【臨床工学技士インタビュー】大動脈手術件数全国一位、心臓手術件数全国二位の川崎幸病院。入院・手術・救急外来に特化した患者主体で断らない医療を実践する入職31年目の体外循環のスペシャリストのCE科科長に聞いてみた。

川崎幸病院

昭和48年開設以降、川崎市幸区を中心に川崎市南部及び横浜市北部を診療圏とする病院として活動している。急性期機能をより強化充実するため、他院に先駆けて、平成10年9月に一般外来を「川崎幸クリニック」として分離独立。
現在では、入院・手術・救急外来に特化した病院として、外来受診は、「川崎幸クリニック」のほか、石心会の各クリニック「第二川崎幸クリニック」、「川崎クリニック」、「さいわい鹿島田クリニック」を受診窓口とし、①断らない医療、②患者主体の医療、③地域に根差し、地域に貢献する医療を実践している。
大動脈手術件数日本一位(※1)、心臓手術件数東日本一位(※2)など、日本国内指折りの医療体制を整えた急性期病院。
体外循環のスペシャリストとして、急性期病院のCE科を統括する長澤洋一(ながさわ・よういち)科長にお話を伺った。

※1 大動脈手術件数
※2 AERAdot(朝日新聞デジタル) 心臓手術のランキング

 

臨床工学技士になろうと思ったきっかけを教えてください

長澤洋一 科長

川崎が地元で、高校生の頃は、自動車やバイクの整備が趣味で機械を触ることが好きで、人助けの出来る医療にも興味がありました。仲良くしてた同級生が、「臨床工学技士」と言う、新しく出来る資格で、機械整備と医療を足した仕事があるとパンフレットを持って来てくれました。

パンフレットを見て、私のなりたいものは、「これだ!!!」と思い、運命を感じました。当時は大学の学部にはなく、隣の蒲田に専門学校があったので、そこに通い資格を取得しました。
当時は、臨床実習を受け入れている病院が少なく、全ての業務を1カ所でやっている病院も少なかったので、毎朝5時に起きて、透析と体外循環と2カ所の大学病院に実習に行きました。

 

川崎幸病院を志望したきっかけを教えてください

私が資格を取ったころ(平成4年)は、臨床工学技士の募集をしている病院が少なかったのですが、心臓カテーテルや人工心肺に携われる病院に行きたいと思っていました。当時の川崎幸病院は200床くらいでしたが、既に6名の臨床工学技士がいて、心カテなどを積極的に行っていた点に魅力を感じ志望しました。興味のあった人工心肺も入職して3年後には業務が始まり、すぐに飛びつきました。

現在では、全国で二番目に体外循環の症例数が多い病院で、学会活動も活発です。
また当院は「断らない医療」を実践し、年間約10,000台の救急車を受け入れています。非常にやりがいのある職場です。

 

1日の流れ (透析部門の例)

定時が8:30~17:00で、夜勤は16:30~翌朝9:00
当直各部門(手術室業務、血液浄化業務、循環器業務)より1名ずつ計3名。オンコールは4名体制

透析室業務と病棟透析業務を4名で担当
8:30 カンファレンス(プライミングなどの準備を行う人は30分~1時間前より勤務)
9:00 患者入室
11:00 4人で交代で昼食休憩(1時間)
14:00 回収開始
15:00 病棟透析
17:00 終業

基本的に透析は1クールですが、イレギュラー対応で2クールになることもあります。
急性期なので病棟での透析も多いです。
特に重症の患者さんには、CRRT(持続的腎代替療法)と言う、通常の4時間透析に比べて体への負担が少ない24時間透析で対応しています。

入職後の研修について教えてください

当院は、①手術室業務(体外循環、TAVI、機器管理など)、②血液浄化業務(透析、HDF、PE、アフェレーシスなど)、③循環器業務(心カテ、ABL、アンギオ、植込みデバイス、ICU、機器管理など)の大きく分けて3つの業務グループに分けられます。

こちらで配属を決定し、その配属チームのカリキュラムに沿って研修を実施していきます。
その後、実務を経験した上で、本人の希望と相談の上、配置換えも柔軟に行っています。
入職された方には、まずは3つの業務を5~6年かけてきちんと対応できるようにしていこうとお話しています。

どのような人材になって欲しいと考えていますか?

