[藤田医科大学 日比谷教授・塩谷助教]臨床工学技士になるためには何を学ぶの???

藤田医科大学 医療検査学部 臨床医工学分野 日比谷信(ひびや・まこと)教授と塩谷泰子(えんや・やすこ)助教にお話を伺いました。

臨床工学技士と臨床検査技師の違い

 

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臨床工学技士と臨床検査技師を混同する受験生が多いようです。これから臨床工学技士を目指す高校生に向けて、臨床工学技士と臨床検査技師の違いを教えてください。

 

日比谷教授日比谷教授

臨床検査技師は、診断に必要な体の成分や仕組みを正確に計測する【検査の領域の技術者】です。一方、臨床工学技士は【治療の領域の技術者】です。

治療域は医師や看護師のお仕事だと思われている方が多いと思いますが、臨床工学技士のようなエンジニアも活躍しており、人工心肺業務、呼吸治療業務、血液浄化業務、集中治療室業務、手術業務、内視鏡業務、アブレーション業務や医療機器管理業務などを担い、医師の指示の下で医療機器の操作や管理を行い、治療の補助をしています。

黙々と機器を相手にする仕事のように思うかもしれませんが、臨床支援業務では、円滑な治療を行うために医師や看護師、他の医療関係者とのコミュニケーションが不可欠ですし、人工透析のように患者さんと日常的な会話ができるほどに信頼を得ながら行う業務もあります。

私は、入職した当時に花形だった胸部外科手術で使用される人工心肺装置の可能性に夢中になりましたので、大変魅力的な分野だと思っていますが、臨床工学技士の養成課程を持つ国公立大学が数年前までなかったこともあり、一般の方には臨床検査技師という資格の方がよく知られているようです。臨床工学技士を目指す学生は、親戚縁者に医療関係者がいて、臨床工学技士を知ったという方が多い状況です。

 

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病院での取材時に、臨床工学技士の求人状況を伺いますが、いくつかの医療機関では、2025年の働き方改革に合わせて、内視鏡業務、電気刺激などの業務を増やすため、採用人数を増やす計画とお聞きしています。

業務の広がりで、人手不足の医療機関が増えるような印象を持っています。特に、医師不足の地域は、内視鏡業務、麻酔補助業務など臨床工学技士に頼りたい病院は多くあると思います。

 

臨床工学技士と臨床検査技師のカリキュラムの違いと共通科目

 

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藤田医科大学では、医療検査学科の中に臨床工学技士を養成する臨床工学プログラムと、臨床検査技師を養成する臨床検査学プログラムがありますが、カリキュラムにはどのような違いがありますか?

 

日比谷教授日比谷教授

医療従事者として身につけておくべき知識というものは共通しています。基礎教養、基礎医学、臨床医学のほか、関連法規、公衆衛生学、免疫学など、共通する科目は多々あり、同じく必修科目になっているものもあります。ただし、科目としては同じ解剖学、生理学、生化学でも、臨床検査学プログラムでは『病態学』領域として学び、臨床工学プログラムでは『人体の構造及び機能』領域の科目として学ぶというように、学びのプロセスが異なっています。

臨床工学プログラムでは、「工学」というワードが示すように、論理的に物事を考えることが必要です。また、医療機器のほとんどは電気で動く機械ですので、電子工学や計測工学、機械工学、ICT・ネットワーク概論など医療機器を扱うための工学系専門科目が多く、実習も医療機器を操作するものが厚くなっています。

藤田医科大学では、共通科目を1年半履修後に、2年生の後期から臨床工学プログラム(臨床工学技士国家試験受験資格取得教育課程)と臨床検査学プログラム(臨床検査技師国家試験受験資格取得教育課程)の2つのコースに分かれます。1年半の間に、臨床工学技士と臨床検査技師の仕事を実際に見られるプログラムを組んでいますので、自分の進む道を理解して資格取得を目指すことができます。

【臨床工学プログラム】には下記のような科目があります。

(2024年度藤田医科大学医療科学部パンフレットP23-24より)

※詳細はこちら(Webパンフレット)
※科目詳細についてはこちら(シラバス)

臨床工学技士の資格取得プロセス

 

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臨床工学技士と臨床検査技師の資格取得プロセスに違いはありますか?

 

日比谷教授日比谷教授

臨床検査技師は1970年から、50年以上の歴史がありますが、臨床工学技士は1988年にできた比較的新しい資格です。そうした背景もあり、臨床検査技師の養成課程は3年制か4年制しかないのですが、臨床工学技士は1年制、2年制、3年制、4年制があります。工学知識のある方が、1年間で臨床工学技士の国家資格を取得できるのは臨床工学技士養成の設計が柔軟なのかも知れないです。他の医療職の方で、1年課程や2年課程の専攻科に入り受験資格を得て臨床工学技士資格を取得するケースも多いです。

私は、臨床検査技師として働いて、臨床工学技士は平成元年に現任者救済で取得しました。

塩谷先生の場合、学生だった当時は藤田医科大学に臨床工学技士養成の専攻科がありましたので、大学で臨床検査技師を取得した後に、1年課程で学んで臨床工学技士国家資格を取得しています。

 

※藤田医科大学では、臨床工学技士および臨床検査技師の資格取得には、それぞれ4年制のコースで学んでいただく必要があります。

専門学校と大学での教育の違い

 

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臨床工学技士の資格を取得できる教育機関として、大学と専門学校がありますが、どちらの方が、どう有利などありますか?

