【臨床工学技士インタビュー】患者さんの為に研究、開発、臨床する鳥取大学医学部附属病院 「医療機器を使って社会復帰できるのであれば、それを徹底的にサポートするのが自分たち臨床工学士の仕事!!」

鳥取大学医学部附属病院

1893年4月1日に開設された鳥取県立病院米子支部病院を前身とする歴史の長い国立大学病院。病院理念を「地域と歩む高度医療の実践」と掲げている。

高度医療:
2010年に、全国に先駆けてロボット手術を導入。その際に設立した低侵襲外科センターにおいて、全外科系診療科と麻酔科、そして看護師、臨床工学技士、事務職員が垣根なく連携して、未知の新技術であったロボット手術を安全に実施できる体制を作り上げ、のべ手術症例数は2,000を超えて、心臓弁膜症の手術にも応用されている。低侵襲外科センターの成功は、真のチーム医療が芽生えた出来事で、その経験が他の領域や診療科でも活かされている。

地域とのつながり
ご意見が最も多かった外来待ち時間の短縮に向けては、2年間をかけて、立体駐車場の整備、外来看護体制の見直し、医師事務作業補助者の増員、外来呼び出しシステム「とりりんりん」の開発などを行った。
地域の診療所や医療機関との連携をスムースに行うことが、地域包括ケアシステムの構築のための基盤。病院レベルでは、米子市の急性期4病院との連携協定を結び救急、外来、検査などの機能分担や連携を図ることで各病院の役割を明確にして医療資源を有効に使う体制を整えた。

高度医療の鳥取大学医学部附属病院を支えるMEセンターの松上紘生(まつがみ・ひろみ)技士長、古川英伸(ふるかわ・ひでのぶ)技士、清水亮(しみず・りょう)技士にお話を伺った。

 

臨床工学技士 古川英伸技士・清水亮技士

清水 技士(左)・松上 技士長(中)・古川 技士(右)

Q.臨床工学技士になろうと思ったきっかけは?

古川 技士古川 技士

理系の大学を出て就職活動をしている時に、新聞をみていたら医療系で機械を使った職業があると言うのを知って、養成校に2年行って、臨床工学技士の資格を取りました。理系の大学を出て就職活動をしている時に、新聞をみていたら医療系で機械を使った職業があると言うのを知って、養成校に2年行って、臨床工学技士の資格を取りました。

 

清水 技士清水 技士

両親が医療従事者で、臨床工学技士と言う仕事があるのは聞いていて、進学の際に、医療従事者になりたいと言う思いから、大学の臨床工学科に進学しました。

Q.病院見学・就職活動はどうでしたか?

古川 技士古川 技士

クリニックや総合病院などありますが、大学病院が一番色んな事が出来ると思ったので、大学病院を希望していました。実家は福岡ですが、一番近い募集のある大学病院と言うことで、鳥取大学医学部附属病院を受けました。

 

清水 技士清水 技士

実習は鳥取大学だったのですが、色々な病院見学をしましたが、鳥取大学の医療機器は最新ですし、職員の学ぶ姿勢のある環境で働きたいと思いました。

Q.現在はどのような業務を担当されていますか?

古川 技士古川 技士

現在18年目で、MEセンターで機器管理と、人工心肺を担当しています。医療機器は中央管理で約10種類1,000台以上あり、日々30~50台ほどの返却がありますので、保守管理・定期点検などを行っています。手術室の現場貸出の定期点検・日常点検・保守管理や、病棟貸し出しの医療機器のラウンド点検なども行います。

 

清水 技士清水 技士

現在は3年目で、不整脈、透析、神経モニタリング、MEセンターでの機器管理業務を行っています。

Q.お仕事の一日の流れを教えてください。

古川 技士古川 技士

古川技士(人工心肺):定時8:30~17:00
7:30 出勤・準備(前残業)
8:30 患者入室、人工心肺業務
13:00 片付け
14:00 お昼休憩
15:00 定期点検、使用後点検など機器管理業務
17:00 終業
手術は1症例3~4時間が多いですが、長くなる手術はありますので、月間20~30時間残ようになります。

 

清水 技士清水 技士

清水技士(不整脈:アブレーション、ペースメーカー) :定時8:30~17:00
7:45 出勤・準備(前残業)
8:30 患者入室(1症例目)
12:30 午前業務終了、お昼休憩(症例数などにより不規則)
13:00 午後の準備(1日2~3症例ある)
13:30 患者入室(2症例目)
16:30 片付け
17:00 終業

Q.目標について

古川 技士古川 技士

医者と同じレベルでの会話が出来ないと高いレベルでの医療に携われないと思っていますので、体外循環認定士は持っているのですが、専門臨床工学技士認定制度に体外循環の認定制度が加わる予定なので、そちらを取得したいと思います。

 

清水 技士清水 技士

まだ3年目なので認定士の取得は出来ませんが、来年は不整脈、呼吸、透析の認定士を取りたいと思います。技士長をはじめとした先輩方からは、まだ25歳なので、広角に学ぶことが大事な時期と言われていますので、広く学んでいきたいと思っています。

Q.どのような方が臨床工学技士と言う仕事に向いていると思いますか?

