熊本大学病院 大塚勝二 技士(日本臨床工学技士連盟 九州・沖縄ブロック理事、熊本県臨床工学技士会 監事)

はじめに

編集部では、病院の臨床工学技士さんをメインに取材させていただいております。その際、臨床工学技士さんから「他の病院はどのようにやっている?」というようなことを多く聞かれるようになりました。

その中でも、技士会や病院において「人材(臨床工学技士の成り手)」は大きな関心事のように感じています。

日本臨床工学技士連盟九州・沖縄ブロックの大塚勝二理事(熊本大学病院所属)が臨床工学技士100人カイギでお話されていた「志望者拡大プロジェクト」が大変興味深く感じたため、本日はいろいろ質問形式でお教えいただきます。

本コンテンツが他の技士会の方や病院さんの参考になるようなものになればと思っています。

熊本県臨床工学技士会「志望者拡大プロジェクト」について

熊本大学病院 大塚勝二 技士
日本臨床工学技士連盟九州・沖縄ブロック理事
熊本県臨床工学技士会監事

Q.どのような施策だったのでしょうか?

臨床工学技士をいう職を知ってもらう必要があります。

「志望者拡大プロジェクト」を一言でいうと中学・高校の生徒に焦点をあて、知ってもらう活動でしょうか。

学校には生徒さんへの説明および実演をする場を提供してもらい、実際の説明・実演は臨床工学技士の専門学校の先生に行っていただきました。

当初は熊本県だけで始めた取り組みでしたが、これが九州全体、各県ブロックで取り組むことができるようになりました。

Q.学校の協力はどのように取り付けたのでしょうか?

私が高校のPTA役員をしており、高校の先生方と会議などで知り合いになっていました。そのため、アポイント・訪問は比較的スムーズに進めることができました。

他のPTA役員の方や先生との自然な会話の中で、「臨床工学技士をしている」ことを話すと、有難いことに皆さん興味を持ってくださいました。

臨床工学技士の説明をしていると、共感していただいたくこともあり「先生やPTA役員の方から子供たちに説明して欲しい」と話が進み、実際にその流れで説明会を行った学校も少なくありません。

私の場合は学校(PTA)が導入でしたが、ポイントはアプローチを待つのではなく、こちらからいろんなネットワークに入り込んでアプローチしていくことが大事だと思っています。

大塚技士による「志望者拡大プロジェクト」の流れ

1)高校の進路指導の先生に臨床工学技士の説明会の開催を打診する

2)高校と説明会の日程を決める

3)専門学校に該当の高校の卒業生を照会し、臨床工学技士を選定する

4)その技士の所属するクリニック・病院の技士長に打診する

Q.興味をもってもらう説明(プレゼン)とは?

プレゼンをする臨床工学技士が、その高校の出身(OB・OG)ですと、興味を持っていただけたように思います。全く関係のない人よりも、OB・OGという接点がある人の方が親近感がわくのではないでしょうか。

年の離れたOBがプレゼンをしても聞いてもらえないこともありますが、高校生と年の近いOB・OG、若手の臨床工学技士のプレゼンをする方が興味を持って聞いていただけることが多い印象です。

熊本県立水俣高校OBで高校生と年も近い三浦京太郎 技士(水俣医療センター)のプレゼンは、その代表例だったように感じています。

私と熊本県臨床工学技士会の理事長は、熊本県立大津高校の出身なのですが、取り組みをするようになってから、毎年2名くらいが臨床工学技士養成校、大学へ進学しています。

 

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母校ですと話も通しやすく、受け入れ態勢も良いですよね。また確かに先輩だと質問しやすいですね。

 

進路サポート

養成校・大学卒業の進路、就職するまでサポートしています。できるだけ県内で勤めていただきたいですが、行きたい病院があれば、その病院の技士長に面談してもらえるように頼み込んだりしました。

Uターン希望の積極誘致

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大学・養成校は、みんな県内からというわけではないと思うので、地元に戻って就職される方(Uターン)も多いのではないでしょうか

 

「志望者拡大プロジェクト」では他県に就職した臨床工学技士ともつながりをつくっていますので、Uターン希望の方にはやりたいことを聞いて、熊本県内の就職先の斡旋もしています。

また県外の病院に修行に行きたいといえば、可能な限りサポートしています。熊本で合致しない場合は福岡や大分などへの就職あっせんのお手伝いをしたりもしています。

現在プロジェクトは散会していますが、各々個人的に活動しているようです。

私も学校などから連絡をいただき、プレゼンさせていただいています。

世界に向けて、日本の臨床工学技士のレベルの高さをアピール

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他にはどのような活動をされていますか?

 

【持続血液透析(CHD)とPMX-DHP※ を施行し,救命できた超低出生体重児(748g)】という論文を書いています。日本の臨床工学技士のレベルは世界的に見ても高いんです。世界が日本でやっていることを知らないだけなんです。日本の緻密さなんて、他の国じゃなかなかできないことなんです。

ピロリ菌を発見した人が本に書いてたことですが、「ピロリ菌は、日本人が最初に発見していたが、英文で論文を書かなかったため世界は認知していなかった」というようなことがあります。

日本の臨床工学技士のレベルは世界でも高いのに、そのことを世界に発表する人が少ないように感じています。そのため「日本の臨床工学技士は世界レベルで活躍している」という認知活動をしています。今後も国際学会で論文をどんどん出して行きます。

※PMX-DHP:エンドトキシン血症に伴う重症病態あるいはグラム陰性菌感染症によると思われる重症病態の患者に対して、血中エンドトキシンを選択的に吸着除去することによって病態の改善を図る事を目的とする。

町会議員になって正しい医療知識を提供したい

Q.100人カイギで町会議員になると言っていましたが、医療特区みたいな構想があるのでしょうか?

出馬します。当初はコロナの情報も正確に伝わっておらず、村八分になっている方がいたり、AEDとかもいざ使おうとなると使えない状態のものが多かったりしていたように感じています。

そのため医療の専門家から医療の情報を発信したり、環境整備をする役割の人が必要だと思っています。それも臨床工学技士のアピールにつながってくると思っています。