大和高田市立病院
大和高田市立病院は、「市民から愛され、信頼される病院を目指します。中和地域の中核病院として、地域住民の要望に的確に応える医療を行うとともに、保健医療福祉の連携に努めます」という病院理念のもと、奈良県民、特に中和保険医療圏の住民の方々の急性期医療を支えている病院です。
大和高田市立病院としての重要な役割には
1)市民の皆さんが最も心配しておられる救急医療の充実
2)周産期医療の充実
3)小児医療の充実
4)専門的ながん医療の充実
が挙げられます。
一般救急に関しては、救急診療体制を充実させ、可能な限り救急患者さんの受け入れをおこなう体制を目標としてまいりました。当院では、2021年において2000件以上の救急搬送を受け入れています。これは地域において重要な役割を果たしております。今後も、その体制をさらに強化し、1人でも多くの患者さんを救えるように努力してまいります。
大和高田市立病院の臨床工学科技師長を勤める傍ら、奈良県の臨床工学技士会理事長を務める森諭司(もり・さとし)技士にお話を聞いた。
臨床工学科 森諭司 技師長
Q.臨床工学技士を知ったきっかけ
臨床工学科 森 技師長
高校生の時は野球部に所属しており、その先輩が理学療法士を目指していることを知りました。その時に医師と看護師以外にも医療の仕事があるのを知ったのがきっかけです。医学系学校のリハビリテーションを見に行きましが、機械を扱う臨床工学技士という国家資格があると知り、受験しました。
家族に医療系の人はいなかったので、はじめは医療のことは分からなかったのですが、学校で学び医療のことを知るにつれて、授業もどんどん面白くなって行きました。
Q.大和高田市立病院に入職したきっかけ
兵庫県の淡路島出身なのですが、臨床工学技士の資格取得当時、淡路の病院では臨床工学技士の募集がありませんでした。父が堺市(大阪府)で単身赴任していたこともあり、最初の病院は、大阪の河内長野市の病院となりました。その病院では透析、機器管理、心臓カテーテル検査などを担当していました。当時は、臨床工学技士の資格を持った医療機器メーカーの方が手術室に入ることもある時代でしたので、臨床工学技士の資格を取得後に最初から就職するというのではなく、非常勤で何年か勤めた後に、採用されるという病院もあったように思います。
河内長野市の病院を3年勤めたあたりで、新たな職場で挑戦したいと思いました。そのタイミングで大和高田市立病院での募集があったため、当院に入職しました。
Q.何故、スコープオペレーター業務を臨床工学技士がやることになったのでしょうか?
厚労省が考えている医師の働き方改革が大きなところかと思います。透析とか人工心肺に並ぶくらい、臨床工学技士の仕事の一つになってくると思っています。当院では、大病院と比べると、医師の数も少なく一人あたりの医師への負担が大きくなることがあります。スコープオペレーター業務を臨床工学技士ができると医師への負担も少なくでき、また我々の業務拡大につながると考えています。
臨床工学技士は、20代、30代の若い年代の方が多く働かれていますが、透析患者数も頭打ちしており、スコープオペレーターだけでなく、新たな分野を開拓していく必要があると考えています。
奈良県臨床工学技士会理事長として
臨床工学技士の業務を安定させていくには、医用テレメーターや在宅医療、様々な分野にアンテナを張って行きたいなと思っています。
奈良県には臨床工学技士養成校がありません。ですので、近畿圏で養成校にお声がけして、技士会として、奈良県の各病院の紹介や業務内容を知ってもらう企画をしました。近畿圏内の養成校にお声を掛けさせていただいたところ、良い反響があったので、奈良県に多くの臨床工学技士が来てもらえるような企画を今後も計画したいと思います。
コロナ禍で数年実施できていませんが、技士会の公益事業として、県内の高校のAEDの点検をしています。AEDはメーカーのレンタルで、年一点検と言うのが多いのですが、その間に、もう一回点検を増やして巡回してみると、パッドが開けられていたりします。AEDが安全に使用できるよう取り組んでいければと思います。
奈良県内でも臨床工学技士がいない病院がありますが、臨床工学技士がいなくとも医療機器は稼働しており、適切に医療機器が使用される環境を作る方策を、技士会としても考えていく必要があると思います。
Q.医用テレメーターの論文を出されていますがどのような内容なのでしょうか?
総務省が主となり、院内の電波環境を良くしようという、医療機関における電波協議会というのが各地域にあります。病院協会の先生や多職種でいうと僕ら臨床工学技士の代表などで構成されています。病院内の電波を調査し、それを元に総務省が手引きを作られたりしていますが、そういったものにも参画しています。
テレメーターは医療機器に関連してくることなので、臨床工学技士が管理するのが適切かなと思います。
当院では、医用テレメーターはCEの管理、無線LANは情報システムというような住み分けはできています。帯域がちゃんと管理できていないと、他の患者さんの情報と取り違えて、正しい情報が入ってこないという危険性がありますので、臨床工学技士が医療機器とセットで管理していかないといけない部分です。
※医療機関において 安心・安全に電波を利用するための手引き(pdf)
Q.一日の流れ
8:30~17:15 定時
6:00 プライミング(看護師、早出臨床工学技士、宿直臨床工学技士各1名+有事の際は宿直のドクター)
6:30 1クール目穿刺開始
8:30 定時出勤、 ME室担当、手術室担当等の業務開始
11:00~13:00 2クール目穿刺開始
11:00~14:00 交替で1時間休憩
17:15 退勤
月2~3時間残業
CHDFや新生児の呼吸器準備、病棟での医療機器不具合などで、夜間呼出がある事はあります。
宿直はいますが、医療機器の貸し出しは、基本多めに予備を作っていますので、そこから持って行ってもらっています。
令和5年度より心臓カテーテル検査、治療がはじまります。立上げなので、少しは残業が増えるかと思います。
令和5年度より7名(女性1名)→8名(女性2名)に増員します。
入職者研修
透析業務はチェックリストでどこまでできるようになったか、共有できています。MEセンター業務で、病棟ラウンド・呼吸器チェックなどもできるよう指導していきます。持続的血液濾過透析(CHDF)などまで、一通りの業務を1年程度で覚えて、宿直に入ります。
2年目以降は、平均的に各業務のレベルアップを図っていきます。
資格等支援
透析技術認定士は全員取得しています。
学会発表等について、臨床工学科の予算内であれば、出張で参加してもらっていますが、現在臨床工学技士に診療報酬が算定されている項目は少ないですが、臨床工学技士に診療報酬が付与されていくとすると、専門臨床工学技士、認定臨床工学技士の取得は必要になると思います。
当院では、日本臨床工学技士会の専門臨床工学技士、認定臨床工学技士の取得を目指して、受講費等の予算を支援していく体制を整備できればと考えています。
当院の特色ある業務
呼吸器など医療的なケアが必要な患者さんに対して、メディカルショートステイを実施しています。臨床工学技士は入院中の呼吸器設定の調整や、当院で使っていない呼吸器であれば対象に、勉強会を開いたりして、呼吸器知識のアップデートの機会にもなっています。
大和高田市立病院に来て欲しい臨床工学技士
国家資格を取得している時点で最低限、必要な知識は得られていると思いますが、臨床工学技士の業務はチームで行うので、円滑に業務を進めていくには、多職種とコミュニケーションが必要となります。
様々な業務も同様ですが、最初からコミュニケーションが得意でなくても、様々な事に対して、克服しようと取り組める方が来て頂きたいと思う人材です。