【臨床工学技士インタビュー】総合的な診療体制を基盤とした高度医療を展開して、様々な疾患や症状の患者さんに幅広く対応する国立国際医療研究センター病院

国立国際医療研究センター病院

国立国際医療研究センター(NCGM)は、明治元年(1868年)に山下門内に設置された、陸軍病院最初の兵隊仮病院をルーツとしている。そのセンター病院は「最善の総合医療を提供し、疾病の克服と健康の増進を通じて社会に貢献すること」を理念としている。
総合的医療を基盤とした高度急性期病院として良質な医療の提供、国際感染症対応や糖尿病診療、エイズ治療、救急医療などに特色がある。全ての診療分野で専門医及びスタッフが連携を取り合う診療体制が整っており、ナショナルセンターとしては唯一の総合病院。
地域がん診療連携拠点病院としてがん診療にも力を入れており、多くの合併症を併発する患者さんやご高齢の患者さんの外科手術、複雑な内科疾患への対応、原因不明の疾患等に対処する総合診療も特長としている。周産期や母子への対応、不妊症治療等も充実しており、臨床ゲノム診療科外来では遺伝カウンセリングを行う。特定機能病院として、総合的な診療体制を基盤とした高度医療を展開しており、様々な疾患や症状の患者さんに幅広く対応。
国際診療部を設置して外国人患者診療を推進しており、外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)の認証を受けており、日本国際病院(ジャパン インターナショナル ホスピタルズ)としても推奨されている。
国立研究開発法人の病院として、臨床研究中核病院となることを目指し、研究所、臨床研究センター、国際医療協力局等を併設している特徴を生かし、革新的な医薬品や医療機器の研究開発、国際展開を推進し、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担っている。

診療と研究を統合した高度医療を提供する国立国際医療研究センター病院の臨床工学室の深谷隆史(ふかや・たかし)技士長と1年目の松本侑奈(まつもと・ゆうな)技士にお話をお伺いした。

深谷 技士長(左)・松本 技士(右)

 

松本侑奈 技士

松本 技士

進学したきっかけと就活

「コード・ブルー」という医療ドラマを観て、ERが格好いいと思って、救命救急士になりたかったことが、医療系進学を決めたきっかけです。
医療系学校のオープンキャンパスで色々な医療系の資格があることを知り、実験や物理の授業が好きで勉強が苦にならない科目だったことと、機械の勉強が好きだったので、医療系で得意分野を生かせる仕事が出来るのではないかと臨床工学技士を目指しました。
就職は、千葉か都内で三次救急に対応している総合病院で、CE業務が揃っていて色々な事が学べる病院を見学して回りました。当院は、4年間採用が無かったため、先輩は皆3年以上働いている方でした。私の通っていた学校では「3年で現場を一通り経験するので、3年で一人前になる」と聞いていたおり、誰に質問しても業務について理解できるという環境なら、自分の成長が早いのではないかと考えました。また、4年前に採用された人が辞められていないということは、離職率が低い病院なのだなと思いました。

実際に現場に入ってみて

急性期病院で、人の生死が実際に起きている現場なので、昨日呼吸器点検した患者さんが今日亡くなっているときなど、心に迫るものがあり、大変な仕事だと実感しました。一年目としていち早く知識を身につけ、機器を通してCEとしての治療に対する提案が出来るようになるのが自分の仕事だと思います。

松本技士の一日の流れ

ME室の仕事がメイン(人工呼吸器、保育器、ペースメーカー等)
定時 8:30~17:15

8:30 朝礼
8:40 稼働機器リスト確認(病棟ラウンド、稼働点検)
11:00 電子カルテ打込(患者さんの情報や、稼働機器確認と使用状況報告など)
12:00 昼食
13:00 呼吸器の終業点検、ラウンドしている看護師からの電話連絡で機器トラブル対応
17:15 終業(終礼はなく、業務が終わった順に帰る)

入職1年目なので当直は無し。

臨床工学技士にぴったりな高校生像

化学、物理、生物の学校の勉強がそのまま生かせる職業です。
透析で何をやっているのか理解できないので、化学の知識は必要です。透析液も、化学式で書いてあって電解質の量がちょっとずつ違います。化学が分からないと、どの透析液を使った方が良いかということが分かりません。物理は、ME室でも使います。オームの法則とか、呼吸器をやっていれば、ボイルシャルルの法則とか、電気の話も空気の話もありますので。
また勉強だけはなく、医療従事者という意味では、多職種の人とは必ず話さないといけませんから、コミュニケーション力も重要になってきます。