古川 技士古川 技士

好奇心が旺盛で、新しい事、新しい治療などに興味が持てる人が良いと思います。学生であれば、何が面白いと思うか、色々な病院に見学に行って、やりたい業務を探した方が良いと思います。入職して臨床に入ると、日々勉強なので。

 

清水 技士清水 技士

謙虚さを持っていて、知的好奇心が旺盛な方が良いと思います。勉強は日々しないといけないことなので、古川さんの言うとおりだと思います。

 

松上 技士長松上 技士長

二人は大前提過ぎて、お話していませんでしたが、患者の医療に優しく携わりたい人と言うのが大前提になります。患者さんの為に研究するし、患者さんの為に開発するし、患者さんのために臨床をします。採用面接などしていて感じるのですが、医師や看護師など他の医療職と違って、患者さんの為に何かやりたいというモチベーションが無い人が多いように感じます。そういう人は一緒に仕事が出来ないので、当院では採用しません。

 

松上紘生技士長

Q.入職後研修

入職後1年半は4ヶ月単位で、全業務をローテーションして、各業務の到達目標を定め基礎知識や技術を習得してもらいます。

① ICU・救命センター業務
補助循環(ECMO、インペラ※、IABP※)、呼吸器療法、血液浄化、機器管理、体温管理などを学びます。

② 手術室業務
機器管理がメインで、内視鏡手術・ロボット手術・麻酔器などの準備、メンテナンス、片付け大量出血、気道トラブル、機器のトラブルなどに対処します。

③ 血液浄化・心カテ業務
血液浄化業務、心臓カテーテル業務を学びます。

④ 不整脈
アブレーション・ペースメーカー・ICD・CRT※を学びます。
主にペースメーカーなどデバイスを扱ってもらいます。

4か月で各到達目標を設定しています。当直で多い症例は、心カテ、緊急の透析、補助循環ですので、④不整脈に入った時には、当直に入ってもらいます。夜勤や休日日勤に入っても、全てが出来るわけではないですので、必要に応じてオンコールの到着を待ちます。山陰、中四国でも珍しい治療と言うと、高気圧酸素治療装置は第2種装置※があります。
ローテーション業務終了後は、希望配置を聞いた上で、業務配置をします。

インペラ:左心室に留置し循環を補助するための超小型のポンプを内蔵したカテーテル装置
IABP:「Intra Aortic Balloon Pumping」(大動脈内バルーンパンピング)の略称で、心臓のポンプ機能が低下した患者さまをサポートする補助循環法の一種。
CRT: Cardiac Resynchronization Therapy, 心臓再同期療法とは重症心不全に対する新しいペースメーカー療法で、ペースメーカーを使って心臓のポンプ機能の改善をはかる治療方法
第2種装置:4~6名程度の患者を収容できる装置で、医師や看護師も同時入室して患者の容態を監視できるメリットのある大型な高気圧酸素治療装置

Q.組織の形成

現在MEセンターでは、技士長の私しか役職がありませんので、各業務に責任者を置いていきたいと思っています。現在はまだ5~6年の技士が多い若い組織なので、5~6年では認定士をとったばかりで、ようやくスタートに立ったスペシャリストとは呼べないような状況なので、5年以上計画になりそうですが、まずは主任にふさわしいスペシャリストになって欲しいと思っています。

Q.休暇など福利厚生

女性は24名中5名ですが、現在育休・産休をとっている職員はいませんが、過去には、育休をとった方はいます。男性も取得機会のある技士もいません。
対象になる方が、時短希望があれば対応しますが、その方は、時短希望がなく、通常勤務で当直のみ免除でした。

休暇についてはリフレッシュ休暇と言う制度がありますので、必ず所得しなければならない有給休暇5日を含めて、土曜日から翌日曜日までの9連休を年に2回は、交代制で取るようにしています。

Q.学びの環境

認定士は、業務を行う上でスタートラインになりますので、配置された業務の認定士は、4年目以降受験資格を得次第とってもらいます。受験料更新料は個人になりますが、受講料、旅費や宿泊費は、病院が配分してくれている経費の範囲で支援しています。
学会は、自分磨きの為に、日頃の業務を日々見直すことを目的に、発表しています。
前年度中に、翌年度の学会発表、学会見学の予定を出してもらいます。こちらも、交通費や宿泊費は病院が配分してくれている経費の範囲で支援しています。
2年に1演題のペースで、年に16件ほど行っています。
大学病院で働く以上は、研究もするし、発表もしていかないと、大学病院に勤める意味がないですから。

国立の大学病院と言う場所で、技士長をさせて頂く以上は、博士は持っていないとポテンシャルを生かせないと思いますので、再生医療で博士を取得しました。
国立大学病院の技士長と言うだけでは、機器開発、共同研究したいといっても、誰も話を聞いてくれません。博士と言う切符を手に入れることで、外部とも交渉しやすくなりますし、話も聞いてくれます。

デジタルモニターアラームと電子カルテを連動させて、ナースコールDB・ナースコールを連動させ患者の状況をリアルタイムでPHSに転送、即時状況確認可能な看護の質を向上させるシステムも作りました。

そのほか、例えば、人工呼吸器回路の結露防止対策として、自前で作っていたものの精度を上げるために、地元の企業と連携し「FIT人工呼吸器回路カバー」を開発しました。

FIT人工呼吸器回路カバー開発秘話:https://www.hb-fit.jp/yume/(外部リンク)

医療機器を使って社会復帰できるのであれば、それを徹底的にサポートするのが自分たち臨床工学士の仕事。患者さんが人工呼吸器をつけて退院したからには、生活の質を落とすことなく、ご家族も含めて社会復帰するところまでサポートしなくてはいけない

Q.鳥取大学医学部附属病院の特徴

学ぶための費用は支払ってくれる理解のある大学なので、研究や学びたい人にはとてもいい環境です。

Q.欲しい人材について

勉強をする人。人の話を聞ける人。
ゴールが患者さんに向いている人。

 

取材協力

鳥取大学医学部附属病院 MEセンター
〒683-8504 鳥取県米子市西町36番地1 Tel.0859-33-1111(代)
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