大崎市民病院
昭和13年に大崎久美愛病院として開院し、昭和32年に古川市立病院、平成18年に市町村合併により大崎市民病院となり、県北の基幹病院として急性期医療、高度医療等を担っている。2014年6月に穂波地区へ新築移転した(許可病床数500床、診療科目43科)。
診療部をはじめとする各専門職が高度な医療を提供。救命救急センター、がん拠点病院、災害拠点病院、地域医療支援病院など宮城県北の基幹病院としての機能を果たす。
救命救急センターは年間5,000~6,000件の救急車を受け入れて高度急性期医療を日夜展開し、がん拠点病院としては宮城県でトップクラスの治療件数。災害拠点病院として近年は令和元年台風19号被害、令和3年東北自動車道多重事故にDMATが出動、地域の災害医療に貢献。地域医療支援病院として地域の先生方が、より専門的な検査や治療が必要と判断したときには紹介を受け入れる県北の基幹病院。
大崎市民病院臨床工学部 遠藤完(えんどう・たもち)統括技師長兼医療安全管理部臨床工学技士長にお話を伺った。
遠藤 統括技師長兼医療安全管理部臨床工学技士長(左)
看護師から臨床工学技士へ
高校を卒業後、看護師の資格を取得し県立病院に入りました。主な担当業務が心臓外科手術の人工心肺操作要員でした。
直ぐに心臓手術の魅力にとりつかれました。「看護師より、臨床工学技士の仕事の方がしたい!!」と。体外循環技術認定士は6回更新しました(30年選手です)。
特に心臓外科手術はドクターと一緒に救命でき、生命に直接かかわる使命感とやりがいがありました。臨床工学技士が無資格のテクニシャンと呼ばれる時代から看護師として心臓外科手術に立ち会わせて頂きましたが、平成4年に救済制度を利用して資格を取得しました。
大崎市民病院へ転職
当時勤めていた県立病院は隣接した栗原市にあったのですが、人工心肺業務をやらないことになりました。この地域で人工心肺業務をやりたかったので、大崎市民病院の臨床工学部の立ち上げに際して、臨床工学技士長として入職しました。2013年には7名ほどの透析室スタッフはいましたが、臨床工学部はなく、部門の立ち上げですので、自分が人工心肺業務をやりたいと言うより、病院内で臨床工学技士が関わる仕事がスムーズにいくような組織作りをしました。
一日の流れ
業務内容(場所、部門)によって変わりますが、基本下記のようになっています。
[透析勤務]基本08:00~16:45 *注1
[カテ室・手術・内視鏡・ME部門]基本08:30~17:15 *注2
*注1 勤務時間帯 :06:00~(早番1)、07:00~(早番2)、08:00~(スタッフ)
*注2 勤務時間帯 :08:30~(通常)、10:15~(遅番)
また、基本シフト(勤務時間)は下記のようになっています。
(早番1)06:00~14:45
(早番2)07:00~15:45
(通常)08:00~16:45
(管理者)08:30~17:15
(遅番)10:15~19:00
(宿直)19:00~06:00
07:00 透析準備
08:00 全体ミーティング
08:15 各部門へ、透析患者入室
08:30 1クール目透析開始(4・5時間透析)
10:30~15:00 お昼休憩1時間
12:30 返血、消耗品交換、メンテナンス、2クール目準備
13:30 2クール目透析開始(4時間透析)
ICUやコロナ病棟(透析用個室)は10~15時開始
15:45 早番2退勤
16:45 日勤者退勤
19:00 遅番者退勤 宿直者に引き継ぎ
宿直と夜勤の違い
放射線技師、臨床検査技師は夜勤体制ですが、臨床工学技士は全ての救急に入るわけではないので、宿直とオンコールで運用しています。
夜勤は日勤と合わせて週40時間以内労働となります。人数が少ないため夜勤をさせてしまうと、人員が足りなくなります。
宿直体制であれば週40時間の制限はないので、基本的に労働は出来ませんが緊急時にオンコール者が到着するまで、緊急業務を宿直者で対応しています。オンコール者が到着するまでの業務に関しては、宿直手当のほかに、時給が発生します。
宿直勤務者は遅番勤務(10:15~19:00)後、宿直に入りますので(19:00~翌6:00)が宿直となります。
勤務体系や労働時間などは、全て、市議会の承認が必要です。勤務時間などもホームページ上に記載があります。
入職者研修
臨床工学部は24時間院内常駐勤務体制となっており、宿日直・待機業務をスムーズに行えるように研修期間を入職後2年間と定めています。透析支援係、循環器支援係、手術支援係、機器管理係の4係を2年間で経験します。
入職初日は病院のオリエンテーションを行い、半年間マンツーマン指導で透析業務に従事します。1年目は透析センター業務と医療機器管理業務を覚えて、2年目はカテ業務と手術業務、人工心肺のセカンドに入れるようになって、3年目から宿直に入ります。メインのパーフュジョニストは、「認定士を取ってからなりましょう」と話しています。
指導者が新人の進捗状況チェックリストを管理しますので、新人がどこまで出来ているか確認をしながら、研修を行います。3年目からは、日替わりローテーションで担当することで、すべての業務に対応できる人材育成に取り組みます。キャリアプランをもとに、どういった認定資格を取っていった方が良いと言う指導もしていきます。
細かいTODOリストと到達目標スケジュールも作り、これを本人も確認できる体制をとっています。部門も個人も目標を明確にして運営しているので、離職者も居ません。
研修の目標(2年間)
【1年目目標】
4月
・社会人・職業人としての基本的態度について理解し実践できる
・地方公務員としての自覚を持つ
・臨床工学技士の職業倫理・臨床工学技士法・薬事法等の関連法規等の理解を深める
5月
・適切なタイミングで報告・連絡・相談が出来る
