【臨床工学技士インタビュー】高度医療に従事するスペシャリスト業務を覚えた後ジェネラリスト業務を経験できる福井県立病院

福井県立病院

福井県立病院(ふくいけんりつびょういん)は福井県福井市にある県立病院。総病床数・診療科数ともに県内最大(病床数は北陸で最多)の規模をもつ病院であり、三次救急医療、精神医療、高度がん医療などを担っている。

当院は1950年(昭和25年)に福井県立病院(設立時100床)として設立され、同年に設立された福井県立精神病院(設立時150床)と、2000年(平成12年)に組織統合され1067床の新しい福井県立病院として再整備されました。2007年(平成19年)に現在の新病院が竣工、2011年(平成23年)には日本海側初となる陽子線治療施設の運用を開始しています。現在では高度急性期医療へ特化すべく病床の削減と再編を行い、許可病床759床(一般551床、結核6床、感染症4床、精神198床)で診療にあたっています。市街地に立地し、北米形式の救急救命センターを持ちながら精神科救急合併症病棟をもつ特色のある病院で、中央医療センター、こころの医療センター、救命救急センター、母子医療センター、健康診断センター、がん医療センター、それに陽子線がん治療センターをあわせた7センターで運営を行っています。

福井県最大病床数の福井県立病院の臨床工学技術室中村貴幸(なかむら・たかゆき)室長と竹内裕太郎(たけうち・ゆうたろう)主査にお話を伺いました。

竹内裕太郎主査に聞いてみた

竹内主査

竹内主査が臨床工学技士になるきっかけ

高専に5年通っていたのですが、就職するときに自動車も、電気も、飛行機もリーマンショックで下火になって採用もなくなったので、医療はどうだろうと調べた時に臨床工学技士というのを見つけました。

専門学校の専攻科に行くと1年で受験資格が得られるということで、専攻科の入学資格に足りない単位は2科目放送大学で取得して、専門学校に入学し臨床工学技士の資格を取りました。高専を出ると準学士、専攻科を出ると学士になります。

工学を学んでいたため工業系の仕事、医療メーカーを志望していたのですが、現場を知っておいた方が良いということで、病院に勤務することにしました。現在は臨床の方が仕事をしているという実感も沸いていますので、病院の業務にやりがいを感じています。

福井県立病院へ入職

学校は大阪でしたが、就職先は地元の総合病院で働きたいと思っていました。そんな時に福井県立病院で募集があり、応募しました。4月に専科に入った翌月の5月初旬に募集が出てしまいました。その後、6月に試験を受けて、7月に決まってしまったので、他の病院を検討する間もなく、就職活動が終わりました。就職活動が終わってから、あちこちで就職活動フェアが始まりました。他の病院のことは知らないのですが、こちらの病院では全ての業務を経験できているので、良かったと思っています。

将来の目標は、救急、集中治療室、災害に関わる業務に関わりたいと思っています。携わる業務は極めたいと思うので、呼吸と集中治療は専門認定士を取りたいと思います。

臨床の指導の業務もありますので、将来的には、学会などで発表していくような業務もしていきたいと思います。元々メーカー志望ですので、工業を極めて何かを生み出していきたいという願望もあります。

竹内主査の一日の流れ

定時 8:30~17:15

8:30 アブレーション
13:00 お昼休み
14:00 ME機器管理(人が足りない部署で呼ばれればそちらの業務をヘルプ)
17:15 終業

人工心肺以外の教科書に載っている業務は一通りやらせていただきました。

やりがい

救急搬送で入院した患者さんが元気に帰っていたというのを看護師さんから聞いた時です。

趣味

休みの日は、ゴルフ、釣り、キャンプ、スキーをして、ストレス発散できるような趣味に時間を割いています。今年は船舶の資格を取得しました。

高専・工業高校生に向けて

ジェネラリストとして一通りの業務が経験できる病院で、臨床工学技士の資格で出来ることはほぼほぼやりつくせたので、福井県立病院でよかったと思います。

何をやりたいか迷ってる工業高校の人の将来の選択肢に入ると良いと思っています。工業的センスってなかなか育たないんで、実験、制作実習などの実践的な学習をしていた人は臨床工学技士は良いと思うんです。医療機器メーカーに進むとしても、臨床工学技士という資格があると、開発の仕事にも回れます。全部が全部血を見る業務ではないので、是非、工業的センスを医療に生かしてもらえたら良いんじゃないかと思います。

