業務早出当番は、プライミングや薬剤の準備
・手術室業務早出当番は、麻酔器のチェックなど、手術室の立上業務
16:45 終業(当番2名が残り番)

夜勤は、5年目くらいから入る「16勤務」という15:30~翌8:30までの勤務があります。
土日は宿直で、待機は人工心肺が2名です。(人工心肺は3名でまわすので、1名メインで2名がサブになります)
人工心肺は、10名がメインで回せて、5年目で全スタッフがサブには入れるようになっています。

宗万技士長の臨床業務のやりがい

ICU業務をメインでやっていましたので、自分たちが関わることで患者さんの容態がよくなるとやりがいを感じます。小児心臓手術もするのですが、ペースメーカーの定期チェックで来院する度に、小さかった子どもが大きくなって成長する姿をみると感動します。

新卒が入職して来たら

入職から2年間は非常勤になります。大学病院の業務についていけない方もいますので、1年で更新を入れています。非常勤期間が終わると常勤職員になります。非常勤も常勤も、給与体系やボーナスといった待遇の差もありません。

入職1日目は、診療技術部合同で新人オリエンテーションを行い、電話の取り方、挨拶、報告連絡相談、名刺の渡し方など、一般的な企業がやるような社会人としての研修を行います。
医療安全などの研修は、業務時間内にeラーニングで講習を受けます。

2日目からは、現場配属になりキャリア5年以上の若い先輩をプリセプターとして、1年間で一通りの業務を覚えていきます。
①透析業務2か月、②手術室業務2か月、③ICU・NICU業務2か月、④透析業務2か月(後半で穿刺が出来ることが目標。6床のみなのでこの2か月で穿刺まで出来なければ、翌年の4月以降習得)、⑤手術室業務2か月(手術室業務・高気圧酸素業務を各1ヶ月)、⑥ICU・NICU業務2ヶ月で1年目を終えます。

2年目からは1か月毎に、手術室業務、透析業務、ICU業務、高気圧酸素業務、CEセンターで機器管理業務、2年目後半に心カテ業務を覚えます。

3年目からは心カテ業務、人工心肺業務(5年以内に記録係・セカンド業務が出来るように)を覚えていきます。

スタッフは24名(男:女=18:6、20代8名・30代9名・40代4名・50代3名)です。30代から人員が増え始めたのは、平成26年のICU常駐で夜勤を始めるにあたって、人員を増やしたのが理由です。

人工心肺業務は、体外循環技術認定士が5名いて、簡単な症例(容態の安定している予定手術症例)は他に5名メインでまわせる人がいるので10名がメインをまわせます。5年目以降でメインの操作をしたいという要望があれば、中堅スタッフと症例をシェアするようなかたちで、メイン操作の業務習得をします。

教育環境に関して

スペシャリスト・ジェネラリスト問題がありますが、私が色々な業務を学ぶと、色々な領域で関連しているので理解しやすいという事もあって、ジェネラリスト業務を行っています。色々な業務を知った上で、専門にしたい業務を見つけてスペシャリストになってもらいたいと思っています。

心臓血管外科の先生に推薦して頂いて、働きながら旭川医科大学病院で学位を取っているスタッフもいますし、Ph.D.を取得しているスタッフもいます。私は看護学科や医学部で、医療安全や医療機器の授業を受け持っています。

認定資格の取得には、公休取得が出来て、出張費や勉強をする為の受講料は負担してくれます。学会は聴講でも発表でも費用を出してくれています。臨床工学技士の発表は、透析などであれば、腎臓内科や血管外科のドクターなど、ドクターもサポートしてくれます。さらに所属している手術部からも出張費用のサポートがあります。

当院の医師は、臨床工学技士の業務理解があるので、頼って頂けますし、提案も受け入れてくれます。
北海道各地に、旭川医科大学からドクターを輩出していますが、人工心肺など、各病院から、旭川医科大学病院の人工心肺業務を教えて欲しいという事で、輩出先の病院から研修に来られることもあります。

遠隔医療のパイオニアとして有名な大学病院だと思うのですが

遠隔医療に関しては20年くらい前からやっていて、独立した遠隔医療センターになっていますので、特に臨床工学技士が関わることはありません。臨床工学室の遠隔業務としてはペースメーカーの遠隔管理になります。

急性期病院ですので人工呼吸器というと後方支援病院の管轄にはなりますが、直接関わっている患者さんも少なからず居ますので、遠隔管理をしていきたいと思っています。

欲しい人材について

幅広く業務を行いますので、色んな業務に興味を持ってくれることは重要です。色々な業務に携わって、専門性を持って、スペシャリストになってくれることを望んでいます。

臨床工学技士は単体で仕事をすることは余りなく、ドクター、多職種でサポートし合う関係ですので、多職種とコミュニケーションが出来て、患者さんの視点を持てることが必要です。

当院への就職は、進学の他、先生方の実験を手伝うことが出来ますので、豚の心臓手術をするときに、人工心肺のトレーニングやデータとりができますので、実験・研究したい方には、特にいい病院だと思います。

見学について

国立大学に附属する病院ですので、教育機関として門戸は開放しています。臨床工学技士の全ての業務は出来ますので、一通りの業務を見学してもらえます。一通りの業務が出来る病院ですので、CE学生さんに興味を持ってもらえる業務を見つけてもらえると思います。

見学希望は、臨床工学技術部門HPの「お問合わせ」よりご連絡ください。

 

取材協力

旭川医科大学病院 臨床工学室
〒078-8510 北海道旭川市緑が丘東2条1丁目1−1 Tel.0166-65-2111
臨床工学技術部門HP(見学問合せ)