臨床工学技士に気を付けて欲しいこと、お願いしたいことを元看護師目線で解説

臨床工学技士は、「医療機器のスペシャリスト」として、医師の指示のもとで生命維持管理装置を操作します。また、院内にある医療機器が正しく作動できるように保守点検を行ないます。手術室は患者の生命に関わる様々な医療機器があり、看護師も医療機器に触れることが多いです。そのため、看護師と臨床工学技士は自ずと関わりが多くなります。そこで臨床工学技士が手術で気を付けて欲しいことや、臨床工学技士がいてくれて良かったことをお話しします。

臨床工学技士に気を付けてほしいこと

特に臨床工学技士に気を付けてほしいことは、医師や看護師とコミュニケーションを積極的にとることです。コミュニケーションをとらないと、今使っている医療機器が安全な状態か分からないまま患者に使ってしまいます。もし不具合が発生し対応が遅れると、患者の生命に関わる重大な医療事故となります。医療機器の使用前点検は臨床工学技士の仕事なので、医療機器の異常の早期発見ができる立場です。医療機器の異常のサインと対処法を情報共有することで、手術中に臨床工学技士がいなくても早期に対応ができます。患者の生命を守るためにも、臨床工学技士は医師・看護師と積極的にコミュニケーションをとることが必須です。

ただし、コミュニケーションをとる上で困ったことがありました。臨床工学技士が医療機器の注意点を医師に言わず、看護師にしか言わないことです。そのまま看護師に医師への伝達をお願いされます。看護師は医療機器の専門家ではないので、臨床工学技士が言ったことを正確に医師に伝えられる保証はありません。臨床工学技士にとって看護師の方がコミュニケーションをとりやすく、医師には話しかけづらい面があります。特に経験が浅い臨床工学技士は、医師に対して苦手意識を持っているからです。麻酔科医は麻酔器のことなら、若い臨床工学技士より詳しいことも多いです。そのような麻酔医に、臨床工学技士はなかなか意見をしづらいでしょう。しかし、医療機器のことなら医師以上の知識を身につけて、普段から医師と積極的にコミュニケーションを取ることが必要です。そうすることで、麻酔医は医療機器なら臨床工学技士に任せて安心という思いが出て、信頼関係が生まれます。

臨床工学技士にお願いしたい事

次にお願いしたことは、医療機器のマニュアルを作ることです。マニュアルもなく医療機器の使用前点検を看護師が行っても、患者の安全の保証はできません。看護師は医療機器の専門家ではありません。手術室経験年数によって、看護師の力量の差は大きいです。臨床工学技士も人手不足のため、全ての医療機器の使用前点検ができない場合もあります。その時は、看護師も協力して使用前点検を行います。しかし、手術室経験が浅い看護師でも確実に医療機器の使用前点検を行うためには、マニュアルを作ることが大切です。

臨床工学技士に期待する事

ここまで臨床工学技士が気を付けてほしいこと、困ったことを述べましたが、臨床工学技士がいてくれて良かったこともあります。医療機器のトラブルにすぐに対応してくれることです。臨床工学技士が手術室にいない時は、看護師が対応していました。例えば、内視鏡手術の時にモニターが突然映らなくなるというトラブルがありました。慣れている機器であれば、看護師でも修復は可能です。使い慣れない機器であれば、業者に連絡して業者の指示のもとで、対応したため手術が止まることもありました。手術室に臨床工学技士がいると、電話するとすぐに駆けつけてくれて対応してくれます。やはり医療機器の専門家は、トラブルの原因をすぐに洗い出して、対応が早いです。手術を止める時間を最小限にすることは、患者への侵襲を最小限にするので患者にとって安全です。特に医師・看護師との連携が重要になる手術は心臓血管手術です。心臓血管手術は、心臓を止めて手術をします。心臓を止めている間は、人工心肺装置で患者の心臓と肺の代わりを行います。人工心肺装置を操作する人が臨床工学技士です。心臓血管手術は変化の大きい手術で判断が少しでも遅れると、患者の生命に関わるため、間接介助看護師と臨床工学技士が連携をとって、次に起こることを予測して物品を準備します。人工心肺装置を扱える臨床工学技士は経験豊富なので、手術中は頼もしい存在です。また、医師に器械を渡す直接介助看護師にとっても、臨床工学技士は頼もしいです。心臓血管手術は緊張感の中で手術を行っており、心臓外科医の集中を切らしてはいけません。

しかし、慣れない看護師が直接介助につくと、心臓外科医との息が合わないこともあります。そんな時でも臨床工学技士は、次に起きそうなことを想定して、直接介助看護師に次に必要なものを助言します。心臓血管手術の直接介助に慣れない看護師にとって、臨床工学技士は心強い存在です。人工心肺装置を扱える臨床工学技士は知識も豊富なため、心臓外科医や麻酔医にも積極的に意見をします。臨床工学技士の視点で、医師たちに助言することで手術がスムーズになり看護師も動きやすくなります。手術がスムーズに進むということは、患者は安全な手術を受けているということです。手術室で臨床工学技士は、医師や看護師を含めてチームで動くことと、初めて患者に安全な医療を提供されます。そのため、臨床工学技士は普段より医師と看護師に、積極的にコミュニケーションをとることが重要です。