 

日比谷教授日比谷教授

大学を卒業すれば学士、短期大学は準学士、専門学校は専門士という学位が取得できます。大学でも専門学校でも、臨床工学技士国家試験の受験資格が得られる点は同じですので、学生から見ると変わりはないように感じるでしょうし、資格取得の要件として、厚生労働大臣が履修すべき科目を指定していますので、履修科目にも大きな違いはないと思います。どの大学も1単位は45時間としています。予習復習がどの科目でも必要です。専門学校でも、単位の考え方は同じです。

専門学校と大学の違いではありませんが、本学のように大学病院が併設された教育機関で学ぶメリットには、先進医療が学べるということがあります。内視鏡業務なども臨床実習で見学することができます。医療機器は非常に高価ですし基本的な機能の上に高度な付加機能も多様ですので、授業の一環で病院の先端医療の業務・機器等を学ぶ機会があるのは教育環境として恵まれていると思います。学内の授業にはPBL、反転授業等のアクティブな学びを取り入れていますし、将来のキャリアに役立つように選択科目を豊富に提供しています。

また資格を得るという意味では違いはないものの、藤田医科大学は医学部を備えるなど複数の医療職を養成する医療系総合大学である特色を生かし、アセンブリ教育という多職種・専門職連携教育を1年次から4年次まで行っています。この教育を通じて、患者さん中心の考え方を身につけ、多職種・専門職連携を実践できる医療人を養成しています。多職種連携・チーム医療は、近年その重要性が叫ばれていますので、学生の間にその基礎となる考え方を身につけられることは、臨床だけでなく企業等に就職したときにも大きな強みになるといえます。

その他、クラブ・サークルや学園祭の運営、ボランティアのような課外活動でも、他学部の学生と一緒に活動することがありますので、学部・学科を越えた学友を得る機会があるということも本学のような医療系総合大学の醍醐味ではないでしょうか。

 

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病院を併設する大学として、即戦力となるような実習が行われているのでしょうか?

 

日比谷教授日比谷教授

学校は基本的には指定規則に沿って養成する場です。臨床の現場で必要なスキルは、病院に入職された後に研修されると思いますが、臨床に入るための基本は指導しています。例えば、実習前には実習に必要な基本的手技テストがあります。スタンダードプリコーションは医療従事者の業務に必須の基本手技で、感染防御のためにエプロンや手袋の付け方脱ぎ方、そして、アルコールによる手指消毒など、臨床実習に入る際に必要な準備がきちんとできているかを試験し、確認しています。

 

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藤田医科大学の臨床工学技士国家試験合格率は、全国平均を大きく上回っています。秘訣があるのでしょうか?

 

日比谷教授日比谷教授

国家試験の合格率ですが、本学は、例年100%に近い成績です。これは学生の努力の賜物であると思っています。

もちろん、全員が合格できるよう、教員は指導を行いますが、学生自身がしっかりモチベーションを維持して、学友をリスペクトしながら共に学ぶ姿勢が結果につながっていると思います。

 

(2024年度藤田医科大学医療科学部パンフレットP22より)

学士取得後の大学院進学について

 

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現場で活躍する臨床工学技士にも、修士・博士の学位をお持ちの方は多いですが、大学卒業後に、大学院進学を希望される方は多いのでしょうか?

 

日比谷教授日比谷教授

私は、先にお話したとおり、人工心肺装置に魅せられて、研究の道を選びました。塩谷先生は藤田医科大学の卒業生で、修士・博士も藤田医科大学で取得されています。

 

塩谷助教塩谷助教

臨床業務を行う中でどうしても分からないことがあり、日比谷教授に相談したところ、大学院での研究をすすめて頂きました。隣接県の病院に勤務していたため、通学に時間がかかり、業務が終わってから受講するとなると、夜間に1コマか2コマしか受講できませんでした。ですので、修士課程は2年ですが、週2日の受講として4年間の長期履修で計画しました。講義が終わって帰ってくると24時で、次の日も勤務という生活でした。博士は、藤田医科大学に転職した後でしたので、業務が終わって、受講してというサイクルで、4年間で取得しました。

 

日比谷教授日比谷教授

単位を取った上で、研究論文審査を受けて修了する仕組みです。科目は、現在はオンラインで受講できますので、塩谷先生の頃より学びやすいです。

 

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かなりの数の方が入学を希望されるそうですね。入学するには?

 

日比谷教授日比谷教授

学生は積極的に受け入れたいと思っていますが、語学試験、専門試験(臨床工学全般)、面接があります。大学院入学希望者の倍率はかなり高くて希望者全員を受け入れられるわけではありません。狭き門になっています。2年間でどのような研究をしたいかを明確にしてもらい、希望する研究内容によって各研究室に振り分けられるような仕組みです。学位にこだわりがなく、研究がしたいというのであれば、研究員登録制度というのがありますので、登録頂くと、藤田医科大学で研究をすることができます。

 

 

取材協力

藤田医科大学 医療検査学部 医療検査学科
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