臨床工学技士が扱う生命維持管理装置とは?医療機器のスペシャリストである臨床工学技士の役割や仕事の進め方も

医療現場になくてはならない生命維持管理装置。生命維持管理装置を動かすうえで臨床工学技士の存在は必要不可欠です。つまり、臨床工学技士も生命維持管理装置について詳しく理解していなければならないといえます。生命維持管理装置にはどのような種類があり、どんな役割を担っているか等、詳しくご紹介します。

生命維持管理装置ってなに?


生命維持管理装置とは生命維持につながる機能を補助もしくは代行するための機械のことを言います。これらの装置は、生体が手術や外傷、重度の障害によって生体の働きが低下し、生体自身で生命維持が困難となった時に一時的に生命維持の代行を行う装置です。生命維持管理装置は主に集中治療を必要とする現場で使われることが多いです。そのため、臨床工学技士が集中治療室に常駐し、機械の安全管理を行うこともあります。

生命維持管理装置の種類と働き

生命維持管理装置にはその役割に応じたさまざまな種類があります。ここでは、生命維持管理装置の種類とその働きについてご紹介します。

人工心肺装置


人工心肺装置とは一時的に心臓の動きを止めてその代わりに、人の心臓の動きを代行する機械のことを言います。大静脈に管を挿入して、全身から還ってきた静脈血を人工肺を使ってガス交換して動脈血にします。その動脈血をローラーポンプを使って動脈につないだ管に血液を送っていくのです。心臓は常に動いている臓器のため、心臓内の血管などの治療を行う時には、人工心肺装置を使って一時的に心臓の動きを止める必要があり、その時に、人工心肺装置を活用します。

人工呼吸器


人工呼吸器とは自発的に呼吸が行えなくなった方に対して呼吸をサポートするための機械です。人工的にガスを送って圧力によって肺を膨らませ、ガス交換を行います。手術中の呼吸サポートや重症の肺疾患、意識低下により自発呼吸が困難な方へ使用します。細い管を口や鼻から気管に送り込んで人工呼吸器を使用し、ガス交換を行うものが一般的です。その他にもマスクタイプや、気管を切開してそこからガスを送り込むタイプなどがあります。

血液透析装置


血液透析装置は腎臓の機能が低下して、老廃物を体外に出せなくなってしまった方に対して、老廃物や水分を体外に排出させるための装置のことを言います。ダイアライザー、人工腎臓と呼ばれることもあります。糖尿病患者の増加に伴い、合併症として腎臓を患う患者が増えており、血液透析を受ける患者数も増加傾向にあります。

除細動装置


心臓の筋肉が痙攣することで心臓のポンプ機能が止まってしまって不整脈が起こることがあります。そうすると血圧低下などの症状が出てしまうのですが、こういった方に対して、心臓に電気刺激を与え、規則的に電気信号を送れるようにサポートする装置のことを言います。除細動装置と呼ばれるものには体外型除細動装置(AED)と埋め込み型除細動装置(ICD)があります。

高気圧治療装置


高気圧治療装置とは、100%の酸素で2気圧まで加圧できる装置のことです。普段、私達が呼吸をしている時に吸っているのは他の物質が混ざっている100%の酸素ではない上に、気圧も1気圧程度となります。2気圧とは深海10mと同じレベルとなり、高い濃度の酸素を高い気圧の装置の中で吸うことで、ヘモグロビンに多くの酸素を結合させることができ、身体の隅々にまで酸素を運搬することを可能としています。急性一酸化炭素中毒の治療などで用いられる装置です。

生命維持管理装置における臨床工学技士の役割は?

さまざまな生命維持管理装置をご紹介しましたが今回あげた装置はすべて臨床工学技士の存在が必要不可欠です。これらの装置を操作する上で臨床工学技士はどのように関わっていくことが必要となるのでしょうか。

医師の指示の下、機器を操作して治療の補助行うことができるのは臨床工学技士のみ

これらの機械のほとんどは、看護師などほかの職種が機械を操作することができません。つまり医師の指示を受けて臨床工学技士が唯一機械を操作し、治療の補助をすることができるのです。これは法律によっても明文化されています。透析をメインに行う診療科や、生命維持管理装置を使う頻度が高い集中治療室においては、臨床工学技士が常駐して仕事を行うことが必要とされます。

機器の点検やトラブル対応は臨床工学技士の大切な役割

医師や他の職種は生命維持管理装置の仕組みについて理解をしていても機器のトラブル対応をすることは難しく、臨床工学技士の知識と技術が必要となります。機器の使用中にトラブルが起こった時のトラブル対応は臨床工学技士の大切な仕事の1つとなるのです。くわえて、機器の使用前後の点検も臨床工学技士の大切な仕事となります。例えば除細動装置の場合は体内に埋め込む前には必ず臨床工学技士のチェックが必要となりますし、人工呼吸器などの機械も患者さんの使用前後には必ず臨床工学技士が点検を行うことが求められます。

生命維持管理装置の使用には臨床工学技士の存在が必要


生命維持管理装置を医療の現場で活用していくには臨床工学技士の存在が必要不可欠といえます。特に臨床工学技士が患者さんのそばでケアを行える機会は少ないため、生命維持管理装置を患者さんのそばで操作できるという点についてやりがいを感じる臨床工学技士も多くいらっしゃいます。医療の発展とともに生命維持管理装置も発展を遂げており、今後も臨床工学技士の活躍が期待されています。

参考

旭川医科大学病院 臨床工学士とは? 

日本集中治療医学会 臨床工学士からみなさまへ

生命維持管理装置領域における医薬品等の調製業務の安全対策指針 日本臨床工学士会 

医療機関における生命維持管理装置等の研修および保守点検の指針 厚生労働省 

臨床工学士とは 公益社団法人日本臨床工学士会

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