【臨床工学技士インタビュー】山口県の“最後の砦”として医療に貢献。ローテーションで業務を一通り経験してからスペシャリストの道へ。大学病院として”臨床・研究・教育”この三本柱を重視。医師との共同研究で、より一層の高度な医療提供を!

山口大学医学部附属病院

山口大学医学部附属病院は、30診療科と24の診療部、病床数が756床ある。”高度救命救急センター“は国立大学病院初の設置で、山口県のドクターヘリ、自治体と連携したドクターカーの運用や新生児のドクターカーの基地病院として山口県全域の救急医療体制を担っている。病院再開発整備事業により2019年に、新病棟が開院。手術室は12室から16室に増室、集中治療室も12床から16床に増床したことで県内全域からより多くの緊急度・重症度が高い患者の受け入れが可能となった。今回は、山口大学医学部附属病院のME機器管理センターに所属する臨床工学技士に話を聞いた。

ME機器管理センター

手術部で人工心肺を専門としている冨貞公貴(とみさだ・きみたか)主任と循環器内科でカテーテル業務などにあたる入職5年目の小野寺咲乃(おのでら・さきの)技士に話を聞いた。

冨貞主任「山口大学医学部附属病院のME機器管理センターには、18人(女性3人)の臨床工学技士が所属しています。大きく分けて、手術部と透析・循環器の2グループがあり集中治療や機器管理は両グループが兼務しているという業務体制です。」

冨貞 主任

Q.入職するとどのように研修をしますか?

OJT制度を採用しています。約1年をかけて研修をして知識と経験を積んでもらいます。研修は、透析、人工心肺業務含む手術部各業務、集中治療、心臓カテーテル領域、機器管理などを3週間~1か月かけてローテーションしていきます。様々な業務をするにあたって必要な”循環・呼吸・代謝”の基礎知識をしっかり学んでもらいます。

当センターのチームとして、大きくわけて手術部業務、透析・循環器業務の2グループで、集中治療領域や機器管理業務は両方のチームが一緒にやっているという状況です。完全に分離しているわけではなくて少なからず色々な部門に顔を出しています。ある程度経験を積むと、それぞれの専門性を高めます。もちろん途中で別の分野へ異動したいなどの希望もヒヤリングする機会があります。

※「On the Job Training」の略称で、先輩社員が後輩に対し、業務に必要な知識やスキルを実践しながら伝承する教育手法

地元山口県の医療に貢献

小野寺咲乃 技士

入職5年目の小野寺技士は、山口県の周南市出身。広島の大学で4年間学んだあと山口大学医学部附属病院へ入職。

Q.臨床工学技士を目指したきっかけは?

医療と工学の両方に携われる仕事ということで興味を持ちました。大学のオープンキャンパスへ行って臨床工学技士の道へ進もうと思い入学しました。

Q.現在はどのような業務をしていますか?

現在は、心臓カテーテル室業務を担当しています。血行動態のモニタリングや血管内の超音波や光を利用したイメージング画像IVUS、OCTという光で血管内をみる器械を操作します。医師とディスカッションして治療を進めていくというのがおもしろいと感じています。最初は知識がなかったので何か言われてもその通りにするしかできなかったのですが、最近は知識も経験も増えたので医師の手技に私の提案が受け入れられることもあります。そんなときはやりがいを感じますね。

※OCT:Optical Coherence Tomography(光干渉断層撮影)、光の干渉性を利用して試料内部の構造を高分解能・高速で撮影する技術

Q.大事にしていることは?

カテーテル治療に入るときには特にコミュニケーションが大事だと思っています。医師が手技をしているときにこちらから状況を伝えるのが難しいです。声をかけるタイミングが難しいですね。医師は、X線の画像を見ながら処置をしているのですがそちらに集中していると、血圧が下がっていることや不整脈に気がつきにくくなります。そのようなときには、「血圧下がっています」「不整脈出ています」と積極的に声をかけていくようにしています。医師の3つ目4つ目の目になれるようにチームみんなで取り組んでいます。

1日のスケジュール

小野寺さんのある日の勤務 (心臓カテーテル業務の場合)

定時8:30~17:00

8:10 出勤、朝の点検/カテーテル室の準備
9:00 心臓カテーテル検査・治療
12:00 休憩(昼食)1時間
13:00 心臓カテーテル検査・治療+急患待機
16:00 空いている時は、勉強や研究の時間に充てる
17:00 終業

月の残業時間は、10時間程度
ICUと救急担当者は当直(翌朝8:45まで)あり。月に3回程度。
手術、カテーテル業務の担当者は、月に4回程度オンコール対応あり。

医師との研究

Q.現在力を入れて取り組んでいることはありますか?

3年くらい前からデータを集めて循環器内科のカテーテル治療を専門としている医師らと研究論文の作成をしています。冠動脈にはたくさん分岐があり、その分岐部の角度について研究しています。分岐部の冠動脈治療に対しての研究でOCTという血管内を観察するデバイスと、冠状動脈のCT画像の関係を調べることにより、手術前に冠動脈の治療をするにあたって分岐の血管が閉塞したり狭窄したりする予測立てができるようになりました。すでに学会で発表をしていて、今後論文が雑誌に掲載される予定です。

Q.小野寺技士のように研究に取り組みやすい環境ですか?

そうですね。技士長をはじめ、私も体外循環や人工心肺について雑誌などに投稿経験があります。大学病院ですので”臨床・研究・教育”この三本柱を大切にしています。山口大学医学部附属病院には、それぞれの分野にスペシャリストがいますのでアドバイスをもらいやすい環境です。また、教育の部分は、臨床工学技士の養成校の学生を迎え入れて実習を行なっています。どれも譲らず力を入れています。

Q.学会活動や資格取得に対する補助はありますか?

冨貞主任:「基本的にあります。旅費や宿泊費、資格取得のための講習会の費用や更新費も含めて病院からの補助があります。モチベーションの維持につながればということで支給されています。」

医療機器のスペシャリストとして

山口大学医学部附属病院は、2015年から病院再開発整備事業を進めている。この整備事業は2回目で、国立大学病院で2回目の整備事業をするのは初めて。2019年に再整備の主要事業である新病棟が開院するにあたりME機器管理センターの臨床工学技士たちも尽力した。

私の場合手術部に関わっていましたので、それぞれの部屋の電気容量、コンセントの配置、ガスアウトレットの配置を決めるなど新棟の設備的なところについて臨床工学技士として関わりました。当然、手術部には多くの医療機器があり、様々なところに注意を払いながら手術部の医師や看護師らとみんなと協力しながら進めました。大規模な引っ越し(移転)となりますと手術をストップさせる必要があるので、平日の手術が中止にならないようにゴールデンウィークの間に移りました。新棟に移ったあとも機器がきちんと作動するかという点検は臨床工学技士が担当しました。軌道に乗るまでしばらく緊張感がありましたね。

求める人材

その人のキャラクターもあると思いますが、誠実で向上心のある人がいいですね。チーム医療ですので勉強だけでなくコミュニケーション能力も大切です。医療や医療機器は日々進歩していますので勉強というのは働きだしてからも欠かすことができませんのでスキルアップは欠かせません。

 

取材協力

山口大学医学部附属病院 ME機器管理センター
〒755-8505山口県宇部市南小串1-1-1 Tel.0836-22-2111(代表)