【臨床工学技士インタビュー】少数精鋭!1週間ごとに業務をローテーションすることで、誰もがいつでもどの業務でも行えるように。若いうちから色々な経験を積めることが技士たちの糧にもなっている。佐賀大学医学部附属病院で働く臨床工学技士に話を聞いた

佐賀大学医学部附属病院

1981年(昭和56年)に13の診療科と325の病床数を持つ大学病院として開院。以来、人員を増やしながら業務を拡大してきた。現在、29の診療科に病床数602床がある。佐賀大学医学部附属病院のMEセンターには19人が在籍し、そのうち12人(女性2人)が臨床工学技士の資格を有する。現在、業務を4つに分けローテーションを行っている。管理する機器の台数は約1,500台2年前からカテーテルアブレーション治療が本格的に開始され、それを機にアブレーション業務を開始。現在では年間約300症例までに増え臨床工学技士の活躍の場が拡がったという。今回は、田中淳(たなか・あつし)技士長と地元佐賀県出身で入職3年目の田中志緒里(たなか・しおり)技士に話を聞いた。

運命の出会い

田中 技士

Q.臨床工学技士を目指したきっかけは?

高校生のときに学校独自の職業別進路ガイダンスがありました。私は元々臨床検査技師に興味があったのですが、そのガイダンスでは臨床検査技師を説明してくれるブースがありませんでした。単純に名前が似ているなということで、臨床工学技士の話を聞いてみようと思いました。話を聞いているうちに、検査に特化した臨床検査技師とは違って、臨床工学技士は治療に直接関わることができる仕事だということを知りました。さらに、人工心肺装置を使って直接患者さんの予後に関わることができるという点にも興味が湧きこの職を選びました。

Q.ガイダンスの時に臨床検査技師の説明があったら臨床検査技師になっていましたか?

なっていたかもしれません。ガイダンスに臨床工学技士の説明がなかったらこの職業を知らないまま進んでいたと思います。

Q.どうして佐賀大学医学部附属病院に入職したのですか?

できれば地元である佐賀県の病院に入職したいと思っていました。ただ、佐賀県で人工心肺を操作することができる病院は3つしかありませんでしたので募集がなければ地元で働くことを諦めないといけないなと思っていました。ご縁があり、こちらに入職することができました。

 

田中 技士長田中 技士長

佐賀県内に臨床工学技士を養成する学校がないこともあり、優秀な人材を確保することに苦労しています。田中(志)技士のように佐賀県出身で、地元で働きたいという技士は本当に貴重な存在です。

 

Q.実際に臨床工学技士になっていかがですか?

いま、3年目で人工心肺のメインポンプを操作しています。経験や知識がまだまだ足りていないのでもっと勉強しなくてはいけないなと感じています。例えば、人工心肺では送・脱血カニューレという管を体に取り付け、体外循環を行います。一般的には患者の体格にあったカニューレを選択しますが、症例にあったカニューレの選択が難しく、先輩からアドバイスを受けることもしばしばあります。

1日のスケジュール

田中志緒里技士のある日のスケジュール (人工心肺業務の日)

定時8:00~16:45(休憩1時間を含む)

7:20 出勤
7:30 人工心肺の回路の組み立て
8:00 プライミングをはじめる
8:10 患者入室
9:00 手術開始
11:00  途中、休憩(1時間) 交代でとる
16:00  手術終了→ICU搬入 片付けなど
16:45  業務終了

月の残業時間は20~30時間程度。毎日、当直が1人、オンコールが3人の体制をとっている。

経験値をあげるローテーション業務

田中 技士長

MEセンターでは、

①医療機器管理・高気圧酸素治療業務
②人工心肺業務
③血液浄化業務
④心カテ・アブレーション業務

の4つのグループに分け、1グループ2~3人を配置し、1週間ごとにローテーションして業務を行っています。手術室業務は1名を配置し、1年間のローテーションで行っています。

Q.どうしてそのようなローテーション業務をしているのですか?

佐賀大学医学部附属病院は、国立大学の附属病院の中でも臨床工学技士の人数が少ない病院です。人数の不足を補うためには、全ての業務を全員が行えることが必要で、必然的にこういった運用でやってきました。ほかの施設とは違った珍しい運用だと思います。このことで、少ない人数でも臨機応変に対応することができる人材が育成できました。

Q.新人で入職するとどのように研修しますか?

まず、指導者と共に半年から1年かけて育てていきます。業務ごとに習熟度の評価を行い、指導者から合格をもらえたら、1人で当直業務に入るなど段階を経て勤務してもらいます。早い人ですと半年で当直業務を担当します。ただ、佐賀大学医学部附属病院の当直業務は、管理当直なので基本的には(夜間の)電話の取り継ぎ業務になります。あとは、オンコール者が対応しますので、経験の浅い新人が当直に就いてもフォローの体制はできています。

Q.もし、病棟で機器トラブルが起きた際に医療機器の担当者がいない場合はどうするのですか?

 

田中 技士田中 技士

まずは、その週に医療機器管理業務の担当になっているチームが病棟に出向いて状況を確認し対応します。例えば呼吸器の場合でしたら、どの部分の修理が必要なのかを調査し、呼吸器の担当者に状況を伝えて修理の見積もりをとってもらうことになります。最終的な管理は各担当者がするという形です。

 

Q.これからの目標は?

 

田中 技士田中 技士

人工心肺に興味があって臨床工学技士になりました。3年間の実務経験があると認定士の資格を取ることができますので資格を取得したいです。それと佐賀大学医学部附属病院は、佐賀県の最後の砦と言われていて、救急患者を多く受け入れます。 ECMO(エクモ・外式膜型人工肺)をいかに早く準備できるかなども含めて技術を磨いていきたいです。

 

求める人材

 

田中 技士長田中 技士長

自分で考えて行動できる人。佐賀大学医学部附属病院のMEセンターは人数も限られていますので指示を出されるまで待っている人よりも自ら動いてくれるような人が望ましいです。あとはコミュニケーション能力が重要になりますね。勉強はできた方がいいのでしょうが、臨床工学技の仕事はそれだけでは不十分です。

臨床業務についても実際にやらないと覚えられませんし、トラブルシューティングの経験を多く身につけて欲しいと思っています。いざというときは「ちょっと待ってください」という間もないですから。もちろん一人前になるまではしっかりサポートしていきますので安心してください。

 

取材協力

佐賀大学医学部附属病院 MEセンター
〒849-8501 佐賀県佐賀市鍋島5-1-1 Tel.0952-31-6511(代)
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