学校で習わない実践的な知識

国家試験では医学全般という科目があるのですが、病院には色々な疾患のある人がいて、実際に病院に入ってから覚えることが多いです。透析は腎臓が悪いだけじゃなく、自己免疫疾患のある患者さんがいたりして。『強皮症って何?』など、学校で習うことが無いので、現場で覚えていくしかありません。

 

臨床工学室 深谷隆史 技士長

深谷 技士長

入職研修について

方針としては、常に目標を掲げるよう教育しています。
1か月目は、当施設は広いので、先輩に帯同しながら「迷子にならないように病院内を移動しよう」と言っており、まずは通勤と病院勤務に慣れてもらうのが目標です。
2か月目以降は、本格的なトレーニングが始まり、翌年の1月4日以降に当直のローテーションに入ってもらうことが目標になります。
透析室3か月、血管造影室3か月、ME室1か月、ICU 1か月の計8か月で当直に必要なトレーニングを行います。
12月に先輩技士とお試し当直を1回やって、当直室の場所や鍵の借り方、シャワー室など当直での時間の過ごし方を体験してもらいます。当直で困ったことがあれば、各業務を担当する主任に連絡をしてアドバイスをもらうことになっています。
2年目は1年間透析をやってもらって、3年目から業務ローテーションに入ってもらい、透析技術認定士の取得を目指します。4年目以降は、通常業務のキャリアを積みながら【人工心肺】か、【不整脈】(アブレーション・ペースメーカー・ペースメーカー外来)を選択し、さらにトレーニングを続け専門性を高めていきます。

臨床工学科の組織について

14名(女性5名、男性9名)の組織です。A・Bチームに分けてローテーションします。A(外科系)チームはICU、手術室、ME室業務を行い、B(内科系)チームは透析室、血管造影室、不整脈業務を行います。
休日は、土曜日は透析室が3人とME室が1人、日曜はME室が1人、祝祭日は曜日によりますが3〜4人が勤務し、毎日当直として1人が院内待機します。週休2日制になっていますので、休日勤務をした場合には、平日がお休みとなります。育休産休を積極的に取得するよう推奨されています。
残業は月間10~20時間程度です。持ち回りの専門分野が2つとかになってくるので、残業時間は短いですが、業務としては、難易度の高めな環境かと思います。

業務の特色について

HIVでも新型コロナ感染症でも対応します。透析も人工心肺もしますし、心臓カテーテル治療もします。一般の人と同じ治療を全て出来る環境があります。これは当院の特徴だと思います。
感染症の正しい知識が指導されているということもありますが、陰圧室(室内の空気や空気感染する可能性のある細菌が外部に流出しないように、気圧を低くしてある病室)というのがあって、各部署に陰圧個室管理ができるような環境が整えられています。

国際協力について

ベトナムでは医療機器管理をする意識が高くなく、機器管理が十分ではなかったので、機器管理を根付かせようという活動をしています。ベトナム版JIS規格を作るというイメージのプロジェクトです。
JICAなどの世界各国の色々な団体が援助をしているので、現地には最新の呼吸器や透析装置などがありますが上手く運用されていない機器も多くあります。主任に担当してもらっていますが、年に2回ベトナムに出張します。1回目は現地での研修に行って、2回目は研修の成果を検証に行きます。この間にベトナムからも1週間来日し当院に研修に来てもらっています。

医工連携室について

医工連携室では、国立国際医療研究センターの職員から、臨床現場での困りごとを臨床ニーズとして募集を行い、企業とのマッチングを支援しています。
東京都医工連携HUB機構と共同で、平成28年度より定期的に臨床ニーズを発表する会を開催しています。現在までに15回の発表会を開催し、再発表を含め、累計273件の臨床ニーズが発表されました。臨床ニーズマッチング会を通して20件近い共同研究等が進んでいます。共同研究を進める中で外部の助成金を獲得している案件もあり、助成金獲得の実績も少しずつ増えています。さらに、この共同研究から創出された成果において、製品上市に繋がった案件もあります。

求人について

一生懸命に取り組む方が望ましいです。専門学校でも大学でも学歴は問いません。私自身専門学校卒ですので、学歴に関係なく技士長の職に就ける病院ですので気になりません。
本人が必要と感じた時に、放送大学などで学士号を取れば良いですし、専門性を深めて修士号・博士号を取れば良いと思います。

 

取材協力

国立国際医療研究センター病院 手術管理部門 臨床工学室
〒162-8655 東京都新宿区戸山1丁目21-1 Tel.03-3202-7181
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