今回は、臨床工学技士の仕事についてご紹介します。臨床工学技士は、医療機器の管理や操作が仕事と思われる方も多いと思いますが、実際はそれだけではありません。救急病院で7年以上勤めている私が、院内でどの様な仕事をしているのか、詳しくお話していきます。
臨床工学技士の仕事
臨床工学技士法では、臨床工学技士について明記が、あります。以下、臨床工学技士法第1章第二条2項から一部抜粋。臨床工学技士は「医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」上記の、文言から臨床工学技士の仕事と実際の現場での仕事を3種類紹介します。
①医療機器の管理
②生命維持管理装置の操作
③他部署でのサポート
臨床工学技士法に明記されている内容から①と②については理解できると思いますので、③を解説します。
医療機器の管理
医療機器の管理は、病院で臨床工学技士のメインとなる仕事です。透析や人工心肺業務が無くても、医療機器の管理は必ず行われています。管理の内容としては以下の3つがあります。①記録を残す、②安定稼働、③医療機器に関する勉強会の開催。
①記録を残す
医療機器の管理を、記録に残すことは、日本臨床工学技士会が出している「医療機器管理業務指針」により定められています。定期点検・始業点検・終業点検といった点検簿は、過去3年間に渡って保存しなければなりません。病院に医療監査が来た際も、点検簿を提出する必要があります。3年以上経った記録に関しては、破棄しても構いません。
②安定稼働
医療機器を管理する者として、医療機器が安定稼働できるよう務めることも大事です。特に救急病院であれば、治療に関わる機器が故障した際、すぐに治療再開できるよう準備しておきましょう。対応策としては、機器を2台以上保有しておく場合が多く、2台以上保有することが難しい時は、治療の指示が入った時点でメーカーから借用といった方法があります。臨床工学技士は、常に最悪の場合を想定して行動することが求められます。
③医療機器に関する勉強会の開催
医療機器に関する勉強会の開催も機器の管理に含まれます。勉強会を開催するタイミングは、新人が入社したとき、新規で医療機器を購入したときです。毎年、学校を卒業したばかりの新人看護師が、入職してきますので、そのタイミングで医療機器の取り扱いについて説明を行います。新規で医療機器を購入したときは臨床工学技士も含めて、メーカーから使い方やトラブル時の対応方法について学びます。
生命維持管理装置の操作
生命維持管理装置とは、下記の5種類の医療機器を指します。人工呼吸器、保育器、補助循環装置(PCPS等)、人工心肺装置、血液浄化装置。これらを操作し、患者の治療に参加することが、臨床工学技士の仕事です。生命維持管理装置を用いた治療場面の一例がこちらです。透析患者に対して透析開始・回収業務、心カテ時のカテーテルポリグラフ操作、PCPSやIABPの挿入、敗血症患者に対して多用途血液浄化装置を用いたPMXの施行。例として挙げた場面について、透析患者以外は患者状態の悪い切迫した状況です。緊急時に使用する医療機器の操作方法は、日々反復して勉強しておきましょう。
他部署でのサポート
他部署でのサポートとは誰がやってもいいことを臨床工学技士が仕事として行っている業務です。病院内で、誰がやってもいい仕事なんてあるのかと疑問に思われるかもしれませんが、実際は、あります。臨床工学技士が行っている仕事で上記に該当する業務はこちらです。手術室での直接介助、内視鏡室での内視鏡検査補助、透析後の患者へ食事の配膳、病院入り口での患者対応。これらの業務は国家資格を保有している必要はありません。国家資格を持っていない看護助手や、事務が行っている病院も多々見かけられます。そこに、臨床工学技士を起用するケースが増えてきて、私も実際に行った経験があります。看護師だけでも完結できる業務ですが、全てに看護師を起用すると人件費が高くついてしまうため、看護助手や臨床工学技士を起用しているのでしょう。
まとめ
今回は臨床工学技士の仕事についてお話しました。臨床工学技士の仕事は以下の3種類です。①医療機器の管理、②生命維持管理装置の操作、③他部署でのサポート。①、②は臨床工学技士法でも定められている仕事ですが、③は無資格でもできる仕事で、臨床工学技士が行っている業務です。病院内では他部署との関わりがあるため、依頼された仕事を断ると部署間での軋轢が生まれ仕事をしにくくなります。大人の事情で本来臨床工学技士が行わなくてもいい仕事もしているのが実情です。