臨床工学技士の資格を取得する為の受験資格とは?医療機器のスペシャリストへの第一歩はここから始まります!臨床工学技士国家試験を受ける為には?

医療機器のスペシャリスト、臨床工学技士。病院の中で透析の機械を扱っている人。集中治療室で人工呼吸器の点検をしている人。ニュースで話題のエクモを扱うことができる人。心臓外科の手術室で人工心肺を扱っている人。医師や看護師ほど誰もが知っている訳ではないけれど、医療チームに不可欠の存在です。では、どうすれば臨床工学技士になれるのでしょうか。それには、臨床工学技士国家試験に合格する必要があります。

臨床工学技士国家試験を受けるには

厚生労働大臣の指定する科目を履修することが必要です。すべて大学扱いになるため、高等学校は卒業していなければなりません。受験資格を得るための履修ができる学校の、それぞれの特徴についてまとめます。

4年制大学

臨床工学科、医療工学科、医用生体工学科など。4年かけてじっくりと勉強し経験を積むことができます。高度な学問を学べることが最大のメリットです。大学院に進むなど、研究に関わる方も多いです。学費は4年分かかってしまうこと、入学難易度が比較的高いことなどのデメリットがあります。国立大学で臨床工学技士の履修を行うところはありませんので、私立大学の学費を想定する必要があります。国家試験の合格率や就職率は高いので、将来の可能性を広げたい方には最もおすすめと言えるでしょう。

3年制大学

4年制大学に準じますが、卒業までの期間が短いことがメリットです。

専門学校 (3〜4年)

履修単位は厚生労働省の定めたもので大学と同じですが、より実践的な科目が多くなります。社会に出て即戦力を目指したい、という気持ちが強い方におすすめです。大学に比べると受験科目が少なく、比較的チャレンジしやすい入学難易度です。入試の方式や科目も様々ですので、学力に自信のない方でも学校によってはチャンスがあるでしょう。4年制の専門学校の中には、大学のように高度な学問が学べるところもあります。

養成校

看護師や臨床検査技師などの国家資格の養成校を卒業していると、臨床工学科などで1年以上指定履修を終えると受験資格が得られます。多くの方は、大学か専門学校かを選択することになると思います。学費やかかる年数、将来研究に関わりたいかなどを判断材料にすると良いでしょう。入学を検討する場合は、臨床工学技士国家試験の指定履修科目があるかどうかを必ず確認してください。

履修科目の実際

では、実際に入学した後でどのような科目を履修するのでしょうか。履修単位は、厚生労働大臣の定めた65単位です。内容を詳しく見ていきましょう。

基礎分野

・科学的思考の基盤
・人間と生活

生物、化学、物理、数学などの授業があります。学校によっては、英語やコミュニケーションなどの授業を取り入れています。広い視点から人間力を鍛える科目だといえるでしょう。一般的な大学に比べると、やや専門分野に関連の深いことを学ぶ傾向があるようです。

専門基礎分野

・人体の構造及び機能
・臨床工学に必要な医学的基礎
・臨床工学に必要な理工学的基礎
・臨床工学に必要な医療情報技術とシステム工学の基礎

臨床医学、臨床工学を体系的に学びます。基礎的な科学知識と臨床の橋渡しとなる内容です。解剖についての授業もあります。医師や看護師とは視点が異なりますが、ヒトの全身について知識が必要な職種であることを自覚する機会になるでしょう。

専門分野

・医用生体工学
・医用機器学
・生体機能代行技術学
・医用安全管理学
・関連臨床医学
・臨床実習

いよいよ実践的な内容を学ぶ段階です。これまでの単位で得た知識を元に、体外循環、透析、人工呼吸器などの理論を学びます。機器を実際に用いた演習や、臨床現場に出て実習を行います。臨床工学技士の仕事内容を実感できる重要な学習です。自分が臨床工学技士としてどのような分野の仕事をしたいかを考える時期でもあります。

国家試験に向けて

ここまで、臨床工学技士国家試験の受験資格についてまとめてきました。臨床工学技士の仕事に興味がある方のために、少しでもイメージをつかむことができればと思います。臨床工学技士国家試験は年一回、毎年3月に行われています。2021年度の合格率は84.2%と、例年より高めの結果でした。

最後に

医師や看護師に比べると、医療機器を通じてヒトの全身と関わるという特殊なジャンルですが、とてもやりがいのある素敵なお仕事です。受験資格はそこまで複雑なものではなく、履修をきちんと行えば良いわけですからやる気のある方はぜひチャレンジして欲しいと思います。ただし、世間一般のイメージよりはずっとヒトの体だけでなく心にも直結するお仕事です。そういう意味では、事務的な受験資格とは別に、「人を大事にする心」が必要だと言えるでしょう。部署によってはほぼ機械が仕事相手だったり、患者さんと直接関わったり、さまざまです。医師や看護師のサポートにつくこともあれば、院内のネットワーク管理を行うこともあります。多少コミュニケーションが苦手でも、人を大事にする心があれば選択できると思います。