加賀市医療センター
この地域は南加賀医療圏に属しており、圏域の人口は約22.8万人。そのうち加賀市の人口は7万人程度。「加賀市医療センター」は、北陸新幹線の延伸が予定されているJR加賀温泉駅から徒歩5分のアクセス性の高い場所に立地、患者のみならず医療従事者等の通勤環境を改善するとともに、日常的に市民が訪れ、健康づくりや福祉についての情報やサービスを受け取り、それらに関する活動に参加しやすい病院となっています。加えて、自治体立病院としては新しい試みである「全室個室」を採用するなど、超高齢社会におけるこれからの地方自治体立病院のモデルケースとなるよう建築されています。
病院の概要は、病床数が300床(一般214床(うちHCU10床)・地域包括ケア41床・回復期リハ45床)とし、職員数は586名(うち医師52名(研修医含む)2022年4月1日時点)診療科は25科となっている。医療技術部の医療機器管理室に在籍する臨床工学技士は6名(女性2名)で、医療機器管理室・体外循環業務、手術室業務、心臓カテーテル業務・ペースメーカー関連・PTA業務※、呼吸器関連業務、透析関連業務を担当している。今回は、東文一(ひがし・ふみかず)総括主任に話を聞いた。
※Percutaneous Transluminal Angioplastyの略で経皮的血管形成術といいます。血流を確保のため、シャントの一部にシースという針を刺し、血管内にバルーンカテーテルを挿入し、閉塞、狭窄した箇所でバルーンを拡張させ、バルーンの圧力で内側から血管を広げる方法です。
東 総括主任
加賀市医療センターでは大きく3つの分野に分けて業務を行い、3年~5年ごとにローテーションするようにしています。それぞれメイン業務はありますが、それぞれの担当者でも空いているときには忙しい部門への応援にいくなどして円滑にまわしています。
Q. 最近臨床工学技士として増えた業務はありますか?
これまで医療機器管理室として院内の呼吸器への立ち合いを含めた対応は行っていたのですが在宅業務にはタッチしていませんでした。しかし、現在は在宅人工呼吸器などの遠隔診療やネーザルハイフローの保険適応など、在宅呼吸器へ関わる事が増えてきましたので、在宅呼吸担当者を院内呼吸業務担当に兼務として新たに設けました。
1日のスケジュール
定時 8:30~17:15(医療機器管理室/オペ室)
早番 8:00~16:45(休み明けの医療機器返却後点検の担当者)
=透析=
早番 7:00~15:45
中番 8:00~16:45
遅番 10:30~19:15
東総括主任のある日の勤務 ※透析の早番業務の場合
7:00 出勤→準備
8:00 朝礼(腎ケアセンター)
8:15 穿刺開始
8:30 朝礼(医療機器管理室)
8:45 続きの穿刺→医療機器管理室返却点検業務等
10:00 休憩(昼食)1時間
11:00 医療機器管理室返却点検業務等→透析終業操作
13:30 午後の透析受け入れ→穿刺
14:30 翌日の準備→遅番業務への引き継ぎ・交代へ
15:45 終業
当直、夜勤業務はなし。オンコールは、それぞれ腎臓ケアセンター関連技士2人、カテーテル関連技士2人が交代でまわしている。
新人で入職したらどのような研修を行いますか?
4月~6月までは、医療機器管理業務を覚えてもらいます。その後、透析やオペ室業務の保守管理など各部署の業務を覚えてもらいます。入職する前の面接で希望を聞きますので、本人の希望も加味して配属先を決めます。
福利厚生制度としてはどのようなものがありますか?
専用玄関を持ち職員も利用可能な「病児病後児保育室かもっ子」を配しているのでお子さんがいる職員も安心して働けます。
資格や学会活動に対しての補助はありますか?