・スタッフ・患者とコミュニケーションがとれる
10月
・技術チェック表から未経験項目を抽出し実施できるようにする
3月
・1年を振り返り次年度の課題を見つけることができる
【2年目目標】
4月
・部門スタッフとして全ての業務を経験し、宿直が出来るようになる
・待機業務を行い、責任感を持ちながら緊急業務に24時間対応する
・1年目の復習を行いつつ、新しい業務を習得する
・ICU業務を一人で行う
10月
・技術チェック表から未経験項目を抽出し実施できるようにする
3月
・1年を振り返り次年度の課題を見つけることができる
臨床工学部 初期研修プログラム
https://www.h-osaki.jp/hospital/department/iryogijyutsu/rinshokogaku.php
配置について
スタッフは21人います。透析は6~7人配置しています。循環器には4人、内視鏡には2人、手術・ME機器管理室・高気圧酸素治療・ICUの機器管理を兼務で4~5名を配置しています。
スタッフが21人いても土曜日に透析で6名出勤しますし、日曜日も日勤者が1名います。これらの振替は平日になるので、フルローテーションにしないと人が足りません。部門制の方が管理はしやすいですが、人員が倍必要になりますし、ある業務1つしかできないとなると、今後その業務が残る業務かと言うのは分からないこともあるため、フルローテーション勤務をしてもらっています。
資格支援について
出張費用に関しては「交通費」「宿泊費」に加え「学会参加費」「講習会受講費」「資格更新費」も全額出してもらえるようになりました。
さすがに個人の年会費までは取れませんでしたが、そう言った働く環境の予算をとってくるのも、私の仕事だと思っています。告示研修は、7名が取得し、今後3年以内に残り全員が取得予定です。
技士会は、全員が入っています。強制はしていませんが、職員から理事も出していますし、職能団体なので「入った方が良いよ」と言っています。
学会参加に関しては、継続的に発表してもらっている学会もありますし、事前に予算取りの為に希望を出してもらっています。
優先順位をつけて、業務として出張に行ってもらっています。
研究発表に関しては、業務中ではなく自分の時間を使ってやらないといけないので、研究助成金と言った形で支援しています。
東北大学のサテライト※になっており、アカデミックセンターを設立し、職員の学会発表や学術論文作成の支援等をしてくれる組織もありますので、一般病院に比べると学術的な面もある病院です。
※宮城県北先制医療学講座;東北大学大学院医学研究科の協定医療機関
キャリアプランについて
5月、11月、2月に面談を行います。専門性を高める業務、学会発表や資格取得やライフプランなど、人それぞれです。
【1年目】
[目標]新人オリエンテーション、基本的な業務の基礎知識・技術の習得、早番開始(9月頃)
[業務内容]血液浄化(集中治療含む)、医療機器管理、手術室(人工心肺を除く)、早番
【2年目】
[目標]基本的な業務の基礎知識・技術の習得、待機開始
[業務内容]心臓カテーテル、植込みデバイス、人工心肺、補助循環、待機(9月頃)
【3年目】
[目標]対応業務のレベルアップ、ローテーション業務開始、宿直開始
[業務内容]内視鏡、宿直
【4~7年目】
[目標]対応業務の更なるレベルアップ、後輩職員への教育、チーム医療への貢献
[業務内容]後輩職員に対する各業務教育、院内職員向け勉強会担当、委員会活動
【8年目以上】
[目標]リーダーとしての役割実践、多職種に対する医療安全の実践
資格取得に関しては、助成基準という内規があります。個人の各種資格取得を推奨すると共に、医療サービス向上、経営に資することを目的とした助成制度です。
認定士の取得に関する費用も助成対象となります。学会参加に関しては、演題発表は全て助成対象です。学会参加に関しては、優先順位をつけ参加させます。研究に関しては、助成金が出ます。
大崎市民病院を志望される方へ
求人を出しても「応募がない」と言うようなことはなくなったのですが、仙台から外れているので、動画を出してPRを頑張っています。
臨床工学部紹介動画
米国シンシナティ大学と提携を結んでいるので、出張と言う形でシンシナティ大学医学部研修に、医師、看護師、コメディカルスタッフが行くことができます。私も3年前に行きました。学生実習も病院見学もコロナ禍でも受け入れて来ました。
一昔前は、大崎の人しか就職しないと言うような感じでしたが、今は、宮城県以外の秋田県や東京、九州地方から、大崎市民病院で働きたいと来る方もいます。
大崎市の良い所は暮らしやすい環境なので、結婚して大崎に根付いて家を建てた職員も今年は3名ほどいました。一生懸命仕事をして臨床経験したいと言う人もいれば、家族を大事にしてバランスを取りたいと言う人もいます。個人の希望に合わせ業務を提供できるのが、今の強みだと思います。総合病院でCE(Clinical Engineer)としての業務が揃っている点、働き方に関しても職員と面談して決めていますので、長く勤められる点や家族優先など各職員によっても求めることは違います。
田舎の病院ですが、志は高く全国で「自治体病院ナンバーワン」になることを目標にしています。大学病院には大学病院の人材の育て方、クリニックにはクリニックの人材の育て方があると思いますが、大崎市民病院は、自治体病院ナンバーワンを目指すために、臨床工学技士の資格を生かせるジェネラリスト、臨床工学技士のスペシャリストを育てて行きたいと思います。
採用したい人材
まっさらな人が良いですね。そういう人を育て上げるのがうちの使命じゃないかなと思っています。
語弊があってはいけませんが、既卒も採用しています。ただ、これがやりたいと言ってこられても、うちはフルローテーションでやります。