中村貴幸室長に聞いてみた

中村室長

福井県立病院に入職したら

当院には現在13名の技士が在籍しその内女性が5名、平均年齢30歳、7名が20代の若い組織です。年々人員は増えているのですが、業務内容が体外循環や血液浄化、手術室、高気圧酸素療法、アブレーション、ペースメーカーなど、高度な専門知識が求められ、ジェネラリストでは対応出来なくなってきていますので、スペシャリスト教育へ転換している過渡期となっています。

入職1か月は現場の業務を見学することと並行して、看護師や多職種と合同で公務員倫理や接遇研修、医療安全、放射線業務や検査業務、診療報酬について、社会人としての基本などを一通り習うオリエンテーションが行われます。その後新人の適性を見極める期間として、1か月間技士の全業務を見学させています。その後各担当業務に配属されます。

人工心肺業務に配属されたら人工心肺と血液透析、ME機器管理。血液浄化業務に配属されたら特殊血液浄化療法や末梢幹細胞採取など血液透析以外の血液浄化をもっと深く学んで行きます。

入職から3か月間は新人担当技士を決め、先輩指導の下基礎的なことから業務を覚えて、4か月目以降は、当直業務として対応が必要なCHDF、ECMO、人工呼吸器の回路設置、高気圧酸素治療を覚えてもらいます。去年からは新人も4か月目には当直業務に入ってもらっています。当直中に対応出来ない事案が発生したら先輩が拘束体制をとってフォローしています。

資格支援等

資格取得や資格更新は臨床工学技術室で病院から割り振られた予算から、出張扱いとして病院の費用で取得支援、更新支援をしています。

福井県臨床工学技士会会長として

毎年当院に新人が入ってくると福井県臨床工学技士会と日本臨床工学技士会に入会してくださいと案内しています。県の技士会と、日本臨床工学技士会には入っていただけるのですが、日本臨床工学技士会とは別に日本臨床工学技士連盟という団体があります。

連盟の加入率が全国的に低いので、この加入を増やそうと、福井県臨床工学技士会も一丸となって取り組んでいるところです。臨床工学技士として法律的に行える業務拡大や臨床工学技士にまつわる診療報酬確保を国に主張するために、臨床工学技士が自ら専門的見地で進歩充実を推し進める制度や政策に参入しよう、国会議員を送り出そうという活動をしています。

会長としては、我々が臨床工学技士になった時期と比較しても、臨床工学技士の行える業務も広がっていますし、取り扱う医療機器も増えていますので、とにかく会員の皆さんへ学ぶ機会を作ることが使命のひとつと考えています。現在では透析部門、呼吸器部門、機器管理部門、循環器部門の計4部門で年に2回勉強会を開催、ほかには臨床工学セミナーや学術大会を開催して学ぶ機会を創出しています。

これからの最大のミッションとしましては令和6年5月に第34回日本臨床工学会が福井県で開催されますので、そちらの準備に力を注いています。現在は金沢終点の北陸新幹線が令和6年春に福井・敦賀に延伸開業しますので、皆様是非福井開催の第34回日本臨床工学会に来てください。

来て欲しい人

「やりたいことや将来の目標を明確にもっている熱のある学生。社会人の一般的常識を持っている学生。一番大事なのは協調性のある学生。」が揃っている人が欲しいです。

ほとんどの日が定時出社定時終わりのホワイトな病院で、総合病院としての一通りの臨床工学技士の業務もありますし、da VinciだけではなくROSA Kneeというロボットも入ってます。三次救急なので、ECMOも回しますし、ドクターヘリの起点病院になっているので、点検業務もありますし、毎日ドクターヘリが見れますよ。

 

取材協力

福井県立病院 臨床工学技術室
〒910-0846 福井県福井市四ツ井2丁目8-1 Tel.0776-54-5151