臨床工学技士が解説!臨床工学技士も悩んでいます。自身の体験から臨床工学技士の心の悩みを教えます。その解決方法も

筆者は、臨床工学技士としての17年間勤務しています。今回は、臨床工学技士の仕事での心の悩みについて、特に精神的な悩みの部分を私自身の体験を交えて、お話させていただきます。

仕事への向き合い方

臨床工学技士の仕事内容の一つに、人工心肺装置や呼吸器、透析装置などの生命維持管理装置の操作があります。生命維持管理装置は、名前の通り、命を維持するために使用される装置なので、操作ミスで患者さんの命を奪ってしまうことになりかねません。生命維持管理装置に携わると、どうしても患者さんの死とも向き合わなければなりません。特に人工呼吸器などの生命維持管理装置に携わる仕事をしていると、患者さんが亡くなってしまった時に、その死に対して必ず悔いが残ります。現在の医療技術でも救えない命は、たくさんありますが、それでも何か患者さんを救う方法を医師に提案できたのではないかと、後になって考えてしまう臨床工学技士の方も多いと思います。生命維持管理装置に携わっている臨床工学技士は、患者さんが亡くなるたびに、後悔の念に駆られることになり、その度に知識や技術のなさを悔やみ、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。私も、生命維持管理装置を装着している患者さんが亡くなってしまった時は、毎回このように、もっと何かできたのではないかと思うことが多々あります。臨床工学技士は患者さんの死を間近で見ることの多い職種の一つだと思いますので、どのように患者さんの死を受け止め、次の治療に生かしていけるかが、とても重要だと思います。

臨床工学技士は、患者さんの死に対して悩みながら仕事をしていかなくてはならない、とても責任のある仕事でもあります。悩みが尽きることはありませんが、命を救えた時の喜びを糧に、一つでも多くの命を救う手助けができるように、いつも仕事に臨んでいます。

臨床工学技士の心の悩み

次に、透析業務に関わる臨床工学技士が、最初に抱える心の悩みについてお話します。医療現場での患者さんに直接関わる仕事は、練習ができないので、働き始めは精神的に悩むことが多いと感じます。どういう事かというと、例えば、透析業務であれば、穿刺などの針を刺す業務は、練習キットを使い練習することはできますが、練習と実際に患者さんに針を刺す感覚が全く違うために、練習の成果が反映しにくいです。なので、穿刺の練習は実践で経験を積むしかありません。失敗し、なぜ失敗したのかを考え、そして、また実践で試す。

失敗と成功を繰り返しながら、穿刺技術は向上していきますが、技術の向上に不可欠な失敗には、患者さんの存在が必要となります。穿刺技術の向上のためには、患者さんへの穿刺失敗の苦痛は避けて通れないので、経験の浅い臨床工学技士は患者さんとの人間関係で悩むことになります。穿刺の失敗が続くと、患者さんから穿刺を断られたり、怒られたりして、精神的に落ち込むことがあります。穿刺技術を向上させたい気持ちよりも、失敗からの精神的ストレスが強くなり、刺すことを極力避けるようになってしまいます。失敗無くして技術の向上はないので、失敗からどれだけ多くのことを学べるかが、とても大事です。新人の臨床工学技士には、先輩の技士や上司が失敗を責めるのではなく、なぜ失敗し、どうしたら次は失敗しないかを考えさせることを習慣づける事で、この悩みから抜け出せるようにサポートする事がとても重要です。他の生命維持管理装置の知識も、勉強で知識は補えますが、いくら勉強で知識を得ても、実際にその知識をどう使うかは経験が必要になります。

臨床の現場では、決められたマニュアル通りに進めれば良いというものが存在しないため、臨機応変に対応することが多いです。一人で生命維持管理装置の扱いをこなせるようになるまで、経験の浅い臨床工学技士は緊張や不安で、心に悩みを抱える方が少なくないと思います。実践を積み重ねることでしか技術は上達しないので、臨床工学技士として一人前になるまでは先輩や上司などのサポートを受けながら実践を繰り返すことで技術を習得していきます。患者さんに迷惑をかけたり、不安にさせることもありながら、実践で技術を鍛えなければならないのです。この辛い時期を乗り越えられれば、他職種から色んな相談を受けたり、治療に関するアドバイスを必要とされるようになり、頼られることで、臨床工学技士としての仕事が楽しくなります。自分が将来どのような臨床工学技士になりたいかということを考えながら仕事に取り組むことが重要です。

まとめ

臨床工学技士の仕事は、命を繋いでいる機器の操作が多いため責任が重く、心の悩みを抱えやすい職業です。経験を積むことで視野が広くなり、臨機応変に対応できるようになれば、悩みも少しずつ解消され、病院内で頼られる存在になることのできる、とてもやりがいのある仕事です。日頃から将来の自分像を思い描いて仕事に取り組むことで、今自分のするべきことが明確になり、色々な悩みを乗り越える方法になると思うので、悩んでいる方は、ぜひ試して欲しいです。