まずはジェネラリスト、オールラウンダーを目指してもらいたいと思います。
しかし私は、ゆくゆくは、それぞれのスペシャリストになっていって欲しいと考えています。

よく例えでお話するのは、小学生の先生は、算数も国語も同じ先生ですが、中学・高校・大学となると、教科ごとに先生が変わります。それは何故かというと、全てを一人では教えられないからです。
我々もそれと同じだと考えています。
医師たちと対等に話し、良い医療を提供するためには、専門の学会や勉強会に参加し、専門性を高めていくことは非常に重要です。しかし全てにおいて対応していくことはできません。ジェネラリストでは限界があるんです。
また、数年経験を積んでくると、より興味のある分野を極めたいという志向になることも多いと思います。それぞれがスペシャリストを目指し、その道の指導者となっていってもらえたらと思っています。

 

資格取得や手当などについて教えてください

実務経験4年目以降は、基本的に全員、認定士取得を目指してもらいます。認定士取得の勉強は基礎勉強になり、それを学ぶことに無駄はないと考えています。
体外循環技術認定士を取得すると病院から手当も出ます。また取得するための講習費用の補助もあります。
学会発表費用の補助や、臨床工学技士の業務拡大における告示研修においても費用負担しています。

こうした手当については、支給給与だけでは見えない部分なので、見学に来る学生さんたちにもお伝えするようにしています。

 

特徴的な業務や環境を教えてください

冒頭でもお話した通り、当院は体外循環件数が全国2位と非常に多いので、人工心肺の経験を積みたいという人はもちろんのこと、心カテやアブレーション、救急対応など、幅広い業務を経験できる点が大きな特徴であり、魅力だと思います。

また、ペースメーカーの管理はすべて我々が担当しています。
設定変更も、医師は患者さんの情報を共有した上で変更許可を出すだけの状態にしていて、患者さんやご家族への説明・外来も含めて、すべて臨床工学技士が対応します。
さらに、遠隔操作システムを導入していて、患者さんのご自宅から特殊な機器を経由して情報が病院に自動送信されるシステムを運用しています。アラート内容を我々で確認して、医師とディスカッションしながら日々対応しています。

CE室では、10室ある手術室のモニタリングが可能です。各手術室の進捗や稼働状況が分かるので、モニターをみて、休憩に入ってもらったり、別の手術室にヘルプしてもらったり、指示を出しています。

 

採用のポイントを教えてください

臨床実習について

当院に実習に来てくれる人には、フラットに、全ての仕事を均等に見ていただくように意識しています。
それは、実習を通してその人のこれからの臨床工学技士としての将来を洗脳してはいけないと考えているからです。
例えば、臨床実習期間のうち、ほとんどを透析実習にしてしまったら、その子たちは透析業務に魅力を感じて希望する可能性が増えると思います。そういったことのないように、実習生がそれぞれに感じ取って、自分のやりたいことを自ら選べるように、可能性を広げられるような実習を心掛けています。

求める人材について

私たちが求める人材は、「コミュニケーション」がきちんと取れる人、それが第一です。
その場の状況に適したコミュニケーションがしっかり取れる人であれば、多少仕事が遅かったりしても、入職後勉強して成長してもらえれば全く問題ありません。
我々の仕事は他職種と連携・協力をしながら行うので、誠実に、真面目に、人と仕事に向き合って連携を取ってくれる人がいいですね。

 

取材協力

社会医療法人財団 石心会 川崎幸病院 CE科
〒212-0014 神奈川県川崎市幸区大宮町31ー27 Tel.044-544-4611
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