業務という扱いになれば病院側が費用を負担します。発表以外でも年に1回、学会参加への補助があります。資格に関しては、個人のスキルアップに関するものは個人負担ですが、病院側が必要と認めた場合は補助が出ることになっています。
教育活動
准看護師の資格も持っているということもあり、看護学校で医療機器管理についての授業を10年以上担当しています。看護師としておさえておきたい業務はもちろんですが、「ここから先の業務は臨床工学技士がみてくれるので頼ったら良いですよ」と看護師と臨床工学技士両方の視点でアドバイスをすることができています。以前は、小松短期大学(現在の公立小松大学)の臨床工学技士を養成するコースでも非常勤講師として約3年間講義も担当していました。
地域に対しても中学校にて体験講話“ボランティアとは?”“臨床工学技士って何?”などを10年以上担当していますし、小学校や高校においても様々なテーマに対し依頼を受け講師として活躍させて頂いています。
スマートシティ加賀
2024年に新幹線駅の開業を予定している加賀温泉駅周辺地域を中核とし、デジタル・先端技術を活用し、各地区をネットワーク化。新たな先端サービスの導入を図り、新産業の集積を目指す。加賀市はいち早くDXを実現し、消滅可能性都市896市町村を代表してニューノーマル時代の新たな地方創生モデルの実現を目指している。
特に、デジタル田園健康特区としてデジタル技術を活用した健康や医療の課題解決に向け重点的に取り組んでいる。すでに行われた実証導入では、これまで人の手で行っていた清掃・案内・配送等のサービスについてロボットを使用して実施。このことにより、清掃業務・看護業務等の負担軽減の可能性を確認した。
東 総括主任「ロボット支援は、国内初の取組みです。入院患者で感染症などを理由に売店に買い物へ行けない代わりにロボットが買い物に行ってくれます。看護師など病院スタッフも人手がいないときにはすごく助かるといった声もあがっていました。」
バルーンがつなぐ病院と地域
東総括主任には、臨床工学技士のほかにもうひとつの顔がある。
バルーンのぶんちゃん”として親しまれています。娘が小さいころの話なのですが、街でバルーンアートをしている人から風船がもらえませんでした。あまりにも悲しそうな娘をみて何とか喜ばせてあげたいと思い作ってあげたのがきっかけです。それから近所の子どもたちにも作ってあげていたら、地域の障害者施設のイベントでバルーンアートを披露してほしいという依頼がありそこから活動が拡がりました。娘が3歳のときにはじめて、その娘ももう成人しましたからもう17年間活動を続けていることになりますね。多いときには、年に60ステージ以上こなすこともありましたよ。
Q.やりがいは?
地域の方々と病院で出会っても病気の時ですから元気のない姿です。しかし、バルーンを通して地域の子どもたちやお年寄りたちとふれあうことで元気な姿を見る事が出来、さらにパフォーマンスをしている時に声をかけてもらうこともありますよ。それと、手洗いやマスクの着用など周知を行なう事にも貢献。地域の人たちの健康管理にも一役かえていると思います。実際にパフォーマンスの打合せやパフォーマンス終わってから病院への要望や不満を伝えてきたりする事もありますから病院の声の目安箱にどんどん意見を入れて下さいと声を掛けさせて頂いています。
Q.病院として地域の声を実際に取り入れたことはありますか?
個人としては町の集会でお話をさせて頂いたり、他の自治体から児童への感染指導を併せた行事の一つとしてお話(インフルエンザやかぜの予防方法について等、今はコロナの予防の再周知ですね)をする機会を頂きバルーンと併せて講演をさせて頂いたりしています。病院としても地域の声を受けて出張講座(老人会で糖尿の話や血圧の話等を行う)を開いたりしています。病院への要望というものは病院の中ではなかなか聞くことができない為、地域の声としてあげられてくる意見は貴重な意見として吸い上げることができています。
また、嬉しい声も聞けました。イベントを通じて臨床工学技士という職業を知ってくれたという子が、「ぶんちゃん、臨床工学技士の学校に入ったよ」と教えてくれました。将来、加賀市医療センターに来てくれたら最高です。
求める人材
入職時の面接では、臨床工学技士という職に対して資格やお金のためだけではなく、同じ方向に向いているか医療従事者として何をすべきであるのかといった覚悟や責任についてしっかりと自分の考えを言葉にすることができるかという点を重要視しています。あとは、できれば地元の人に入職してもらいたいです。地元の人でなくても加賀市に住んでもらえる人が望ましいですね。
見学希望は、0761-72-1188(代)までお問い合わせください。