【臨床工学技士インタビュー】院長が代わり全応需の急性期特化病院へ。増える業務に、タスク・シフト/シェアに、オールラウンドに臨床工学技士の業務が習得できる大阪府済生会中津病院

大阪府済生会中津病院

2016年に創立100周年を迎えた大阪府済生会中津病院は、急性期病院として大学病院と同等の機能を持つと判断されるDPC特定病院群に認定されている。急性疾患の中心をなす脳・心・血管疾患に関しては多くの専門医を有し、24時間365日対応している。がん診療に関しては、大阪府がん診療拠点病院となっており、専門部署であるがん診療支援センターを院内に設けている。
外科手術、化学療法、放射線治療、いずれにおいても豊富な治療件数を有し、診療所を始めとした他の医療機関との連携を深め、地域が一体となって患者さんの健康を守れるように、地域医療支援病院としての体制つくりに積極的に取り組んでいる。入院前から退院後までの生活を念頭に入れた、切れ目のないサポートができるように入退院支援室を設けるとともに、ご自宅での医療・介護が継続して必要な患者さんのために、訪問看護ステーションを充実させている。

今後、増改築をすすめハイブリッド手術室の増設などの予定があり、急性期に特化した病院へ変貌を遂げる大阪府済生会中津病院の臨床工学技術部部長 戸谷輝彦(とたに・てるひこ)技士と、藤原敬博(ふじわら・たかひろ)技士にお話を伺った。

藤原技士に聞いてみた

藤原技士

臨床工学技士を目指し入職するまで

母が看護師で、小さい頃から患者さんに接する仕事に興味を持っていました。もともと、理系で工学に興味があり、医療の分野でも工学が生かせる職種があると知り、臨床工学技士を目指しました。
学校を卒業後は体外循環に興味があり入職し、3年働きましたが、症例も少なく経験も得ることが出来ないため、心臓血管外科のある病院への転職を希望していました。大きな規模で、心臓血管外科手術件数の多い病院を探していたところ、済生会中津病院で求人があり入職に至りました。今は心臓カテーテル治療や人工呼吸器など、携われる業務も症例も増えてやりがいがあります。

藤原技士の一日の業務の流れ

定時8:30~17:00

8:30 手術室の全体ミーティング
8:35 臨床工学技術部のミーティング
8:50 手術室の準備、始業点検
9:00 患者さん入室
12:00 昼休憩
13:00 医療機器定期点検、手術中のトラブル対応、看護師向けの勉強会資料作成、部内用症例報告書作成など
17:00 終業

火曜日・木曜日は、9:00~15:00心臓血管外科手術で体外循環(以下、人工心肺)業務
水曜日は、脳神経外科での術中神経モニタリング
金曜日は、da Vinciの準備、トラブル対応、片付け

同じ仕事が出来る人が3人いるため、部署内で調整しながら休憩をとります。
残業は月に5~10時間程度

中津病院のやりがい

da Vinci、navigation、人工心肺など最新の医療機器があるので、やりがいにつながります。
臨床工学技士のやれる業務は一通りありますし、臨床においては、術前から術後まで患者さんに寄り添う体制があり、患者さんが良くなっていく姿を見ることができ、達成感につながります。

臨床工学技術部部長 戸谷技士に聞いてみた

臨床工学技術部部長 戸谷技士

入職後研修および業務について

入職時には当院規定の新人研修が2日間ありましたが、新型コロナウィルス感染症の関係で半日となっています。研修後は私が臨床工学技術部のオリエンテーションをしています。内容としては済生会について、大阪府済生会中津病院について、社会人、医療人として、患者さんについてなどの座学を行っています。

業務に関しては、血液浄化業務から習得してもらいます。患者さんや他職種とのコミュニケーションなどは学校で教育されていないため、血液浄化業務を習得しながら学んでもらいます。血液浄化の業務としては、透析の穿刺や生命維持管理装置の保守点検などを習得してもらい、最終的には病棟で血液浄化が一人で行えるように育成します。
また、集中治療室運営委員会より依頼があり、2022年2月より当直を始めています。
当直を始める前に大きく3つのゴールを設定しています。1つ目は病棟での血液浄化、2つ目は医療機器管理(人工呼吸器、輸液ポンプ、シリンジポンプ、補助循環(ECMOの対応)など、3つ目は心臓カテーテル検査業務での対応(使用機器の立上げまで)です。

大体1年半くらいを目標として習得してもらい当直に就いてもらいます。今まで学んだ業務を失念しないように、医療機器中央管理室、血液浄化療法センター、心臓カテーテル検査とローテーションを行い、スキルを上げてもらっています。当直する前までは、心臓カテーテル検査はオンコール対応でしたが、医師の協力もあり当直者が対応し、人工心肺だけがオンコール体制としています。

中津病院臨床工学技術部の組織

23名(女性5名、男性18名)で、医療機器中央管理業務に室長1名と固定メンバー2名、血液浄化業務に主任1名、手術室業務に主任1名と固定メンバー2名、血管造影撮影室(心臓カテーテル検査)に主任1名で、他のスタッフは手術室以外のローテーション業務としています。

認定士や学会の補助

体外循環技術認定士については、学会出張として交通費、宿泊費は病院が負担してくれます。施設要件にならないような認定士などについても学会出張扱いで援助があり、年2回までは学会出張が認められます。
告示研修の研修費は、技士会に加入している場合の金額が支給されます。

中津病院の見学について

幅広く業務が出来る病院ということと交通の便が良いので見学者は多いです。特に透析クリニックからの既卒者の方がいろいろな業務をやりたいと言う方が来られます。

2023年4月からは、急性期特化の病院として、スーパーICUを設置するようになる予定です。業務が多岐となり、人員もあまり多くないため現状でどのようにタスク・シフト/シェアに人を割くのか考慮して行くことが難しい状況です。
公募はしていませんが急性期特化の病院になるにあたり、体外循環技術認定士を持っている臨床工学技士は、今すぐ増やしたいですね。それから既卒者(転職者)は23名中私を含め3人しかいませんので、協調性のある方で雰囲気を変えてくれる方を要望したいですね。

2022年8月には病院長が代わり、急性期特化という方針でハイブリッドの手術室などの増改築が予定されています。今後キタヤード(大阪駅北地区)の開発などにより流動的な人口も増えていくと思いますので、「キタ」を支える急性期病院として、救急を断らない24時間365日応需できるよう、臨床工学技術部が医療現場をサポートしたいと考えています。

 

取材協力

社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 大阪府済生会中津病院 臨床工学技術部
〒530-0012 大阪府大阪市北区芝田二丁目10番39号 Tel.06-6372-0333
採用情報